ぶんせきコラム

半導体製造で活躍する洗浄薬液モニタ


いまや産業から私たちの生活まで、欠かすことのできない半導体デバイス。この製造過程では、ほんのわずかなゴミでも見逃すことができません。品質の高い半導体デバイスが作られる方法と、そこで活躍する分析装置とは…。


半導体デバイスとして代表的なものといえば、「LSI(大規模集積回路)」。
これを作る工程ではゴミや微量不純物が大敵です。そのため半導体製造プロセスにおける重要な工程のひとつに「ウェハ洗浄」があります。このウェハ洗浄には、工程の進み具合によってさまざまな方法があります。それらの中で「RCA洗浄」はもっとも基本的な洗浄技術です。

RCA洗浄の歴史は古く、1970年代にアメリカのRCA社に所属していたKern氏らによって発表されたもの。近年はごく微小なゴミも許さない洗浄工程での厳密な管理のため、洗浄に使用される薬液濃度は工程中で連続測定されるようになってきました。


ウェハ洗浄用の薬液濃度測定には、「吸収分光分析」という原理がもちいられます。
水や薬液に光を照射すると、物質の種類や構造によって固有の波長で光が吸収されます。この光の吸収される度合いを「吸光度(Absorbance)」といいます。ウェハ洗浄に使われる薬液にも、ある波長で光を吸収する性質があるので、波長ごとの吸光度を測定し解析すると、薬液の濃度がわかるというわけです。

さて、実際に使われるウェハ洗浄用薬液には、次のような種類があります。
SC-1(アンモニア過酸化水素水溶液)
SC-2(塩酸過酸化水素水溶液)   
SPM (硫酸過酸化水素水溶液)   
FPM (フッ酸過酸化水素水溶液)   
BHF (バッファードフッ酸溶液)


このように、

2種類以上の薬液成分が混合されているものの濃度を測定するにはどうするのでしょうか。
これには、まず薬液成分を混合したときの吸光度データを、いろいろな濃度の組み合わせであらかじめ採取しておきます。そしてその中から薬液成分ごとの特徴的なデータ変化を解析します。これによって実際の測定のとき、一群の吸光度データから成分ごとの濃度を導きだすことができます。このような方法を「多変量解析法」と呼んでいます。


またウェハ洗浄工程での薬液濃度測定は、温度の影響も受けます。
このため温度による影響も考慮した「温度補償型多変量解析法」というさらに高度な方法により、温度影響の少ない測定を実現した分析装置も製品化されています。半導体製造プロセスはまさに日進月歩です。

最近ではより大きい「300mmウェハ」など新しい要求が次々とうまれ、分析装置を提供するメーカでも、これまでになかった混合薬液の測定要求でも対応できるよう開発製造体制を整えています。