ぶんせきコラム

閉鎖性水域を汚濁からまもる


海や湖、河川の水質をまもるための取り組みのひとつに、「水質総量規制」があります。前々回とりあげた下水処理場は、おもに生活雑排水から流域の水をまもるためでしたが、工場などから出される排水にも、水質保全ためのルールがあるのです。


水質総量規制とは
「水質総量規制」は、湖や海域の水質をまもるため、工場や事業所からの排水に対して実施される規制です。この規制では、排水中の汚濁物質の「濃度」だけでなく、その「総量」を制限する目的があります。

例をあげてみましょう。ある工場(A)では、1L中に10 mgの汚濁物質を含む排水(汚濁物質を濃度10mg/l)を、毎日50L排出しています。いっぽう別の工場(B)では、 1L中に5mgの汚濁物質を含む排水(濃度5mg/l)を、毎日1000L排出しています。さて、どちらが環境に大きな影響をおよぼすでしょうか。

Aの工場は汚濁物質を多く含む排水を流していますので、一見、こちらのほうが影響が大きいように思えます。しかし、一日に排出している汚濁物質の「総量」でみると、Bの工場のほうが汚濁物質濃度の低い排水でも、結果的にたくさんの汚濁物質を流していることがおわかりになるでしょう。

この考えにもとづき、水質総量規制では排水中の「濃度」だけでなく「排水量」も同時に測定し、汚濁物質の「総量」を規制しています。


2001年度からはじまる第5次水質総量規制
日本では1979年以降、4回にわたって工場や事業所からの排水に対する水質総量規制が実施されてきました。そのとき規制項目とされたのが、「化学的酸素要求量(COD)」です。CODは、わかりやすくいうと、水中に含まれる有機化合物の量の指標です。有機化合物が水の中に多く含まれると、水が濁ったりいやな臭いがしたりする原因となります。

そして2001年度から予定されている「第5次水質総量 規制」では、これまでのCODに加えて、排水中の「窒素・りん」についても規制されることとなりました。これには、赤潮や青潮の原因となる「富栄養化」の、より一層の改善が求められたことなどが背景となっています。

規制の対象となる工場や事業所は?
水質総量規制の対象は、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の「閉鎖性水域」に関係する地域にあり、1日の排水量が50立方メートル(m3)以上の工場や事業所とされています。とくに、1日の排水量が400立方メートルを超える事業所では、自動測定装置によってCOD全窒素全りんの3項目の汚濁物質を連続測定することが求められます。


全自動然全窒素 全りん測定装置
第5次水質総量規制で規制項目に加わる窒素、りんを連続測定するために、「全自動全窒素・全りん測定装置」が製品化されています。とくにHORIBAの「紫外線酸化分解法」をもちいた測定装置では、従来の方式にくらべ、メンテナンス性に優れていてランニングコストが低く、JIS法による測定結果ともよく一致します。これらの特長をもつの「全自動全窒素・全りん測定装置」は、日本水環境学会から「技術賞」を受賞しました。



環境省
EICネット
社団法人 日本水環境学会
HORIBA:ぶんせきcafe
「微生物と力をあわせて環境をまもれ」
前々回のぶんせきコラムから、下水処理場で活躍する微生物の力と分析技術を紹介しています。