ぶんせきコラム

1台1台の排ガス低減
─ 車載排ガス計


いつもニュースや紙面をにぎやかしている環境問題。その中でも大については、自動車から排出される窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)がおもな原因として問題視されています。自動車からでる排出ガスを低減するために分析機器メーカができることとは。


自動車から出る窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の発生源はおもにディーゼル車とされ、その多くを所有するのが貨物自動車を使用する事業者、つまり運送会社とされています。もちろんこれらの事業者でも、自治体を中心としたNOxの排出基準やその削減計画にもとづく施策などを実施し、排出総量の削減にとりくんでいます。


 しかし自動車は増加する傾向にあるため、いぜんとして自動車排ガスによる大気汚染は改善していかないのが現状なのです。
そのような流れから東京都では、昨年自動車排出ガス対策として低公害車の普及拡大、PM除去装置装着の義務化および新たな排出ガス基準の設定を行うなど、より積極的に総量削減にとりくむ動きが出てきました。


 では問題視されているNOxを削減するために、事業者はどうすればよいのでしょうか?
ポイントは3つ考えられます。
  1. 車を走らせない
  2. 低公害車を導入する
  3. 必要以上の排出ガスを出さない

当然ながら1は事業者にとって現実的ではありません。しかし2や3の方法は現実に可能で、事業者の協力により効果があらわれることが予想されています。ただ、これまで事業者では正確なNOx排出量の把握ができておらず、またどのような運転が削減のポイントになるかを具体的に管理できていないのが実態でした。


そこで最近、車両1台ごとに設置することができる「車載型簡易排ガス計測装置」が開発されました。
この装置では、車両のマフラー部分にとりつけられた専用センサでNOx量を計測し、時間とともにメモリカードに記録されます。またこの装置は、国土交通省から認定を受けたデジタル式運行記録計の機能をかねそなえていて、NOx量だけでなく車両の速度、距離、エンジン回転数、急加速、急ブレーキ、車両位置などさまざまなデータもあわせて取得することができるものです。

メモリカードのデータは専用の読取装置を介してパソコンで処理され、たとえばアイドリング、波状運転、急発進、空ぶかしなど、環境や燃料消費に悪影響をおよぼす運転が、データの集計表やグラフから一目瞭然にわかります。つまり、運行記録データを活用することで3の「必要以上の排出ガスを出さない」運転をうながし、環境負荷を低減することができるのです。このほか経済的な走行を支援して燃費を抑えたり、安全運転指導に役立てて事故を防止したりという効果も期待できます。


車両のIT化は急速に発展し、いままで予想もしなかったことがどんどん実現しています。
このようにITを活用しながら環境改善に貢献できる分析装置を世に送り出していくのも、私たち分析機器メーカの役目です。