ぶんせきコラム

純水の話


化学分析とはきってもきれない存在、「純水」。pH測定やイオン測定では標準液の調整や器具の洗浄でおなじみですね。今回は、よく知っているようでじつはいろいろある、この「純水」についてご紹介しましょう。


純水ってなに?
「純水」とは読んで字のごとく、「不純物を含まない水」という意味です。純水は、化学分析や環境分析を行うとき、ビーカーなどの器具の洗浄や試薬の調製にもちいられます。「おや、器具を洗うのだったら水道水でもキレイなのでは?」と思われるかもしれません。しかし、人間が口にするのには十分な水道水でも、カルシウムやマグネシウムなどの陽イオンと塩素や硝酸などの陰イオンがごく微量含まれています。そして精密な分析を行うとき、これらのイオンが不純物として影響をおよぼすことがあるのです。


純水ができるまで
一般的に純水は、水道水などをフィルターでろ過した後、イオン交換樹脂に通して精製されます。イオン交換樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とあり、それぞれ小さな球状をした合成樹脂です。ジャングルジムのような網目状の構造にイオンを捕まえる手「官能基」がついていて、陽イオンは強酸性陽イオン交換樹脂に、陰イオンは強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着されます。このような仕組みにより、イオン交換樹脂を通過した水は、イオンがとりのぞかれた水になります。このようにして作られた純水を、とくに「脱イオン水」とよぶこともあります。


スーパー純水?!
純水とともにときどき耳にする「超純水」。これはふつうの純水とどう違うのでしょうか。超純水とは、純水よりもさらに高度なイオン交換や「逆浸透」または「限外ろ過」などを行ない、より純度の高い水です。純度を導電率であらわすと純水は100μS/m以下、これに対して超純水は6μS/m以下とされ、それほど電荷を運ぶイオンが少ないことがわかります。超純水は、ほんの小さなゴミも許されない超LSIなどの半導体製造工程で、基板の洗浄などにもちいられるほか、医療分野でも重要な役割を果たしています。このように純水や超純水を使用することで、分析をより精密にしたり、製品の品質をよくしたりするために、さまざまな分野でなくてはならない存在なのです。


純水はナマモノ
純水や超純水は空気に触れると空気中の二酸化炭素を吸収し、すこしずつ変質していきます。したがって精密な分析にもちいる場合などでは、長時間空気にさらしたままにならないよう注意が必要です。そのほか化学・環境分析用の水については、その種類と規定、そしてそれぞれの使用目的が日本工業規格(JIS)にさだめられています。

JIS K 0102:工場排水試験方法
JIS K 0557:用水・排水の試験に用いる水



日本規格協会