ぶんせきコラム

自動車のススを連続測定


自動車の排ガスからでるスモークの問題は、環境問題の一つとして大きくとりざたされています。エンジン、燃料そして低減装置とさまざまな努力が払われているこの問題に、分析機器ができることはあるのでしょうか。


「スモーク」の正体
自動車の排ガスにおける「スモーク」とは、いわゆる「スス」として私たちの目に見えているもののことです。とくにディーゼル車では、スモークの低減が解決すべき重要な課題の一つとして認識されています。自動車から排出され、人体に悪影響をおよぼすといわれる粒子状物質(PM)にはさまざまな成分が含まれていますが、スモークはその中で「ドライPM」といわれるものに相当します。

スモークには、「ホワイトスモーク」(白煙)「ブルースモーク」(青煙)、そして「黒煙」があります。ホワイトスモークはエンジンを始動させた直後にテールパイプからでる白い煙です。ホワイトスモークのあとには青っぽい煙が見えることがあり、これがブルースモークです。ブルースモークには「ホルムアルデヒド」や「アセトアルデヒド」などを含んでいて、ディーゼル車特有の臭いがします。また最近はひところより少なくなりましたが、ディーゼル車から真っ黒な煙が出ていることがあります。これが文字どおり黒煙で、これらをあわせてスモークとよんでいます。

スモークは過負荷や整備不良など何らかの原因で不完全燃焼が起こったときに増える傾向があります。ちなみに、エンジン内の燃焼状態が理想的に近づくとスモークの量は減りますが、一方で「窒素酸化物」(NOx)が増えるというジレンマがあります。


スモークはいつ測る?
ディーゼル車では少なくとも車検のときにスモークを測定することが義務づけられています。また他ではエンジン洗浄剤をもちいた際にその効果を確かめるために測ったり、最近開発が進められている「DPF」(ディーゼル粒子状物質除去装置)の性能評価試験にもちいられたりします。このような場合ではDPF装着前と装着後のスモークを測定して比較し、その削減効率を調べます。


スモークを測るには
自動車排ガス中のスモークを測定するには、「スモークメータ」という装置をつかいます。スモークメータには「光反射式」と「光透過式」の2種類があって、従来はもっぱら「光反射式」がもちいられていました。これは現在でも国内のディーゼル車の車検機器として使用されていて、「フィルタ式スモークテスタ」とか「黒煙テスタ」ともよばれています。

「光反射式スモークメータ」は、まず排ガスを決まった時間シリンダに吸引してスモークをフィルタに捕集します。スモークが多いほどフィルタは黒く汚れるので、これに光を照射してその反射率からスモーク濃度を測定します。しかしこの方式には欠点があり、低濃度のスモークを高精度で測定するのに感度が十分でなく、また連続測定が行えませんでした。

いっぽう、まもなく製品化が予定されている「光透過式スモークメータ」では、黒煙だけでなく「光反射式」では測定が難しかったホワイトスモークやブルースモークを含めて、高感度に連続測定が行えるようになりました。この方式では、光を直接排ガスに照射して、吸収・散乱される光の強度からスモーク濃度を測定します。この方式はISOに定められており、欧州をはじめ世界標準となっています。

スモーク低減をめざすあらゆるシーンでその効果を確かめるため、スモークメータは欠かせない機器となっています。このような中で高感度・連続測定が行える「光透過式スモークメータ」は、次世代のスモークメータとして大きな期待をよせられています。




HORIBA:ぶんせきcafe
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