ぶんせきコラム

2次元温度計がひらく、
新しい温度計測


「なんだか具合がよくないなぁ…」そんなとき私たちは体温計で体の温度をはかります。このように温度計測はとても身近なものですが、産業界においてもとても重要なものなのです。この温度を、画像とともにとらえる「2次元放射温度計」が登場しました。さて、その実力やいかに?!
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 なぜ「温度」をはかるのか?
体調がよくないときに体温をはかるのは、病気や感染など体の中でおこっていることを、温度という指標が端的に教えてくれるからです。これと同じように、機器の稼動状態や生産プロセスの状態などが、温度をはかることによってわかります。また、あらゆる物質は温度によってその状態や性質をかえるため、温度制御はモノづくりには欠かせないものだといえるでしょう。

これまでの温度計測
このように温度計測はとても一般的で、そしてとても重要なものであるため、その方法にもさまざまな種類があります。とくに産業に利用しやすい方法としては、金属の熱膨張を利用した「バイメタル」、温度による電気抵抗の変化を利用した「サーミスタ」、そして金属の熱起電力を利用した「熱電対」などがあります。

これらはすべて「接触式温度センサ」といって、温度をはかるためにセンサを測定対象に接触させる必要のある方法ですが、測定対象に触れなくても温度を計測できる「非接触式温度センサ」というものもあります。

代表的な非接触式温度計である「放射温度計」は、「触れずに温度をはかれる」、「回転や移動しているモノの温度をはかれる」、「応答速度が速い」などの特長から、食品の調理や工業製品の生産ラインでの品質管理、電気設備のメンテナンスなどで活躍しています。

そのいっぽうで、「もっと広い面積を測定したい」とか「異常発熱箇所が瞬時にわかるような温度計を」といったニーズが高まっています。このような用途では、接触式の温度計はもちろん放射温度計でさえ、1点1点測定していたのではとても時間がかかります。

テレビ番組などでおなじみの「熱画像装置(サーモグラフィ)」は、測定対象全体の温度分布がよくわかって、この目的にかないそうです。しかし装置がとても高価なうえ、大がかりで取り扱いも面倒だといった欠点があります。

温度が「見える」温度計
そこで開発されたのが『2次元放射温度計 アイスクエア』です。デジカメのように測定対象を見ながら温度を測定することができるこの放射温度計は、画像と同時に64点の温度を記録することができます。

液晶モニタに映し出された画像には、同時に表面温度が8×8の碁盤の目状に色わけされて表示されます。目で見たまま同じ画像の上に温度分布が表示されるので、まわりと温度が違う箇所を見つけるといったことも、一目で瞬時にできます。

さらに、デジカメと同じようにシャッターを押すと、写真画像と2次元の温度分布が同時に記録されます。測定データはコンパクトフラッシュ(CF)カードに蓄積されるので、パソコンをつかってあとで編集することも可能です。

『2次元放射温度計 アイスクエア』のしくみ
一般的な放射温度計には、熱源から発せられる赤外線をキャッチする、「サーモパイル」という素子がつかわれています。2次元の温度分布をはかるためには、このサーモパイルを縦横にいくつもならべた「サーモパイルアレイ」をつくらなければなりません。

しかし、サーモパイル素子をそのままならべたのではセンサのサイズが大きくなりすぎます。センサが大きくなると、それにともなって光学系も大きくなり、小型化や低価格化には大きな妨げです。かといって素子ひとつひとつを小さくすると、従来の技術では十分な感度が得られませんでした。

この難題を克服したのが「半導体プロセスによるマイクロマシニング技術(MEMS)」です。この技術を応用して一辺1ミリメートルの微小で高感度なサーモパイルの開発に成功し、その素子を縦横8列ずつならべた「64素子サーモパイルアレイ」を世界ではじめて実用化することがでました。

『2次元放射温度計 アイスクエア』は、心臓部ともいえる64素子サーモパイルアレイからとりだされた2次元温度分布データと、CMOSイメージセンサで撮影した可視画像とをかさねあわせ、瞬時に表示します。

高度なセンサ技術が『2次元放射温度計 アイスクエア』の小さなボディとデジカメのような手軽さを実現し、これまでになかった温度計測の可能性をひらきます。「こんな使い方ができるのでは?」というご意見がありましたら、ぜひ編集部まで!


関連情報
HORIBA:ニュースリリース
「世界初!〜画像と温度を瞬時に撮影記録〜
デジカメ感覚の放射温度計『アイスクエア』誕生!」
HORIBA:放射温度計プラザ