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株式会社SUBARU

【詳細版】車両試験の約7割を台上シミュレーション試験化に成功
〜V字開発におけるフロントローディングにHORIBAが貢献〜

背景・課題

自動車開発プロセスにおいて、期待する車両性能・車両品質を担保するために部品レベルから車両レベルにかけて、各ユニットそれぞれに検証試験が行われます。特に、全てのユニットを組み合わせた完成車両では何度もテストベンチにて試験を繰り返し、最終的にはテストコースや公道での実路における走行試験を経て、車両品質を熟成させます。
この自動車開発の過程において、SUBARUでは一般的に以下3つの課題があると理解していました。

課題 その①

1つ目は、実路のテスト再現性。

実路での走行試験では、本来ならば同一条件で複数回試験を通すことでその車両の挙動特性・性能特性を評価します。しかしながら、気温や天候の影響によって試験路面が時々刻々と変化するため、同一路面を再現することが難しい上、同じように運転する事が難しく、異なる結果になることが多々あります。その場合、試験車両の本来の挙動・性能が正確に検証しづらく、何度も試験を繰り返す必要に迫られます。それだけでなく、要求条件の天候になるまで待つ必要があり、必要なタイミングで必要な試験ができず、時間だけが過ぎていく実態がありました。そのため、環境条件に依存しない安定したテスト用路面を任意で再現できる設備が必要でした。

課題 その②

2つ目は、複雑化する車両制御に伴う試験の増加。

昨今の自動車開発では、電子制御デバイスの増加、電動パワーユニットの統合が進み、車両に搭載される部品点数が従来自動車に比べて格段に増加しています。その結果、多数のコントロールユニットを連携し協調制御することが必要不可欠となっており、制御自体の複雑化および適合評価項目の増加を招いています。また課題が発生した場合は、課題の要因となる工程にまで遡り再設計・再適合・再評価が必要となり、それにかかる工数と時間ロスは膨大です。そのため、高精度で網羅的な評価を可能とし、後戻りのない質の高い試験を実現することが重要でした。

課題 その③

3つ目は、エンジニアの工数負荷増大。

システムも複雑化し、適合評価項目も増加すると、必然的にエンジニアの工数負荷も増大します。また、実路テストでは走行試験を終了してから計測値の解析を行い、車両挙動を確認するため、何か想定外の事象が発生していてもリアルタイムに解析することが難しく、原因特定に時間を要することもあります。そのため、実路テスト前にできるだけ車両挙動をリアルタイムに解析し、車両制御に反映させてから実路での走行試験を行う必要がありました。かつ自動化試験等で工数負荷改善にも繋がるシステムを検討されていました。


これらの課題に対して、SUBARUではテストベンチを活用して、あたかも車両が路面を走行しているようなシミュレーション評価ができるシステムの構築・導入を検討していました。つまり、実路で生じる負荷と同等の負荷条件を生成できるテストベンチを開発したいと考えていました。

導入のポイントとシステム概要

今回SUBARUが開発を目指していたシステムはかなり複雑なものになるため、意思疎通や技術的な知見の相互提供を円滑に行えるよう、SUBARUとHORIBAの共同開発としてプロジェクトを実行することとしました。

ベースとなったのが、HORIBAの4軸駆動系システムです。4つのダイナモメータをタイヤに見立て、制御コントローラから任意の負荷をそれぞれのダイナモメータにかけることによって、雪道・坂道といった路面条件だけでなくコーナリングなど、車両走行時の運転挙動の再現が可能となるシステムです。精度よく路面走行を再現するには、ダイナモメータに指示する負荷がより実路走行での挙動条件を模擬している必要があるため、株式会社バーチャルメカニクスが提供する車両運動シミュレーションソフトウェア「CarSIM®」を用いました。CarSIM®を使えば、実路を走行したときの負荷を計算により算出することができます。

また今回、SUBARUは車種や仕様変更に対しても柔軟に対応できる汎用的なHILSを導入したいと考えていました。背景には、車両モデルを作成している部門とのデータ連携、今後新たに導入する設備での開発内容との連携など、構想設計から実車試験までのV字プロセス開発を本当の意味で達成することを重視していたためです。HORIBAはその思想を理解し、共同研究としてシステムを構築しました。

システム概要

このシステムを円滑に立ち上げるため、独自の制御ロジックを作り、通信テストと実車検証試験を行い、極めて短期間にテストセルを稼働させることに成功しました。

導入効果と今後の展望

当初のシステム概要・コンセプトからずれることなく、納期通りシステムをSUBARUに納入できました。勾配・走行抵抗などの走行路条件をCarSIM®内に任意に作成し、同一条件での繰り返し評価ができるため、今まで以上に安定して網羅的で綿密な評価が可能となりました。また、テストコースで取得したデータと、今回の4軸駆動系システムを導入したテストベンチで取得したデータの突合せを行った際、ほぼ同様の結果が得られることが確認できています。そのため、今まで実路でしか試験できなかった項目のうち、約7割の試験項目をテストベンチに置換できました。ユーザからは、このシステムにより、過酷な試験を台上で対応でき、それによって車の素性を改めて理解し、品質を高めることができたと、成果を実感頂いております。

当初の目的に即して、SUBARUは車両開発の最終段階で行う実車両試験でこのシステムを適用し、最終的な品質確認を行っていきます。さらに、構想設計から実車試験までのV字プロセス開発でのシステム連携を視野に入れているため、将来的にはエンジン搭載前のパワートレインにおけるシステム検証や機能検証にまで展開していくことを考えています。また平行して、今はオペレーターがシステム操作を手動で行っている部分について、近い将来にHORIBA製のテストオートメーションシステム(STARS)の機能を用いて自動試験が行えるようにしたいとも考えています。その場合、オペレーター工数を現在の1/4程度まで低減できるでしょう。

今後もHORIBAは、SUBARUが実現したいことを理解し、一緒になって形にしていく姿勢を継続していきたいと思っています。