[報道発表] 掲載内容は発表日時点の情報です。

『2017堀場雅夫賞』受賞者決定 / 授賞式は10月17日

2017年7月24日


-社外の「分析計測技術」研究者の奨励賞-

「水の安心・安全の確保」を通じて「人の生活の豊かさの実現」への研究 

当社は、このほど、国内外の大学または公的研究機関の研究開発者を対象とした「分析計測技術」に関する研究奨励賞「堀場雅夫賞」の2017年度の受賞者を決定しました。
2003年の本賞創設から14回目となる今回の選考テーマは、"人の生活を豊かにする水計測"です。本年3月から5月にかけて公募し、海外含め29件の応募がありました。これらの応募に対し、募集分野において権威ある研究者を中心に8名で構成する審査委員会が、将来性や独創性、ユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、堀場雅夫賞受賞者3名、特別賞受賞者1名を決定しました。受賞記念セミナーならびに授賞式は、学究界および行政関係から出席者をお招きし、10月17日(火)京都大学 芝蘭会館にて執り行います。

2017堀場雅夫賞 募集分野について

私たちが生きていくうえで、「水」が非常に大切であることはいうまでもありません。水にまつわるさまざまな現象を正確に知ることは、生活の質の向上につながります。私たちは、飲料水・食品・農作物・医薬品だけでなく、海や川などの環境水を通して、直接的または間接的に「水」と関わっています。水をよりよく活用するには、誰もがどこでも簡単に水の計測を実現できる技術や日々の生活に溶け込んだ計測技術、得られた多くのデータを解析して新たな価値を生み出す情報処理技術などが求められます。
本年の堀場雅夫賞は、水を計測対象として、「簡単に」「正確に」「リアルタイムで」「その場計測・分析」が可能な計測技術と情報処理技術を複合し、新たな価値の創造につながる研究開発にスポットを当てました。

<受賞者ご紹介>

[堀場雅夫賞]

石松 亮一 氏 
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門  助教

「水中の溶存物検出に向けた電流・光応答に基づく小型分析系の開発」
環境水や土壌の汚染は、現在においてもなお、潜在的な世界的課題となっている。その対応策として、その場で水の安全性を確認できる簡便な測定法が求められている。
石松氏は、イオンの移動電流に着目し、水中の親水性マイナスイオンを高感度に分析できる原理を考案するとともに、水中のプラスイオンを高選択的に多成分同時検出できる「電流応答型イオン選択性電極」を新たに開発した。さらに、有機ELと有機フォトダイオードを応用して、イオン移動に基づく検出が難しい中性物質、たとえば非イオン性界面活性剤をppbレベルまで定量できる分析システムを構築した。これらの分析システムは小型化が可能であり、「その場」分析に適したポータブル測定装置として、世界各国における環境水中の汚染物質測定に貢献することが期待できる。

加藤 大 氏 
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門  主任研究員

「測定対象の多様化に向けたスパッタナノカーボン薄膜電極の開発」
電気化学測定法は、分子の酸化還元反応の際に流れる電流や電極界面の電位を測定することで、対象物質を検出する手法である。簡便・安価な検出手法として期待される一方、測定できる電位範囲が狭く微量物質の検出も困難であることから、測定対象となる物質が限られる点が課題とされてきた。
加藤氏はカーボン薄膜材料の精緻な設計により、従来電極では検出できなかった全核酸塩基などの生体分子、ビタミンEなどの抗酸化物質、ヒ素などをきわめて高感度かつ再現性良く測定できる「スパッタナノカーボン薄膜電極」を開発した。
本研究は電気化学法の適用範囲を拡大するものであり、飲料・食品・環境・生体といった多くの分野における実用化が期待される。さらに、これまで電気化学的な分析が困難であった物質の標準定量法となり得る技術としても注目される。

※カーボン薄膜材料: 構造制御によりグラファイトのような高い導電性とダイヤモンドのような硬度を併せ持ったナノカーボン薄膜

床波 志保 氏
大阪府立大学 大学院工学研究科 応用化学分野 准教授
LAC-SYS研究所(RILACS) 副所長 

「水中細菌計測のための細菌表面構造転写技術の開発」
細菌による食中毒や感染症の防止は、飲料水や食品の安全・安心を確保する上で重要である。ただし、これまでの細菌検出法は測定に数日かかってしまうだけでなく、煩雑な前処理や技術的な熟練も必要とするのが普通であった。
床波氏は、細菌の表面化学構造を精巧に写し取った「細菌鋳型膜」の合成方法を確立した。さらに、この細菌鋳型膜と、細菌の動きを制御できる誘電泳動法とを組み合わせることにより、まったく新しい発想の細菌検出法を開発した。この方法では目的とする細菌の検出がわずか数分で可能で、従来法に比べて大幅な時間短縮に成功した。細菌鋳型膜の特徴から、非常に選択性の高い検出手法としても注目される。
迅速かつ高選択的な細菌検出方法として、厳密な衛生管理が求められる浄水場や食品産業全般における細菌検出システムへの活用が期待される。  

[特別賞]

マイケル ゴンジオール 氏 
メリーランド大学 環境科学センター チェサピーク生物学研究所 准教授

「淡水および海水中の溶存有機物および汚染物質の光分解性の半連続的評価」
水中の溶存有機物は、水中におけるさまざまな生物的・化学的プロセスに影響を及ぼすことから、水質を表す指標の一つとなっている。溶存有機物のうち、蛍光を発する性質をもつものは「蛍光性溶存有機物(CDOM)」と呼ばれ、その分解過程では光分解によるものが重要である。
ゴンジオール氏は、従来の装置では成し得なかった長期間にわたる半連続的なCDOMの挙動観察が可能な、独自の光分解システムを構築することに成功した。さらにシステムを用いて、海水や湖水中の溶存有機物や汚染物質の挙動メカニズムの解明を試み、経時的変化や他の水質指標との関係性を明らかにした。
この研究は、環境および生態系に密接に関係する溶存有機物の評価方法として、水質の保全・改善に有効な情報提供に繋がるものと期待できる。

関連情報 堀場雅夫賞ウェブサイト