(株)堀場製作所は、データ出力機能付の非接触温度計 IT-550Fを発売します。コンビニやスーパーの弁当など食品分野で、品質に深くかかわる"温度”を触れずに瞬時に測定。データ出力機能により在庫と併せて温度も集中管理できます。
価格:5万9千8百円(注:データ出力には拡張キット(1.3万円)が必要です)
販売開始:1月21日
初年度販売目標台数:1万台
物体からは温度に比例した量の赤外線が出ており、赤外線量を検出して温度を測定するのが、放射(非接触)式温度計です。モノに触れずに瞬時に表面温度を測定と衛生的でスピーディです。さらに本新製品には、測定した温度データを出力する機能が付いているので、測定毎に記録する必要がなくリアルタイムで直接ホストコンピュータに伝送できる、と簡単操作です。これらの特徴から、病原菌汚染を防ぐために衛生管理システム「HACCP」の導入が進んでいる食品分野での温度管理・品質記録に適しています。スーパーやコンビニなどでのPOSシステムに接続することにより、在庫情報と併せて温度情報も全店リアルタイムに集中管理でき、品質保持・衛生管理につながります。5.98万円と同性能・機能では最も低価格で、データメモリ(130個)やプリンタ出力対応など、記録機能を充実しています。なお、応答速度が2倍(0.7秒)でメモリ機能ナシの、L形も同時発売します。
〈 主 な 特 長 〉
- メモを取ることなくデータを記録・管理
HACCPで必要な記録が簡単にできる。メモリーや印字対応など記録機能が充実。 - 濡れた手でも安心測定の防水構造
食品加工など水を使う現場でも安心して測定。 - 高級機種なみの性能
当社従来比1/3に絞り込んだ視野(1mの距離から直径24mmを測定)で、より的確で確実な温度測定が可能。
〈 主 な 仕 様 〉
測定範囲:−50.0〜500.0℃
応答速度:約1.6秒
外形寸法:200×47×48mm(280g)
電源:9V乾電池1個
参考資料
- HACCP(危害分析・重要管理点)
米国で安全な宇宙食を作るために開発された衛生管理システムだが、国際的な衛生管理基準となりつつある。
汚染を予防する仕組みとして日本でも注目され、1996年に「食品衛生管理製造工程」の承認制度としてスタートしている。HACCPでは、生産から消費に至る全工程で食品への危害を分析し、重要なポイントについては温度・pH・湿度・時間などを監視するとともに、測定データの保存を義務づけている。項目の中で特に、温度は微生物の繁殖と密接な関係があり、触れずに温度が測れる非接触式温度計は、食品の検査に適している。さらに、本新製品はメモリー機能とデジタル出力機能があるため、HACCPで要求される全数検査とデータの保存が可能と、食品分野のニーズに対応する温度計
- 測定原理
ほとんどの物体からは温度に比例した赤外線が出ており、温度が高いほど赤外線量も多い。放射(非接触式)温度計は、物体から出る赤外線量を赤外センサで検出し温度として表す。通常の接触式に比べ、接触しないので衛生的、瞬時測定、センサが摩耗せず半永久的に使用可、離れた所から測定できるなどの利点がある。
- 拡張キット(1.3万円)
測定データをパソコンやPOSシステムに転送する際に必要なインターフェイス(拡張ボックス),ケーブル,パソコン用ソフトをワンパッケージしたオプション。データをPOSシステムに転送することで情報の一元管理が可能。また、データをパソコンの表計算ソフトなどにも活用もできる。プリンタへの印字も可能。
- データメモリ
最大130個の測定値を記憶できる。また、最大64項目まで番号をつけてファイル管理が可能。オプションのソフトを使用すれば、項目番号に名前をつけて(例えばレタスはNO.1、キャベツはNO.2)登録することで、報告書を自動作成できる。
- その他の用途例
- メンテナンス業界では…
通常高い場所にある電機設備や配電盤などの保守点検は、地上から測定できる放射(非接触式)温度計が安全で便利。1m離れた所から直径2.4cmの小さい場所の温度測定が可能。しかも2本のレーザ光で測定個所を確認できる。 - 研究開発業界では…
開発中の製品の稼動試験中の温度がどのように変化したかを連続測定し、その結果をパソコンに取り込んだり、アナログ出力を使ってレコーダーに連続記録することができる(IT−550L)。〔IT−550Lの価格は、Fと同じく5万9千8百円〕
- メンテナンス業界では…
◆開発者からの一言◆
食品分野での使用を想定しているので記録機能とあわせて、防水構造にすることが商品コンセプトでした。何と言っても、デリケートな光学素子を使う温度計で防水(IEC529 IP54)を実現することが一番苦労しました。上と下のケースの成型とゴムパッキンの成型の3つを合わせた時に、少しでも隙間があれば水が入ってしまいます。また、ボタンについても、一時はシートスイッチを検討していましたが、誰が押しても確実にボタンを押している感触がすることにこだわり、あえてラバースイッチでの防水にチャレンジしました。スイッチまわりにドーナツ状の突起をつくり、パッキンと同じ働きをもたせることで克服しました。