令和5年度近畿地方発明表彰「日本弁理士会会長賞」を受賞 (排ガス等のガス分析装置に関する発明)

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株式会社堀場製作所(以下、当社)の排ガス等のガス分析装置に関する発明「赤外レーザ吸収変調法 (特許第6886507号)」が、公益社団法人発明協会の主催する令和5年度近畿地方発明表彰において「日本弁理士会会長賞」を受賞しました。この発明により、従来技術では困難な条件下においても高精度なリアルタイム測定を可能とし、光吸収を用いたガス分析装置の産業への適用範囲を大きく広げることに成功しました。


受賞内容

本発明は、ガスが特定の波長の赤外光を吸収する性質を利用したガス分析手法において、計測された試料ガスの吸収信号から、高速かつ高精度にガス濃度を求めるための濃度演算アルゴリズムに関する発明です。本発明を用いたガス分析手法を、赤外レーザ吸収変調法(IRLAM: Infrared Laser Absorption Modulation、アーラム)と呼びます。
赤外吸収を用いたガス分析における重要な課題の一つが、試料ガスに含まれるターゲットガス以外のガス(干渉ガス)からの光吸収の影響(干渉ガス影響)をいかにして取り除いてターゲットガスの濃度を正確に求めるかということです。従来技術では、計測された吸収信号を吸収スペクトル(波長と吸収率の関係)の形で表し、あらかじめ用意しておいたターゲットガスや干渉ガスのモデルスペクトルと照合(フィッティング)して、干渉ガス影響を取り除いた目的ガスの濃度を算出していました(図1左表)。しかし、このスペクトルのフィッティングという演算処理はコンピュータにとって大きな負荷となり、リアルタイムで分析を行う上では課題となっていました。
そこで当社は、機械学習などで用いられる「特徴量」という概念を、赤外吸収を用いたガス分析の濃度演算アルゴリズムに適用することを着想し、赤外レーザの波長を周期的に変化(変調)させて得られる時間領域の吸収信号(試料ガスの吸収スペクトルの形状を反映)から直接、ターゲットガスや干渉ガス、その他の外乱影響の特徴量を抽出して、それらの特徴量の関係性からターゲットガスの濃度を算出するアルゴリズムを考案しました(図1右表)。このようにすることで、濃度定量に必要な情報量を保ったまま、演算に用いる変数の数を大幅に減らすことができ、濃度演算処理の負荷を劇的に軽減することに成功しました。
本発明により、高精度なリアルタイム計測が求められる工業プロセスの連続監視・制御や車載型の排ガス計測など、従来技術では実現が困難だったガス分析ニーズに対しても、小型で安定した連続計測が可能な分析装置を提供できるようになりました。


近畿地方発明表彰について

公益社団法人発明協会が主催する地方発明表彰は、各地方における発明の奨励および育成、科学技術の向上と地域産業の振興を目的として大正10年に始まりました。以来、優れた発明、考案又は意匠を生み出した技術者・研究開発者の功績を称え顕彰することにより、今日の科学技術の発展に寄与しています。


図1 従来技術とIRLAM技術での濃度演算方法の比較


受賞概要

◆日本弁理士会会長賞
受賞者: 株式会社堀場製作所 渋谷 享司
実績功労賞:株式会社堀場製作所 代表取締役社長 足立 正之
受賞技術名: 赤外レーザ吸収変調法
登録番号: 特許第6886507号


令和5年度近畿地方発明表彰 その他受賞一覧

◆発明奨励賞
受賞者: 株式会社堀場製作所 大橋 聡史
受賞技術名:放射線検出装置及び放射線検出用信号処理装置
登録番号:特許第6857174号

◆発明奨励賞
受賞者: ホリバ・インスツルメンツ社(アメリカ) 赤土 和也、林 繁之
受賞技術名:弁要素、流体制御弁及び半導体製造装置
登録番号:特許第6910181号

◆発明奨励賞
受賞者: 株式会社堀場アドバンスドテクノ 小林 一星
受賞技術名:イオン電極
登録番号:特許第5144829号



左から、日本弁理士会会長賞受賞:渋谷 享司、実施功労賞受賞:コーポレートオフィサー CTO 中村 博司(受賞者である代表取締役社長 足立 正之の代理で出席)、発明奨励賞受賞:小林 一星

 

 

受賞した技術を用いた製品一例 1.据え置き型排ガス分析装置MEXA-ONE-XL-NX(MEXA-ONE IRLAM)
2.車載型排ガス分析装置OBS-ONE-XL(OBS-ONE IRLAM)
3.プロセスガス分析計PLGA-1000