「2006 堀場雅夫賞」来月募集開始

|   ニュースリリース

(株)堀場製作所は、2004年に創設した社外対象の研究奨励賞「堀場雅夫賞」の第3回目となる本年度募集を4月1日から開始します。今回の対象テーマは当社の元素分析におけるコア技術「X線分析」です。第1回の募集対象分野“pH計測”、第2回の“赤外線計測関連技術”に続くもう一つの基盤技術で、HORIBAグループ発展の原動力となった“X線分析”に焦点を当てることで、学術的・工業的にも価値の高い同技術の可能性を追求していきます。分析・計測技術発展の将来の担い手となる方々の積極的な応募を期待するとともに、画期的でユニークな分析・計測技術に「おもしろおかしく」従事されている研究者・技術者を支援することで、計測技術の発展の一助になればと願っています。

〈今回の募集対象:X線分析について〉
X線は、医療分野はもとより、元素分析・結晶構造・工業利用から、宇宙や生命の探求など、自然科学技術のさまざまな分野で利用されています。応用範囲は極めて広く、X線の可能性は現在も拡大の一途をたどっています。今回は、X線源やX線光学、X線計測技術などの原理・装置開発等、X線分析関連シーズに関する科学技術から、半導体・素材・ナノテク・バイオ等の先端分野の発展に寄与するX線分析の応用に関する科学技術まで幅広い視点からの募集が対象になります。

〈応募要綱〉

【募集対象】
 国内外の大学または公的試験研究機関に所属する方
【募集分野】
 「X線分析」
【審査方法】
 審査委員会が応募書類に基づき実績と将来性を審議し決定
【発表】
 7月末予定
【賞の内容】
 受賞者には、賞状及び副賞として助成金を支給
 (副賞は、1件あたり金150万円を支給します。ただし本賞および副賞の授与は応募資格の継続が条件)
【表彰式】
 2006年10月17日(火)京都大学芝蘭会館(京都市左京区吉田牛の宮11-1)
 受賞者による講演やポスターセッションを通して、研究内容を広く社会にアピールする予定
【応募期間】
 2006年4月1日(土)〜5月31日(水)
【応募方法】
 応募書類など詳細は、本賞ホームページに掲載:

http://www.mh-award.org/

【応募・問い合わせ先】
 郵便番号601-8510 京都市南区吉祥院宮の東町2番地
 株式会社堀場製作所内 堀場雅夫賞 事務局
 TEL 075-313-8121(代)
 E-mail: info@mh-award.org

【審査委員会】(敬称略、順不同)
名誉審査委員長:
 堀場 雅夫(株式会社堀場製作所 最高顧問)
審査委員長:
 堀場 厚(株式会社堀場製作所 代表取締役会長兼社長)
副審査委員長:
 合志 陽一(東京大学 名誉教授)
審査委員:
 河合 潤(京都大学大学院 工学研究科 材料工学専攻 教授)
 谷口 一雄(大阪電気通信大学大学院 工学研究科 総合電子工学専攻 教授)
 中井 泉(東京理科大学 理学部 応用化学科 教授)
 大堀 謙一(株式会社堀場製作所 科学システム統括部 統括部長)
 駒谷 慎太郎(株式会社堀場製作所 科学システム統括部 XGTプロジェクト プロジェクトマネージャー)
特別審査委員:
 中澤 弘基(独立行政法人 物質・材料研究機構 フェロー)
 Dr. George J. Havrilla Los Alamos National Laboratory, USA
〈X線分析と当社の関わり〉
X線分析技術は当社の元素分析におけるコア技術であり、X線マイクロアナライザーや蛍光X線分析装置の販売は約30年に及びます。核物理の研究を目指した堀場雅夫の原点ともいえる放射線計測分野への進出は、1950年代に赤外線用単結晶の製造技術確立後、ヨウ化ナトリウムシンチレータの開発から始まりました。1960年代に半導体検出器の開発を進め、1976年には、日本で初めての本格的なエネルギー分散形X線分析装置を製品化しました。その後、デジタル技術の発展とともに、X線分析装置は2次元の画像データ解析機能など高度に進化し、液体、気体に続く、固体分析の幹へと育っています。

今回、募集対象として「X線分析」に焦点を当てることで、学術的・工業的にも存在価値の高い同技術の可能性を更に追求していきます。

〈堀場雅夫賞募集に当たって〉 堀場雅夫 談
内容、性質、挙動が不明の物質を解明することは、科学者や技術者にとって大変必要なことであります。問題を解くには高度の科学、技術を駆使した分析器が必要となります。ただ、その重要性と高度の技術を必要とする割には一般社会は勿論のこと、学界においてもその存在は大きなものではありませんでした。当賞が地味ではあるが分析の基本をより確立する学究の徒に少しでも勇気を与えてくれることを願って、皆様からの応募をお待ちしています。
 

参考資料

〈賞の背景〉
創業者の堀場雅夫が学生ベンチャーの草分けとして興した当社の歴史は、国産初のガラス電極式pHメータの開発から始まり、今日までその分析対象を液体・気体・固体分野へと拡大しながら、総合分析機器メーカーとしてグローバルに事業を拡大してきました。その発展を支えてきたものの一つに、創業当初からの大学や研究機関との連携があり、地道に基礎的な研究開発に取り組んできた研究者・技術者の努力が大きな原動力となっています。21世紀を迎え、分析・計測の重要性が社会的にも増してくる中、分析・計測技術の分野で、新たな起業・事業化の源となりうるアカデミックな研究・開発を支援するため、創業者の名前を冠した「堀場雅夫賞」を2004年創設しました。

〈賞の趣旨〉
本賞は、画期的な分析・計測技術の創生が期待される研究開発に従事する国内外の研究者・技術者を支援し、科学技術における分析・計測技術の価値をより一層高めることを目的とします。賞の対象分野は、当社が育んできた分析・計測の要素技術を中心に、毎年テーマとなる分野を定めることで、その成果や今後の発展性を世界的にアピールするべき研究・開発に焦点を当てていきます。基礎から応用まで、対象分野においてユニークな研究開発に「おもしろおかしく」従事され、将来の分析・計測技術発展の担い手となられる方々の積極的な応募を期待しています。

堀場 雅夫(株式会社堀場製作所 最高顧問/医学博士)
昭和20年(1945年)10月、京都帝国大学(現京都大学)理学部在学中に、当社前身の堀場無線研究所を京都に創業。今で言う学生ベンチャーの草分けとして出発した。

学生時代の専攻は核物理で、大学教授であった父・信吉氏と同じく、卒業後は大学に残って研究者になる道を志していた。しかし、戦争終結と同時に米軍が、日本に原子核関係の研究・実験を禁止する措置を取り大学での研究を続けられなくなった。自ら自由に実験や研究ができる私設の研究所をつくろうと決心したのが創業のきっかけ。

昭和28年(1953年)1月、株式組織に改組し社長に就任。

堀場無線研究所時代に電解質コンデンサーを開発し事業化を試みるが、朝鮮戦争のインフレのため計画は頓挫。代わりに、コンデンサー生産のために開発したpHメーターを商品として売り出し、現在の株式会社 堀場製作所を設立した。設立当時から大学との産学協同体制で、次々と新しいpHメーターを開発。現在までに至る事業の基盤を確立した。昭和53年 (1978年)、53歳で会長に就任。この時、人生哲学でもある「おもしろおかしく」を社是に制定。会長に就任後は、日本の中小企業、ベンチャー企業の支援や京都の活性化に力を尽くしている。現在は、財団法人 京都高度技術研究所 最高顧問やナノテクノロジーを中心として産学連携を推進する知的クラスター計画、京都ナノテク事業創生クラスター事業本部本部長などを務め、後輩起業家育成に注力している。また、最近は将来の社会を担う人材を育成するため、根本的な教育改革のためにも力を尽くしている。なお、2006年3月、革新的で情熱的な起業家として世界各国の研究や業績を支援する製品をもって地球規模の計測機器ビジネスを創始した活動は、分析化学分野の発展への貢献大として、米国「Pittcon Hall of Fame(分析化学界の殿堂入り)を、アジア人で初めて果たした。

大正13(1924)年
 12月1日生まれ(81歳)
昭和20(1945)年
 堀場無線研究所設立
昭和21(1946)年
 京都帝国大学理学部卒業
昭和28(1953)年
 (株)堀場製作所設立 代表取締役に就任
昭和36(1961)年
 医学博士号を取得
昭和53(1978)年
 同社 代表取締役会長に就任
昭和57(1982)年
 藍綬褒章受章
平成7(1995)年
 同社 取締役会長に就任。
平成17年6月
 取締役を退任。現在は最高顧問
平成18(2006)年
 米国Pittcon Heritage Award 受賞。同時にPittcon Hall of Fame(分析化学界の殿堂入り)
〈過去の堀場雅夫賞の応募実績〉
第1回は「pH計測」の分野が募集対象。計16件(国内15件/海外1件)の応募。受賞者は次の3名。
(所属・肩書き等は受賞当時のものです)

  • 東北大学大学院 環境科学研究科 環境科学専攻 助手 陶 究氏
    受賞テーマ:「電位差法による超臨界水溶液のpH測定装置の開発」
  • 甲南大学先端生命工学研究所 所長(理工学部機能分子化学科教授)杉本 直己氏
    受賞テーマ:「DNAをセンシング素材として用いた細胞内pH測定法の開発」
  • (財)電力中央研究所 環境科学研究所 主任研究員下島 公紀氏
    受賞テーマ:「ISFET-pH電極を用いた海洋の現場計測用pHセンサの開発」


第2回は「赤外線計測関連技術」が募集対象。計32件(国内25件/海外7件)の応募。受賞者は次の3名。

  • 関西学院大学 理工学部 博士研究員佐藤 春実氏
    受賞テーマ『赤外分光法とX線回折法による生分解性高分子のC-H・・・O水素結合の研究』
    −”弱い水素結合”が結晶構造安定化と熱的挙動に果たす役割−
  • 日本大学 生産工学部・応用分子化学科 助教授長谷川 健氏
    受賞テーマ『多角入射分解分光法:仮想光概念を利用した計測法の構築』
  • 大阪大学大学院 生命機能研究科 助教授井上 康志氏
    受賞テーマ『近接場ナノ振動分光学の開拓研究』