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熱伝導度検出方式(TCD:Thermal Conductivity Detector)

目次


測定原理

熱伝導度検出方式(TCD)とは

熱伝導度検出方式(TCD)は、気体が固有に持つ熱の伝わり方(表1:気体の熱伝導率)のちがいを利用するガス濃度の測定方式です。加熱白金線などを使用した熱線センサーにより、試料ガスの熱伝導率の変化による温度の変化を電気抵抗の変化として検出して、試料ガス中の測定成分ガスの濃度を測定します。

TCDは、電気抵抗の変化を高い精度で検出するために、ブリッジ回路を使用して測定する点も特徴です。特に熱伝導率が高い水素(H2)はTCDで測定される代表的な測定成分ガスです。

表1:気体の熱伝導率

表1:気体の熱伝導率

TCDを用いたガス分析計の構造と動作原理

TCDを用いたガス分析計は、試料ガスの濃度を測定するため、試料ガスの熱伝導率の変化を熱線センサーを使用して検出します。熱線センサーは、ガスの熱伝導率の変化を電気抵抗の変化として検出します。この検出を高い精度で行うために、熱線センサーを4つ組み合わせたブリッジ回路を使用します。(図1:TCDのブリッジ回路)

TCDを用いたガス分析計の基本構造(ブリッジ回路)と動作原理

図1:TCDを用いたガス分析計の基本構造(ブリッジ回路)と動作原理

TCDのブリッジ回路は、検出器に同じ仕様の4つの熱線センサー(電気抵抗)を、2つの同じ試料セルと2つの同じ比較セルに組み込むことで、試料セル内で同じ変化をする2つの電気抵抗と、比較セル内で電気抵抗が変化しない2つの電気抵抗とで構成された電気回路となります。ブリッジ回路中のブリッジ電圧(図1の「E」)や出力電圧の測定機能(図1の「V」)は実際には信号処理部にあります。

試料セルでは導入される試料ガスの濃度が変化すると、セル内のガスの熱伝導率が変化し、熱線センサーの表面温度が変化します。熱線センサーの温度変化は電気抵抗の変化として検出されます。比較セルは窒素(N2)が封入されているため、比較セルで検出される電気抵抗は常に一定です。

この4つの電気抵抗と信号処理を組み合わせて、試料ガスの濃度変化をブリッジ回路の出力電圧の変化として検出します。(図1中の「V」)特定の条件下では、この出力電圧と試料ガス中の熱伝導率の高いガスの濃度が比例するため、ブリッジ回路の出力電圧を測定することで、熱伝導率の高いガスの濃度が測定されます。

水素(H2)ガス分析計の構造と動作原理

水素は気体のなかで熱伝導率が一番高いため、TCDを使用して精度の高いガス濃度の測定が可能です。(表1:気体の熱伝導率) 
これ以降は、試料ガス中の測定成分ガスとして水素を測定するTCDを使用した水素(H2)ガス分析計について説明します。

実際のTCDを使用した水素ガス分析計の検出器の構造例を図2に示します。ステンレスで作られた検出器の中に2組の試料セルと比較セルが組み込まれています。各セルには、熱線センサー(電気抵抗)が組み込まれています。

水素ガス(H2)分析計の検出器の構造と動作原理

図2:水素ガス(H2)分析計の検出器の構造と動作原理

試料ガスが2つの試料セルに導入され、各試料セル内で試料ガスが拡散し、熱伝導率が変化します。例えば、水素は最も高い熱伝導率を持つため、試料ガス中の水素濃度が減少し、他のガス濃度が上がると、試料ガス全体の熱伝導率は下がります。この試料セルの熱伝導率の変化により熱線センサーの表面温度が変化して、その電気抵抗が変化します。

また、窒素(N2)が封入されている2つの比較セルは、熱伝導率は一定のため、熱線センサーの電気抵抗は常に一定です。この4つの電気抵抗の状態で構成されたブリッジ回路の出力電圧を信号処理部で検出します。特定条件下では、この出力電圧と試料ガス中の水素のガス濃度が比例するため、水素ガスの濃度が測定できます。

測定に影響を与える要因の低減

検出器内の温度変化による影響の低減

気体の熱伝導率は、温度によって影響を受けます。同じ圧力下では、気体の温度が高くなると熱伝導率は大きくなります。そのため、試料セルと比較セルの内壁面の温度変化は、測定に影響を及ぼします。この影響を低減するため、試料セルと比較セルの内壁面の温度を高精度で一定にする温度制御がTCDの分析計では重要です。

 

試料セル内のガス流速による影響の低減

熱線センサー表面に接触する試料ガスの流速の変化が測定に影響を及ぼします。熱線センサーの電気抵抗は、流速が速いと減少し、遅いと増加します。この流速の影響を低減するため、試料ガスの試料セルへの導入・排出部分やセル容量を最適化し、試料ガスを試料セル内で適切な流速で常時拡散させています。


関連製品

熱伝導度検出方式(TCD)の分析計は、プロセスガス中の水素ガスの連続計測で使用されています。さらに連続ガス計測だけでなく、固体材料中の元素分析にも用いられています。

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