物質の成分特定や分子構造の解析など、様々な分析を可能にする「分光」の技術。大学などの研究機関だけでなく、医療の現場や、半導体・電子機器・食品・エネルギーといった多様な産業分野でもこの技術が活躍し、社会や人々の暮らしに役立っていることは、意外に知られていないようです。
そこで今回は、HORIBAのコア・テクノロジーである「分光」をクローズアップ。同技術を使った当社製品や、個々のお客様ニーズに対応したカスタマイズの事例をご紹介します。
分光分析とは？
音に高低があるように、光にも種類が存在します。
光の種類の違いとは、物理的には波として振舞う光の波長の違いによるものですが、人はその違いを色として認識し、色から物に関する様々な情報を得ています。しかし、人が見ることのできる光は全体のほんの一部です。
人が見ることのできない領域や、認識することのできない違いには物質を知るための有益な情報が多く含まれています。
これらの光を種類によって分離し、分析することを分光分析と呼び、分光分析は光を介して物体の成分や特徴を非破壊・非接触で知ることができる有益な手法です。
分光分析のメリット
■非破壊で測れる
物質は波長によって光を透過させたり、吸収したり、反射したりします。この性質を利用すれば、測定した対象物の内部の情報を非破壊に得ることができます。
例えばX線は物質に対する透過力が強く、レントゲンや空港の荷物検査などで利用されています。また、人の皮膚を透過する近赤外域の光を利用すると、人体を傷つけることなく組織内の情報を得ることが可能です。
[人間の皮膚の内在蛍光発光のIn vivo測定]
■非接触で測れる
工場内のプロセスや特殊な環境での測定では、測定対象物に触れることが好ましくない場合があります。また、遠くかけ離れた場所にあるため、そこまで行って測定することが困難な場合もあります。光を用いた分析はこのような場合にも有用です。
[バイオインキュベーションセルで、生きている細胞を37℃、CO2 5%の環境下での評価]
■多成分を同時に測れる
物質が光を吸収し、その後吸収した波長と異なる波長の光を発することを蛍光と呼びます。蛍光を示す波長は物質によって異なり、この違いを分析することで一度に多成分の測定をすることができます。
また、光と分子が相互作用した結果、ラマン散乱と呼ばれる現象が起きることがありますが、この散乱によって生じる光は分子の指紋と評され、多成分分析に威力を発揮します。
[赤ワインの蛍光指紋]
ウェハ洗浄プロセスでは、薬液を循環させ繰り返し使用するため、時間とともに濃度が変化します。エッチング速度や洗浄能力を適正に維持するため、薬液のリアルタイムでの濃度管理が求められていました。
「紫外近赤外吸収分光分析法」による薬液濃度モニタで、24時間監視を実現。
HORIBAは、紫外域と近赤外域の透過光を測定し、得られた吸光度スペクトルから薬液の濃度を算出する測定方法をご提案し、24時間リアルタイム監視を実現しました。非侵襲の測定のため測定後の薬液はそのまま調合タンクへ戻して使用できることも大きなメリットです。
真空容器（チャンバ）内での有機ELの成膜状態プロセスを管理するため、リアルタイムでのモニタリング方法を探していました。
材料は大気に触れると変質するため、通常の測定法は使えないことが課題でした。
独自開発の「分光エリプソメータ」でリアルタイムのモニタリングを可能に。
HORIBAは、真空チャンバに取付可能な「分光エリプソメータ」を設計。光源と検出器を真空チャンバに取り付けることで、真空状態の中でも膜厚測定を可能にしました。これによってお客様の求めるリアルタイムでのモニタリングが実現しました。
太陽電池の大型基板上の成膜状態を管理するため、基板上に生成される結晶組成を「非破壊」かつ「非接触」で測定する方法を探していました。
さらにこの測定では膜厚や吸収係数、屈折率などの項目を同時に測ることも求められました。
ラマン分光と分光エリプソの統合により多成分同時測定を実現。
HORIBAは、ラマン分光装置と分光エリプソメータを統合した測定装置をカスタマイズによって開発。これを大型基板の搬送機上に設置することにより、試料を破壊することなく表面の結晶性や膜厚、屈折率の同時測定を実現し、お客様の要望をすべて応えることができました。
リチウムイオン電池の充放電による「電極の色」の変化と「活物質」の組成変化をIn-Situ（そのままの状態）で、同時に観察する方法を探していました。
カラーコンフォーカル顕微鏡とファイバープローブ式ラマンを統合。
HORIBAは、カラーコンフォーカルシステム（レーザテック社製）にファイバプローブ式のラマンを統合した装置をカスタマイズ開発。充放電セルを用いて、カラーコンフォーカルシステムの顕微鏡下でラマン測定を行えるように設計し、In-Situでの観察を実現しました。
細胞膜の局所粘度に敏感に応答する蛍光標識を使って、粘度を蛍光寿命値としてイメージ化したいと考えていました。しかし従来の蛍光顕微鏡では蛍光測定だけで、蛍光寿命測定は難しいという問題がありました。
独自開発の「分光エリプソメータ」でリアルタイムのモニタリングを可能に。
蛍光寿命イメージングにより非破壊での測定を実現。HORIBAは、蛍光寿命イメージング顕微鏡FLIM（Fluorescence Lifetime imaging microscopy）を用いて、蛍光寿命によるイメージングが可能です。粘度により蛍光寿命が変わる色素を用いることで、細胞内の微小空間の粘度の分布をイメージングしました。
医薬品の有効成分を短時間で高精度に測定する方法を探していました。
成分濃度が数％の低濃度で、かつ有効成分や添加材の粒径が変化する場合であっても、正確な計測ができる方法が求められていました。
透過ラマン測定法により数mm領域の試料を数秒で測定。
HORIBAは、近赤外分光法よりも試料の粒子径や添加剤量に影響を受けにくい「ラマン分光法」を提案。顕微ラマンなどの表面散乱光の観察ではなく、ラマン光を数mmの領域で透過測定する光学系を設計することで、有効成分を短時間かつ高精度に測定することを実現しました。
コンポーネントもOEM提供しています！
迷光除去、低迷光、コマ収差や非点収差などの収差補正等に関して、高い技術力・豊富な経験を有するHORIBA Jobin Yvon社のグレーティング技術をご提供させて頂きます。
- ルールド平面グレーティング
- ホログラフィック平面グレーティング
- ブレーズドホログラフィク平面グレーティング
- 凹面グレーティング
- フラットフィールド/イメージング用凹面グレーティング
- モノクロメーター用グレーティング
- など、様々な目的に応じ、グレーティングをご提供できます。
分光エリプソメータ
薄膜の膜厚や屈折率を非破壊・非接触で測定できる装置です。
分光エリプソメータUVISEL2
同一ファイバ・光学系のため、再調整、再校正の必要がなく、微小領域において高精度な測定が実現できます。
フォトルミネッセンス測定装置
化合物半導体の高速マッピングでウェハのPLイメージングを短時間で確認できます。
顕微フォトルミネッセンス測定装置LabRAM-HR PL
非破壊、非接触による、化合物半導体の組成評価、欠陥評価、量子井戸の評価、不純物評価、結晶性評価が行えます。