ぶんせきコラム

水質測定をささえる「紫外線酸化分解法」


閉鎖性水域の水質汚濁を防ぐための「第5次水質総量規制」が実施されています。この規制では、東京湾・伊勢湾・瀬戸内海の3つの水域で、排水中の全窒素・全りん測定が必要とされます。今回は、この全窒素・全りん測定のためにHORIBAが独自開発した『紫外線酸化分解法』についてお話しします。

全窒素・全りん測定方法
水中に含まれている窒素やりんは、さまざまな形態をしています。しかし、測定したいものは排水中に含まれる窒素・りんの全ての量、つまり「全窒素・全りん」です。

全窒素・全りんを測定するためには、試料中に含まれている窒素・りんの形態をすべて同じにすることが第一歩となります。このために、全窒素では水中に含まれるすべての窒素成分を「硝酸イオン」へ、全りんではすべてのりん成分を「りん酸イオン」へ、それぞれ分解します。

じつはこの分解方法が、全窒素・全りん測定の重要なポイントです。たとえば、もし試料中に含まれている窒素成分の分解が不完全だったら、分解されずに残った成分は測定されないことになってしまいます。これでは、測定結果が実際の全窒素量より少なくなってしまい、正確な測定ができないからです。

では、全窒素・全りん量を正確に測定するため、信頼のおける分解方法はあるのでしょうか。

紫外線酸化分解法
窒素・りんを分解する方法には、おもに「オートクレーブ法」「紫外線酸化分解法」とがあります。

これまで一般的にもちいられていた「オートクレーブ法」は、試料水を耐圧容器に入れ、120℃、2気圧の高温・高圧で分解をおこないます。

これに対して新しく開発された「紫外線酸化分解法」では、試料水に紫外線を照射し、そのエネルギーを利用することで窒素・りんを分解します。そのため窒素60℃、りん95℃と比較的低温で分解することができ、オートクレーブ法のように圧力をかける必要もなくなりました。

つまり、オートクレーブ法では必要だった耐圧容器がなく、メンテナンスのしやすさが大きく向上しています。また、分解の際に消費する試薬の量も、大幅に低減することができました。

紫外線酸化分解法は、オートクレーブ法とかわらない測定値が得られるうえ、メンテナンス性が優れていることが評価され、日本水環境学会から「技術賞」を受賞しました。これをもとに、HORIBAが開発した「紫外線酸化分解法」は、より進んだ窒素・りんの分解技術として、ひろく使われるようになったのです。



HORIBA:ぶんせきcafe
「閉鎖性水域を汚濁からまもる」
社団法人 日本水環境学会