ぶんせきコラム

CCD技術から
バイオセンサー


『ケミカルCCDによるバイオセンサー』をごぞんじですか? CCDといえばデジタルカメラなどにつかわれている受光素子が一般的ですが、先日発表されたニュースを耳にして「なぜCCDからバイオ?」と不思議に感じた方も多かったのではないでしょうか。

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ケミカルCCDセンサーとは
「CCD」(Charge Coupled Device) は、日本語になおすと「電荷結合素子」ということになります。もともとは電気のエネルギーをバケツリレーのように運ぶ働きをする素子のことをいうのですが、とくにビデオカメラの撮像素子としてひろまったことで、撮影用の受光部品として知られるようになりました。

このたび堀場製作所とバイオ・アプライド・システムズ(現、堀場製作所に合併)が、豊橋技術大学と共同開発したCCDは、カメラのように光を受けるのではなく、さまざまな溶液のpHやイオンの濃度、さらには環境水中に含まれるごく微量の有害物質の濃度などを測ろうとする画期的なものです。このような目的から『ケミカルCCD』と命名されました。

動作原理、そして特長は?
カメラに使われるCCDは光の強さに反応しますが、『ケミカルCCD』では「感応部」に測定対象となる化学物質があると、その濃度に応じて電気的なエネルギーレベルが変化します。そして、このエネルギーレベルの変化量を「電荷量」に変換して測定することにより、化学物質の濃度を求めることができます。

『ケミカルCCD』がキャッチする化学物質によるエネルギーは、ダムの水にたとえることができます。化学物質の濃度が高いということは、つまりダムの水面が高いことになります。そしてセンサーが受けとる「電荷量」はダムにためられた水の量です。

さて、CCDの働きは「電荷を運ぶこと」と最初にご説明しました。つまり、CCDからとり出される信号は、ダムの「水面の高さ」ではなく、ダムの「放水量」ということになります。ここに大きな特色がかくされています。

ダムにためられた水の量を知るために、放水量を測る場合を考えてみましょう。水面の高さを測る場合とくらべて、放水量はしばらく積算することができるので、より大きな値を得ることができます。つまりCCDをつかえば、化学物質によるエネルギーレベルをただ測定するよりも、何倍もの強い信号をとり出すことができるということになります。

またダムの水面には、まわりに吹く風などによってたえず波がおきています。波のある水面の高さを正確に測るのは困難ですが、放水量を測ればほとんど波の影響を受けず、信頼性の高いデータが得られます。なぜなら、波にはランダムに発生する性質があるため、それぞれが互いに打ち消しあうのです。

ダムの水面の波は、CCDでは電気的なノイズにあたります。しかし電気ノイズも波と同じようにランダムに生じるので、やはり打ち消しあってCCDの出力にあまり影響を与えません。

これらのことによって、ノイズの少ない信号成分だけを増幅できる、とても高感度なセンサーが実現できるのです。

バイオセンサーへの応用
『ケミカルCCD』では、その表面に化学物質に感応して電荷を生みだす「感応部」があります。たとえばpHやイオンに感応する膜を形成すると、『CCDpHセンサー』『CCDイオンセンサー』になります。

さらにこの「感応部」として、特定の有害物質と結びつく抗体を固定化すると、環境汚染物質を測定できるバイオセンサーとなります。このような『ケミカルCCD』の技術をもちいると、pHやイオンだけにとどまらず、さまざまな環境汚染物質の測定にまで用途がひらける大きな可能性を秘めているのです。


関連情報
HORIBA:ニュースリリース
「ケミカルCCDによる、ズーム機能付き超高感度バイオセンサー開発」