鉛と人の関係

文化的な面でも工業分野でも、人ときってもきれない仲だった物質、「鉛」。それなのに工業界で「鉛フリー」が推進されるようになったのはどうして?


鉛は色々なところに使われています

鉛は強度を上げたり加工性をよくしたりするなど、多くの効果を発揮する特長を持つ物質であることから、古代から使われてきた重金属の一つです。

工業的には銀の精錬に古くから使われ、腐食が内部に進みにくい柔軟性が高いことから水道管に使われてきました。

現代ではその密度の高さがレンズの精密度をあげ、遮音効果・共振防止効果も高いことからスピーカやケーブル類に使われ、放射線を遮蔽する性質から原子力発電所だけでなく、放射線を使って殺菌・殺虫する農業分野やレントゲン撮影を行う医療分野などで使われています。
また温度特性や耐久性がよいことから、電子機器の基板部分やはんだにも多く使われてきました。

身近なところでは、クリスタルガラスや切子ガラスなど工芸品から工業用ガラスまで、あらゆるガラスの加工性・透明度を上げているのが鉛。

そのほか江戸時代から大正時代にかけては、花魁や歌舞伎役者が使ったおしろいに仕上がりをよくするために含まれていましたし、また趣味の世界でも釣りの錘や狩猟用の弾丸を適度な重さに調整するため、多く使われています。

どうして鉛の被害がでるの?

鉛の人体への影響としては、化合物によって異なりますが主に疲労感、不眠、神経過敏、頭痛や消化管障害など、神経系での発症が見られます。鉛の被害は工業で多用する現代だけのものではありません。

古代ローマの水道管が鉛管であったことや、つい200年ほど前までワインを甘く変えるために酢酸鉛水溶液を添加していたこと、鉛粉入りおしろいを使っていたことなどにより古くから広まっていました。

特に体内に吸収すると9割以上が骨に沈着し、そのうち半分が体外に排出されるには5年かかる(環境省データ)という蓄積性などが、人体への被害を大きくしています。

鉛は回収して再利用できる物質ですが、再利用の難しい電子基板に含まれた鉛はそのまま電子基板とともに埋められます。ただし通常の埋め立てでは酸性雨で鉛 が溶け出してしまうため、雨水等が入り込まないよう周囲をコンクリートで固めるなどした遮断型最終処分場で埋められます。

しかし分別不足などにより最終処分場に送られず、通常の処分場で埋め立てられてしまう場合があります。このようなケースでは有害物質が洩れ出して埋め立て 地の地下水や土壌などから検出されたり、また基準値を超過していたりするなど汚染が報告され、地域住民への被害が懸念されています。

RoHSと鉛フリー

現在、日本国内における鉛の取扱いは、廃棄・排出については大気汚染防止法・水質汚濁防止法・下水道法・環境基本法によって排出規制が施行されていますが、使用にあたっての法規制はありません。(2005年6月現在)

そこで自主規制として、遮断型でない処分場に埋め立てられる事例を防ぐためにも、あらかじめ使用せずつくる体制を整えたり、廃棄時の分別を厳しくしたりす る動きが始まりました。その一部が環境ISO14000シリーズやWEEE、RoHSを始めとする欧州指令に沿った、企業の環境活動です。

欧州では1986年のバーゼル(スイス)での工場事故による有害物質の河川への流入と国内に留まらない汚染拡大の事例から、工場事故防止指令のほか人体に 被害を起こす物質の使用を控える動きが始まり、国土が陸続きで国別に規制を行っても効果が出ないことから、欧州としての取り組みに発展しました。

この取り組みの中で2000年6月に電気・電子機器の廃棄の流れについてWEEEが提案され、2003年2月にはWEEEから6つの有害物質、鉛・水銀・ カドミウム・6価クロム・PBB(ポリ臭化ビフェニル類)・PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル類)が切り離されることがRoHS指令として公布され、 この6物質は2006年7月より電気・電子機器への使用が禁止されることになりました。

鉛は代替品の開発が困難なことから例外・除外措置が多い物質ですが、除外措置に甘んじることなく代用物質の開発が進められ、世界中で鉛フリー化が進んでいます。

鉛に代わる、新しい技術の開発

環境にやさしい製品をいち早く開発しユーザにお届けすることは、環境に関わるメーカにとって重要な使命です。
堀場アドバンスドテクノは環境を測定するメーカとして、日本で初めて鉛フリーのpHガラス電極を開発、2004年7月に発売を始めました。
これは世界から鉛の年間使用量18トンの削減を実現する一歩です。

蛍光X線分析装置を用いて当社従来のpHガラス電極と鉛フリーpHガラス電極に含まれる鉛や有害物質の量を比較分析したグラフ

従来のpHガラス電極
鉛フリーpHガラス電極
従来のpHガラス電極
鉛フリーpHガラス電極
従来のpHガラス電極
鉛フリーpHガラス電極
従来のpHガラス電極
鉛フリーpHガラス電極

堀場アドバンスドテクノの環境目標のひとつは、2006年度中に当社の全製品から鉛はんだを全廃すること。
そのために鉛と同じ目的を果たす別の物質を使い、加工性など鉛よりも扱いにくい困難と問題を克服する技術を開発しています。

その結果、pH電極ではセンサのガラス部分のほか、各接合部などの電気部分のはんだやケーブル本体から完全に鉛を撤廃、ゼロにするなど他の製品に先駆けて徹底した鉛フリー化を達成。
今では他社も続けて鉛フリーの電極の発売に乗り出し、また他分野でもX線撮影技師を守る放射線遮蔽板用に鉛フリーガラス板が開発されるなど、ますます鉛フリーへ向けての歩みが活発化しています。

また開発は当社の環境適合設計ガイドラインに沿い、部品選びから梱包に至るまで、環境負荷を最大限に減らすよう設計されました。
この技術と実績は、今後鉛フリー製品を開発、生産する上でのマイルストーンとなります。

全廃を目指す有害物質は鉛だけではありません。
HORIBAグループではグリーン調達の基準として15物質を規制。RoHSで指定される6物質に加え、オゾン層破壊物質や放射性物質など9物質を指定しました。

堀場アドバンスドテクノは今後もユーザのグリーン調達に適した製品を提供するために、またエコロジカルリーダーであり続けるために、全社一丸となって「人と地球環境にやさしい技術開発」をテーマに有害な地球汚染物質の削減に取り組んでまいります。