導入施設の紹介

どうぶつ眼科専門クリニック_辻田先生

大阪府
どうぶつ眼科専門
クリニック

獣医師 辻田 裕規先生

使用機器: 動物用小型電極式グルコース分析
装置
アントセンスⅢ VET
測定項目: 血糖

糖尿病性白内障の手術の際の入院管理のため血糖測定を実施しています。その際、即時に結果が出るため、迅速性があり、とても助かっています。

眼科に興味を持たれたきっかけをお聞かせください。
学生時代から研究室に配属されるシステムがあり、4年生から臨床系の研究室に入りたいと思っていました。専門分野にあまりこだわりはなく眼科を選択しましたが、専門で眼科に取り組まれる方々の姿勢と眼科学の奥深さに非常に魅力を感じ、興味をもったことがきっかけです。
アメリカに眼科専門医の資格を取りに行こうと考えられたきっかけを教えてください。
どうぶつ眼科専門クリニック_辻田先生

インタビューに答えてくださった辻田先生

大学4年目に眼科臨床研究室で勉強した後は、一般臨床に入りました。その当時はまだ眼科専門病院はそんなに多くはなかったため、眼科を多く診療されている病院に就職しました。その後、大学4年の臨床研究室での知識と3年間眼科メインの一般臨床で働いた技術をアウトプットできる病院を探し就職したのが、28歳のころです。
30歳になったタイミングで自分の獣医師としての今後を考えた際に、一般臨床の中で眼科を得意とするスタンスとして開業するか、専門医を目指して一本化していくかで悩みました。その判断材料の1つとして、以前より興味を持っていたアメリカでの専門医教育プログラムのVisiting Programという見学システムを使い、ニューヨーク州のコーネル大学に渡りました。
どうぶつ眼科専門クリニック_辻田先生

インタビューに答えてくださった辻田先生

大学4年目に眼科臨床研究室で勉強した後は、一般臨床に入りました。その当時はまだ眼科専門病院はそんなに多くはなかったため、眼科を多く診療されている病院に就職しました。その後、大学4年の臨床研究室での知識と3年間眼科メインの一般臨床で働いた技術をアウトプットできる病院を探し就職したのが、28歳のころです。
30歳になったタイミングで自分の獣医師としての今後を考えた際に、一般臨床の中で眼科を得意とするスタンスとして開業するか、専門医を目指して一本化していくかで悩みました。その判断材料の1つとして、以前より興味を持っていたアメリカでの専門医教育プログラムのVisiting Programという見学システムを使い、ニューヨーク州のコーネル大学に渡りました。
最初は1週間だけの滞在見学でしたが、そこでは自分と同世代くらいの研究生が専門医から直接教育を受けていました。
Resident Programを受けるのはかなり狭き門と聞いていますが…
はい、眼科は50倍と言われています。もちろん実力も大事ですが、コネクションも重要な手段だと思います。アメリカで「大事なのは、あなたが何の知識を持っているかではなく、誰があなたのことを知っているかだ。」と言われました。3年間のResident Programを目指すための人脈作りを目的に、最初に訪れたコーネル大学で1年間Fellowshipとして籍を置かせてもらい、その間に大切なコネクションを作れたことが大きかったのだと思います。
二次診療施設の眼科担当ではなく、眼科の二次診療に特化した動物病院を開院しようと思われたのはなぜですか?
日本に戻って、複数の施設で眼科診療に携わらせていただき、その施設ごとで多くの患者と関わらせていただきました。しかし一方で、複数の施設で外来を持つことは、それらの患者に対して定期的な検診を提供できないジレンマもあり、一つの施設でしっかりと眼科診療をやるべきと思うようになりました。また同時に自分が目指す医療理念に基づいたチームを作り、患者さんを救いたいと思いました。
先生のおっしゃる理念とはなんでしょうか?
誠実・思いやり・プロフェッショナルです。
(誠実な医療がしたい。思いやりをもって働きたい。顧客(=動物)目線で働こう。)
そうした理念を持って働くことの重要性を感じた経験があります。あるホテルを訪れた際のことです。そのホテルの従業員が理念カードというものを持っていました。世界共通のサービスについて書かれたもので、どの国でも全く同じサービス提供を徹底し、素晴らしいおもてなしを信念に実施していました。
この理念を持つことの目的は、
  1. 目的を一緒にすることで向き合う人間関係ではなく、寄り添い同じベクトルを向いた
    人間関係を築く
  2. 人によって異なる医療を提供しない。担当するメンバーによりその患者と飼い主への
    安全と安心に差を作らない
ということです。
どうぶつ眼科専門クリニック_スタッフ目標1

施設で掲げている理念をいつでも見られるように
カードにされています

この理念は、どの人が担当しても飼い主も動物も幸せにしたいという、私の思いに通じるところがありました。そのため当クリニックでは病院理念を掲げ、各スタッフの1年間・2年間・5年間の目標を設定しています。各自が「その目標に沿って活動できているか?」を日々問いかけるだけではなく、全メンバーが集まりどっぷりと話し合う機会を月1回設けるようにしました。
どうぶつ眼科専門クリニック_スタッフ目標1

施設で掲げている理念をいつでも見られるように
カードにしています

この理念は、どの人が担当しても飼い主も動物も幸せにしたいという、私の思いに通じるところがありました。そのため当クリニックでは病院理念を掲げ、各スタッフの1年間・2年間・5年間の目標を設定しています。各自が「その目標に沿って活動できているか?」を日々問いかけるだけではなく、全メンバーが集まりどっぷりと話し合う機会を
月1回設けるようにしました。
目標を明確にし、その目標に向かって前進できているのか月1回確認する場を設けることで、他人に対しても自分に対しても目的意識を持って働くことができているように感じます。
どうぶつ眼科専門クリニック_スタッフ目標2
どうぶつ眼科専門クリニック_スタッフ目標3

階段の壁には、各スタッフの目標が掲載されています

病院での診察状況をお聞かせください。
月に何例くらい来院されますか?犬と猫の来院数と比率はどれくらいですか?
1日最大30件の予約を受付けていますが、多い時は月600件に達する時もあります。治っているかの判断のために専用機器での検査が必要で、主治医ではなかなか診察できないこともあり、再診が多いです。
犬と猫の来院率となると、圧倒的に犬が多いです(比率は犬95%くらい)。猫は病気になりにくく、犬の方が活発で、遺伝的な病気も多いからだと思います。
どのような疾患が多いでしょうか?
外来では、角膜・ドライアイなどの目の表面の病気が多く、手術では、白内障手術、緑内障手術になります。
弊社動物用小型電極式グルコース分析装置アントセンスⅢ VETをご使用いただいていますが、検体検査についてお聞かせください。
糖尿病性白内障の手術の際に入院管理のため実施することがほとんどです。原因疾患として糖尿病の疑いがある場合に測定しています。手術の際に高血糖のまま手術をすると予後不良になることもあり、血糖値がきちんと管理できている(コントロールできている)かどうかを術前に確認するためです。
どうぶつ眼科専門クリニック_アントセンスⅢ VET_1
どうぶつ眼科専門クリニック_アントセンスⅢ VET_2

小型電極式グルコース分析装置
アントセンスⅢ VETの設置場所

使用頻度(月検体数)はどれくらいですか?
月1-3ぐらいの検体数にとどまっています。
アメリカでは白内障手術を行う犬の5割近くが糖尿病によるものですが、日本での白内障は犬種性、若年性そして加齢によるものがほとんどです。また、血液検査は基本的に紹介元の主治医にお任せしていて、使用頻度が少ないというのも理由にあります。ただ、手術当日にどうしても血糖値を測定しなければならないケースもあり、アントセンスは即時に結果が出るため、迅速性があり、とても助かっています。
眼科疾患に関連して注目する検体検査項目がありましたら教えてください。
中性脂肪、高脂血症の数値は気にしています。糖尿病でなくても中性脂肪は必ず確認し、高かったらコントロールしてから手術に入ります。特に中性脂肪が高い子は、膵炎とぶどう膜炎を起こす率が高くなってしまうので、手術前には特に気にしています。
他に、感染を疑う角膜潰瘍などでは細菌検査も行います。グラム染色、ライトギムザ染色による塗抹標本でスクリーニングを行い、菌が検出されれば培養検査を依頼します。
血糖値以外に院内で測定される項目、検査等を教えてください。
犬と猫の皮膚科_診察室

クリニックの診察室

麻酔前の血液検査は主治医にお任せし、二次診療でしかできない検査のみを行っているため、検体検査はそんなに多くはありませんが、リンパ腫や炎症性疾患のような病気に関係している症状があり、手術前に診断をする必要がある時や入院中に生化学項目を測定することもあります。
犬と猫の皮膚科_診察室

クリニックの診察室

麻酔前の血液検査は主治医にお任せし、二次診療でしかできない検査のみを行っているため、検体検査はそんなに多くはありませんが、リンパ腫や炎症性疾患のような病気に関係している症状があり、手術前に診断をする必要がある時や入院中に生化学項目を測定することもあります。
犬と猫の皮膚科_診察室

クリニックの処置室

HORIBAのpHメータを使用してドライアイ用点眼液のpH測定も行っています。しみるかしみないかを確認するためです。調合薬(抗生剤で注射目薬にしている)が中性に近ければ、しみにくいことがわかっています。
将来的には、炎症を起こしている時の涙のpHを測定すれば、炎症具合がわかるのでは?と思っています。すでに涙によって病気のグレード、病気の鑑別を判断しているところもあります。
犬と猫の皮膚科_診察室

クリニックの処置室

HORIBAのpHメータを使用してドライアイ用点眼液のpH測定も行っています。しみるかしみないかを確認するためです。調合薬(抗生剤で注射目薬にしている)が中性に近ければ、しみにくいことがわかっています。
将来的には、炎症を起こしている時の涙のpHを測定すれば、炎症具合がわかるのでは?と思っています。すでに涙によって病気のグレード、病気の鑑別を判断しているところもあります。
一般の獣医師で眼科疾患を見る場合、実施するべき検査や専門医へ紹介するタイミングなどアドバイスがありましたら教えてください。
VSJという会社を立ち上げてオンラインセミナーを実施していますが、基礎眼科セミナーで取り上げている検査は一般の獣医師で行える検査だと思います。ここでいう基本的な検査とは、スリット検査、眼圧検査、ドライアイ検査になります。
専門医に紹介するタイミングは、目の中の手術、顕微鏡を使うような特殊な手術や、再診1回2回で答えの出ない場合ですね。特に数回の再診で答えが出ない症例に関しては、早めに紹介いただきたいです。
今後どのような活動に力を入れていきたいと考えていらっしゃいますか?
目の病気で苦しむ患者(動物)の解決への尽力と、そのための次世代の教育、それしかないと思っています。特に、誰もがある一定の知識を得られるような統一された教育プログラムを作ることが大事だと感じています。日本の獣医療は、技術は他国と劣っていないと思いますが、その教育方法にはどこか職人気質なところを実際に経験してきましたし、その教育システムについてはまだまだ向上の余地があると感じています。
今年7月からは自分自身がResident Programを終えたフロリダ大学との協力のもと、当クリニックが日本で初めてアメリカのレジデントを育てることもできるようになりましたが、アメリカのResident Programシステムのような合理的な3年間のプログラム教育も国内での専門医教育プログラムの参考になると感じています。
当院での専門医育成は、今は5年間で1人程度ですが、同じ理念を持った専門医が育っていけば、たとえ違う施設で働いたとしても同じ医療を提供することができると思いますし、眼科に限らずしっかり教育された専門医の数が増えていくと思います。
将来的には、組織をつなげる一つの道具としての理念を通じて、理念に共鳴する他の病院とも連携しながら、教育体制を確立していけたらと思っています。
施設インフォメーション
編集後記

お話を伺ったお部屋は壁の一枚が大きなホワイトボードになっていて、スタッフの間で活発なカンファレンスが行われていることが窺われました。スタッフの皆さんにも辻田先生の掲げる理念が行き渡っているのを感じ、お一人お一人がプロフェッショナルとして業務に従事されている様子が印象的でした。質の高い専門医教育を日本に根付かせたいという辻田先生の熱意が感じられ、私自身もエンパワーメントされたひとときでした。

(2021年6月取材)

※掲載している情報は取材時点のもので、
現在とは異なる場合がございます。

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