宇宙とHORIBA

HORIBAの創業者・堀場雅夫は、科学への強い探求心から学生時代には原子核物理を学びました。終戦から2か月後の1945年10月、その研究を独自に続けることを決意して京都帝国大学(現 京都大学)在学中に創業したのが、堀場製作所の前身である「堀場無線研究所」でした。その後、さまざまな挑戦により、今では世界に約50社を展開する分析・計測機器の総合メーカーとなりました。自動車、環境、医用、半導体、科学などあらゆる分野に「はかる」技術を提供しており、宇宙分野もその一つです。
木星探査機「JUNO」など数多くの探査機や宇宙ステーションへ製品を提供することで、宇宙開発のサポートを行ってきました。2021年6月には「リュウグウ」の初期分析がいよいよスタート。HORIBAも本プロジェクトに参画しています。
私たちは「科学技術の発展と地球環境保全に貢献する」という使命のもと、宇宙開発の推進にも貢献していきます。

彗星探査機「ロゼッタ」に
HORIBAの「グレーティング」が搭載

太陽系の起源を解明する情報を得るために2004年に打ち上げられた、欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」。「ロゼッタ」に搭載されている観測機器の一つである紫外イメージング分光装置※1「アリス」にホリバ・フランス社(旧 ジョバンイボン社)の「グレーティング」※2が搭載されました。「ロゼッタ」は2014年から2年間にわたって彗星を周回探査し、彗星の核から放出されるガスやちりの量や組成などを計測しました。また、「ロゼッタ」の子機である「フィラエ」はその後分離され、2014年に史上初となる彗星表面への着陸に成功しました。

※1 紫外イメージング分光装置:極端紫外線を観測し、彗星核から放出される水や一酸化炭素、二酸化炭素などの放出量を計測するほか、彗星表面の組成を分析します。
※2 グレーティング(回折格子):物質の構造を測定する際に利用される分光分析装置のコア部品です。

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彗星探査機「ロゼッタ」イメージ図
©Spacecraft: ESA/ATG medialab; Comet image: ESA/Rosetta/NAVCAM

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「アリス」に搭載されたグレーティング
参照元:S. A. Stern et al, “ALICE : The ROSETTA Ultraviolet Imaging Spectrograph”, The Rosetta Mission – Space Science Review (2005).

1960年代から宇宙事業に貢献する
ホリバ・フランス社(旧 ジョバンイボン社)

1997年にHORIBAグループの一員となったジョバンイボン社は1819年の創業以来、常に光学分野の最前線で活躍することで、光を波長別に分散させる「分光」の世界をリードしてきました。1968年から宇宙実験用のグレーティング(回折格子)を開発・製造し、数多くの宇宙開発プロジェクトに貢献しています。グレーティングは探査機だけではなく、創薬や最先端材料などの研究開発にも使用されています。

参考:HORIBAのグレーティングについて

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最先端の研究開発に使用されるグレーティング

NASA Awardを2度受賞

2006年9月、アメリカ航空宇宙局(NASA)で主に無人探査機などの開発、運用を担当するジェット推進研究所(JPL)の軌道上炭素観測衛星(OCO)代表研究者であるデイビッド・クリスプ氏より、受託開発グレーティング製作チーム(ホリバ・フランス社)にJPL賞が贈呈されました。3種類の優れたOCOグレーティングの開発を称えるものです。HORIBAの高精度、高回折効率かつ散乱の少ないグレーティングは、宇宙など極限状況下での微弱なスペクトル測定において、大いにその威力を発揮しています。
HORIBAは2000年にもNASA Awardを受賞しており、2度目の受賞となりました。

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宇宙プロジェクトなどにも貢献するグレーティング

国際宇宙ステーション(ISS)に電気伝導率センサーを納入

NASAから採用されたHORIBAの電気伝導率センサーを、国際宇宙ステーション(ISS)で使用される医療用輸液製造装置(IVGENシステム)用に納入しました。
ISSにおいて、宇宙飛行士のけがや病気の初期治療に用いられる輸液の確保は欠かせません。しかし、輸液の運搬には限度があり、ISS内で使われる水を利用して輸液を製造する装置が必要となります。その装置に利用される水は高純度が求められるとともに、安全のため気泡混入も許されません。そのため、純水の電気伝導率を微少量で感度良く検出し、気泡の混入を目視で監視できる機能が求められていました。HORIBAの電気伝導率センサーは2010年に打ち上げられ、ISSに設置されました。

参考:NASA国際宇宙ステーションに電気伝導率計を納入

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国際宇宙ステーション ©JAXA/NASA

木星探査機「JUNO」にもグレーティングが搭載

2011年8月、NASAの木星探査機「JUNO」がアメリカのフロリダ州から打ち上げられ、2016年7月に木星の軌道に入りました。「JUNO」は木星以遠を調査する惑星探査機としては初めて太陽電池パネルで電力を得るシステムを採用した探査機で、木星の内部構造や大気、磁場などを観測します。JUNOに搭載されている8台の科学計測機器のうち2台は分光器で、2台ともホリバ・フランス社(旧 ジョバンイボン社)製のグレーティングが搭載されています。

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木星探査機「JUNO」©NASA

国際宇宙ステーション(ISS)の
日本実験棟「きぼう」に水質計が導入

宇宙空間で極めて貴重な存在である水。現在、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」で次世代水再生システムの実証実験を進めています。次世代水再生システムとは、宇宙飛行士の尿や空調からの凝縮水などを回収し、飲用可能な水質まで再生処理するシステムで、再生率を高め、省電力、小型化、消耗品ゼロを図ったものです。このシステムにHORIBAの水質計が搭載されており、ISSでの実証実験をサポートしています。

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国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」 ©JAXA/NASA

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次世代水再生システム ©JAXA

小惑星「リュウグウ」の初期分析プロジェクトに参画

HORIBAグループで製品のサービス・メンテナンスを担当する堀場テクノサービスは、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」から採取した試料の初期分析プロジェクトに参画しています。「リュウグウ」から採取した試料の初期分析は6つの国際チームで行われます。堀場テクノサービスは化学分析チームに所属し、HORIBAの蛍光X線分析装置とラマン分光分析装置を用いて、本試料に含まれる元素や化学組成を非破壊・非接触で分析します。「リュウグウ」から採取した試料の分析は太陽系と生命の起源や進化の解明に繋がると大きな期待が寄せられています。2021年6月より分析開始します。

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「はやぶさ2」が「リュウグウ」のサンプルカプセルを投下するイメージ図©JAXA

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右から化学分析チーム リーダー 圦本 尚義氏、堀場テクノサービス 代表取締役社長 千原 啓生