2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発し、エネルギー価格高騰をはじめとする世界的なインフレの加速や円安の急伸など、国際政治や社会情勢の不安定さが増す1年となりました。HORIBAのビジネスにおいても、電子部品などの部材調達が滞り、さらに調達価格も高騰して大きく影響を受けることになりました。 しかし、このような厳しい環境下にあっても、HORIBAの2022年12月期の実績は、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益(以下、当期純利益)のすべてにおいて過去最高を記録し、営業利益率も17.0%(前期比2.7ポイント増)を確保しました。半導体市場の活況により半導体セグメントの販売が大幅に増加したことに加え、環境・プロセスや科学セグメントにおいても増収増益となり、結果として中長期経営計画「MLMAP2023」にて掲げた営業利益及び当期純利益の目標を1年前倒しで達成しました。世界的な調達難のなかでここまでの業績を達成できたのは、国内外のグループ会社がグローバルに連携して供給力を高め、お客様への影響を最小限に抑えることができたことが大きく、これも2022年の大きな成果の一つだと考えています。
HORIBAは、創立以来、「ほんまもん」の技術を育んできた開発型企業であると自負しています。また、成長の過程においては、生産、営業、管理など各機能をグローバルにバランスよく連携させることにも注力してきました。様々なファンクションが有機的に連動し、多様な顧客、市場に機動的に対応する、この高い総合力もHORIBAの強みだと考えています。
企業の総合力を高めるためには、サプライヤーとの緊密な協力関係が大切です。HORIBAのサプライヤーは単なるベンダーではなく、協力会社として連携することで、強い信頼関係を築いてきました。協力会社と時間をかけてコミュニケーションを継続し、互いにとって良い方法や施策を常に考え、実行してきた結果、景気の波の影響を受け調達が困難な時でも、各協力会社からHORIBAへの出荷が滞ったことはほとんどありませんでした。技術面においても、社内で基礎技術を確立したあと、信頼する協力会社に設計と製造を依頼する方法を採用するなど、協力会社と常に緊密に連携しています。「ほんまもん」の技術をベースに、お互いの信頼を大切にし、綿密なコミュニケーションを常にとることで総合力を高め、「HORIBAに頼めばなんとかしてくれる」とのお客様の期待に機動的に対応できる会社であり続けたいと考えています。HORIBAは、主に研究開発で使われるハイエンドな分析・計測装置をもって存在感を示してきました。同時に、保有する技術を異なる産業分野に応用展開することで、事業面でのポートフォリオを増やしつつ、大きな成長の機会を得てきました。
MLMAP2023で掲げた注力するフィールドの一つ、「Bio & Healthcare」においても、産業用向けのアプリケーションで新しいビジネスチャンスが見えてきています。HORIBAの医用事業は、血球計数装置の販売を中心に30年以上の歴史を持っていますが、近年では、これに科学分析機器の技術を融合させることで、ライフサイエンスの分野へとその領域を広げています。最先端の技術開発をリードする人財も育ってきており、これからの成長に大いに期待しています。
HORIBAは1990年代後半より、企業買収を含む投資を通じて、魅力的な技術や、高い技術力を持つ企業を世界中からグループに積極的に迎え入れることで、会社を成長させてきました。今後、このような戦略的投資の重要性はますます高まることでしょう。一つの事業分野に偏らず、いくつかの分野に事業を展開し、景気の波のなかでも継続してキャッシュを生み出す。このサイクルのなかでHORIBAがこれまでに築き上げてきた強固な財務基盤は間違いなく大きな強みとなります。
また、企業の評価においては、業績など分かりやすく評価できるものだけではなく、企業文化や価値観が最も重要だと考えています。互いの企業文化への共感と理解が企業買収の成功要因の一つといえるでしょう。HORIBAはその時々で、タイミングを逃すことなくチャンスを掴み、M&Aを通じて成長してきました。1997年にHORIBAグループに加わったジョバンイボン社(現・ホリバ・フランス社)は、HORIBAより長い200年の歴史を持つ、光学分光分野の名門企業です。このように世界中の素晴らしい技術や歴史を持つ企業がHORIBAグループとして新たな命を吹き込み、グループ全体に高い付加価値をもたらしています。
HORIBAは2023年、創立70周年を迎えました。1月にはグループ各社のホリバリアン※約8,500名中、国内を中心に約2,700名が一堂に会して記念式典を開催しました。海外グループ会社からも多くの代表が参集し、ともに70周年を祝うことができました。
記念式典の企画・運営はすべて若手を中心としたホリバリアンが行いました。新たな発想で数千名規模のイベントを自らの手で作り上げる経験は、関わったホリバリアンたちにとって得難いものになったと思います。また、会社の将来を考えると、既存の延長では未来を描くことはできず、次元の違う発想が必要となります。知識を得ることは大切ですが、発想力を持つことはさらに重要なのです。このような記念式典をはじめ、様々なイベントの企画・運営を自らが行うことは、ホリバリアンの柔軟な発想力を鍛える場にもなり、人財育成に資するものと考え、創業以来継続してきました。
HORIBAでは従業員を大切な財産であると考え、材料の「材」ではなく、財産の「財」を用いて「人財」という言葉を示しています。しかし、極めて優れた能力を持つ一人、もしくはほんの数名を人財として頼りにする企業では成長はありえません。個性を持つ多様な人財がチームを組んで協力して
働くことによって大きな成果を生み出すのです。HORIBAは多様な人財と「ほんまもん」の技術を日本の伝統技術の組紐のように編み上げ、数多くの製品やサービスを展開しています。最先端のテクノロジーを追求しつつ、伝統工芸のように何年たっても色あせない価値を創出する企業をめざしてまいります。2023年も変わらぬご理解とご支援をどうぞよろしくお願い申しあげます。
※ホリバリアン : HORIBAで働くすべての人を同じファミリーであると考え、ホリバリアンという愛称で呼んでいます
2023年5月
代表取締役会長 兼 グループCEO 堀場 厚