宮下さん:さっそく、埼玉県秩父市にある植物工場へ見学に行きました。そこの社長さんと話をする中で“低カリウム”というキーワードをもらったんです。その工場では困難だとして着手されていなかった“低カリウムレタス”、私はその場で「それを作ろう!」と決意しました。
HORIBA:すばらしい決断力ですね!
宮下さん:腎臓を患い、透析治療を受けている人たちは、カリウムを多く含む生野菜が食べられないそうです。全国に30万人いるその人たちのためにも、低カリウムのレタスを作らねばという使命感に駆られました。そして、自分が働きやすい環境を整えるため、自分で栽培棚を設計し、そこで必要な備品や設備もオリジナルで作りました。
HORIBA:モノづくりの技術やご経験があったからこそ、ですね。
宮下さん:私にはできない養液循環システムや空調など循環設備は、専門メーカーに依頼をして、植物工場を設立しました。それが5年前、63歳のときです。
HORIBA:その時点からのチャレンジ!すごいです。
宮下さん:畑の野菜づくりでは、太陽と大地の恵みが必要です。しかしそれを使わない植物工場は、どこか自然を冒涜しているという思いがあり、せめてもの償いにと、工場の屋根にソーラーシステムを設置し、工場で使う電力の一部をまかなっています。
HORIBA:植物工場での栽培では、虫がつかないから農薬を使わない、安定供給が可能なため価格変動がない、作業環境が良いというメリットがあるのですね。ほかにも特徴がありますか?
宮下さん:栽培した野菜が日持ちすることです。理由は、細菌が少ないから。露地ものと呼ばれる畑で作るレタスには10万くらいの細菌がいると言われていますが、ここのレタスは300以下。なので、畑で作ったレタスよりも傷みにくく、冷蔵庫に入れておけばとても長持ちしますよ。洗わずにそのまま食べられます。
HORIBA:宮下さんのレタスづくりへのこだわりは、どんな点でしょうか?
宮下さん:まず、低カリウムであること。そこの作り込みには非常にこだわっています。そして、人間はからだの3分の2が水分ですが、レタスは95%が水分です。とても大きなウェイトを占めるので、ファインセラミックスと活性炭でできたフィルターを通した水で栽培しています。