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電磁式流量計とは?(原理・特徴・用途を徹底解説!)

電磁式流量計は、導電性を持つ液体の流量を測定するための流量計で、気体や油などには使用できません。上下水道や化学プラント、幅広い産業で利用されています。本記事では、電磁式流量計の計測原理や特徴、他方式との比較、そして主な用途についてわかりやすく解説します。

目次

電磁式流量計とは?

電磁式流量計は、導電性のある液体の流量を計測するための装置です。可動部を持たず、圧力損失がほとんど発生しないため、上下水道や化学プラントなど幅広い分野で利用されています。非接触での測定が可能な製品もあり、汚れを含む液体や粒子を多く含んだ流体(スラリー)でも安定した計測が可能です。

計測の仕組み

電磁式流量計は、ファラデーの電磁誘導の法則を応用して流量を測定します。流路にコイルで磁場を発生させ、その中を導電性のある液体が通過すると、液体中に電圧(起電力)が発生します。この電圧は流速に比例するため、電極で検出された信号を処理することで体積流量を算出します。流路の断面積が一定であれば、
電圧の大きさから直接的に流量を求めることが可能です。構造上、可動部を必要としないため摩耗や圧力損失が少なく、安定した計測が行える点が大きな特長です。また、液体の温度や粘度、密度の変化にほとんど影響されないのも強みです。

電磁式流量計の特徴と他方式との比較

電磁式流量計は、可動部のないシンプルな構造と、導電性液体に対する高い精度が特長の流量計です。上下水道や化学・食品プラントなど幅広い分野で活用されており、安定した計測が可能です。本章では、電磁式流量計のメリット・デメリットに加え、他の代表的な流量計との違いについても、比較表を用いて分かりやすく解説します。

電磁式流量計のメリット

 高精度かつ安定した計測が可能

電磁式流量計は流体の物性(密度、温度、粘度など)の影響を受けにくく、条件が変化しても比較的安定した計測が可能です。一般的に、読み取り値(RS)に対して±0.5%~1%程度の精度が得られる製品が多く、信頼性の高い計測を実現します。
(※精度は製品仕様や運用条件に依存します)

 可動部がなく、耐久性・メンテナンス性に優れる

電磁式流量計は、流路内に可動部や狭小部がほとんどないシンプルな構造のため、粒子を含む液体でも比較的安定して使用できます。多くの製品ではセンサ部が密閉構造で外部調整を必要とせず、電極部が洗浄不要もしくは簡単な洗浄で対応できる場合が多いため、長期間にわたって高い信頼性とメンテナンス性を維持できます。

 圧力損失が極めて小さい

電磁式流量計は、流路に突出した可動部がなく、流れを妨げる構造がほとんどないため、流体の圧力損失がほとんど発生しません。これにより、液体ポンプや気体圧送装置(コンプレッサー、ブロワー)の負荷が小さくなり、配管システム全体の効率的な運用に貢献します。

電磁式流量計のデメリット

 導電性のある液体以外は測定不可

電磁式流量計は、一定以上の電気伝導率を持つ液体にのみ対応しています。油類、気体、純水(高純度のものを含む)などは基本的に計測できず、適用範囲は限定されます。

 設置条件に制約がある

正確な測定を行うためには、流れを安定させる必要があり、上流側に5D~10D、下流側に3D~5D程度の直管部が必要です。
※Dは配管径を示し、例えば配管径100mmなら5D=50cmに相当します。
 配管内に気泡が混入すると測定誤差の原因になるため、脱気処理(エア抜き)の配慮も重要です。

 電極部の汚れ・付着物に注意

電極表面にスケールや汚れが付着すると、測定値が不安定になったり、誤差が大きくなったりする恐れがあります。特にスラリー(粒子を含む液体)や導電性の高い液体を計測する場合には、電極部に汚れや付着物が生じやすく、測定精度を維持するために定期的な点検や清掃が求められます。

他方式との比較表

電磁式流量計と主な流量計の違いを比較すると下記のようになります。

種類測定方式メリット主な用途
電磁式流量計液体の電磁誘導電位を測定低圧損で導電液体に対応
異物混入に強い
直線性が良好
上下水道、排水、食品、化学
超音波流量計超音波の伝播時間差またはドップラー効果を利用非接触測定が可能
クランプオン対応
水、排水、石油・ガス、化学、医用、空調
カルマン渦式流量計ブラフ体による渦周波数を計測高温・高圧・蒸気対応
可動部がなく耐久性が高い
工業プラント、発電所、空調、蒸気ライン
熱式流量計加熱素子と温度差で質量流量を測定微少流量に強い
高応答性・高感度
高精度測定
半導体、石油・ガス、化学、発電、食品・飲料製造、環境モニタリング
差圧式流量計オリフィスなどで発生する差圧を測定構造がシンプルで低価格
多用途に対応
高温・高圧・腐食性流体にも強い
石油・ガス、上下水道、化学、発電、半導体、空調
コリオリ式流量計チューブ振動によるコリオリ力で質量・密度を直接測定質量・密度の高精度測定が可能
液体・スラリー対応
成分変動にも強い
石油・ガス、化学、食品、医用
石鹸膜流量計石鹸膜が一定の体積値間を移動する時間を測定高精度・低コスト・操作が簡単研究・実験用途、基準器、ガス供給システムの立ち上げ・点検

電磁式流量計の主な用途

電磁式流量計は、導電性を持つ液体に対して高精度で安定した計測が可能な流量計です。以下に代表的な用途をいくつか挙げます。

 上下水道・排水関連

  • 上下水道や排水処理での流量監視に使用されます。
  • 可動部がほとんどない構造のため、スラリー(粒子を含む液体)や浮遊物を含む汚水や排水でも安定した測定が可能です。
  • 中~大口径配管向けの製品もあり、インフラ運用における流量管理の効率化に貢献します。
     

 食品・飲料産業

  • 牛乳やジュースなど、導電性のある液体の計量や流量管理に活用されることがあります。
  • 衛生面を考慮したCIP洗浄(配管を分解せずに内部を自動洗浄する方式)や密閉構造に対応した製品もあり、食品安全や品質管理の維持に貢献します。
  • 可動部がほとんどない構造のため、液体に混入した微粒子や浮遊物の影響を受けにくく、衛生ラインでも安定した流量測定が可能です。
    これにより、製造プロセスの安定運用や効率的なライン管理に寄与します。
     

 化学産業

  • 酸やアルカリなど、導電性のある腐食性液体の流量監視に活用されることがあります。
  • 耐食性素材やライニング(内面に耐食性を持たせる加工)付きの電磁式流量計を用いることで、腐食性液体でも安全に計測が可能です。
  • プロセス制御や反応槽への原料供給などの化学プロセスで利用例があります。
     

まとめ

電磁式流量計は、導電性液体に対して高精度かつ安定した測定が可能な流量計です。可動部がほとんどなく摩耗や詰まりに強いため、スラリー(粒子を含む液体)や浮遊物を含む液体でも安定した計測が行え、上下水道や食品・化学など幅広い分野で活躍します。
耐食性素材やライニング(内面に耐食性を持たせる加工)付きの製品を使えば、腐食性液体も安全に計測可能で、CIP洗浄(配管を分解せずに内部を自動洗浄する方式)や密閉構造対応のモデルでは衛生ラインでも信頼性を維持できます。一方で、測定対象は導電性液体に限られ、設置には流れの安定化や電極の点検が必要です。
総じて、電磁式流量計は「導電性液体を安定して正確に計測できる装置」として、現場で広く活用されています。

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