カルマン渦式流量計とは?(原理・特徴・用途を徹底解説!)

カルマン渦式流量計(以下、渦式流量計)は、配管内に設けた「渦発生体(ブラフ体)」の後ろ側に現れる周期的な渦(カルマン渦)の発生頻度を利用して流量を測定する流量計です。可動部がなく構造がシンプルで、液体および気体(空気・窒素などの一般ガスに加え、水蒸気を含むガス)に対応できることから、工場設備、蒸気配管、空調設備など、多様な業界で使われています。
本記事では、渦式流量計の仕組みやメリット・デメリット、他方式との違い、主な用途までわかりやすく解説します。

目次

カルマン渦式流量計とは?

渦式流量計は、配管内の流れに生じる規則的な渦の発生頻度を利用して流量を測定する方式です。
配管内には小さな障害物(渦発生体)が設置されており、その下流側で左右交互に渦が発生します。この渦の変化を検出し、流速(=流量)へ換算します。
渦がどのように発生し、どのように流量へ結びつくかは、次項「計測の仕組み」で詳しく解説します。

計測の仕組み

渦式流量計は、配管内の流体が渦発生体の後ろ側でつくる周期的な渦(カルマン渦)を利用して流量を求めます。
ここでは、実際の測定プロセスに沿って、4つのステップで仕組みをわかりやすく解説します。

  1. 渦発生体の後方で「カルマン渦」が発生する
    配管内に設置された渦発生体に流体が当たると、その後方で左右に交互に渦が発生する現象(カルマン渦列)が生じます。
    ・流速が速いほど、渦の発生頻度は高くなる
    ・渦の周期性が、後続の「計測可能な情報」となる
    このステップは、渦式流量計の“物理的な現象”をつくる部分です。
  2. 渦の発生周期(周波数)をセンサで検出する
    渦が発生すると、流れの圧力に微小な脈動が生じます。
    この圧力変動を センサが電気信号として検出し、渦の周波数(f)に変換します。
    代表的なセンサ方式:
    圧電素子式:圧力変動・振動を電荷として検出
    静電容量式:渦による検出体の微小な変位を静電容量の変化として検出
    超音波式(渦式内部の変種):超音波の伝搬変化で渦を検出
    どの方式でも、目的は渦の発生頻度(周波数 f)を高精度に取り出すことです。
  3. 検出した周波数 f から流速 v を算出する
    カルマン渦には、周波数 f と流速 v が比例関係になるという特徴があります。
    その関係を表すのが次の式です。
    【流速の換算式】
     f = St × (v / d)
     f:渦の発生周波数(Hz)
     St:ストローハル数(カルマン渦の特性値)
     v:流速(m/s)
     d:渦発生体の幅(m)
    センサで得た f をこの式に代入し、流速 v を求めます。
  4. 流速 v をもとに流量 Q を計算する
    最後に、流速 v と配管断面積 A を使って流量を求めます。
    【流量の算出】
     Q = v × A
    これで、渦の周期 → 流速 → 流量という一連の流れが完結します。

カルマン渦式流量計の特徴と他方式との比較

ここまで渦式流量計の仕組みをご紹介しました。
次に、実際に評価されている点と課題となる点を、メリット・デメリットとして整理し、他の流量計方式と比較していきます。

カルマン渦式流量計のメリット

渦式流量計には次のような利点があります。

 可動部がないため、耐久性が高くメンテナンスが少ない

内部に動く部品がないため、摩耗が生じる箇所がほとんどなく、メンテナンス頻度を抑えつつ長期的に安定した計測が可能です。この構造と計測原理上、流体の粘度や密度などの物性値変化による影響をほとんど受けず、様々な流体(ただし清浄な流体に限る)の計測が可能です。

 液体・気体・蒸気を共通の原理で測定できる汎用性

渦式流量計は、液体・気体・蒸気(特に飽和蒸気)の体積流量を、同じ原理で計測できる点が大きな特長です。清浄な単相流(液体のみ、気体のみといった混相のない流れ)での使用に適しています。
例)
蒸気計測(特に飽和蒸気)
空気・窒素などの一般ガス
水・薬液などの液体

 流速と周波数の明確な比例関係に基づく高い精度と再現性

渦式流量計の計測原理であるカルマン渦は、「渦の発生周波数は流速に比例する」という安定した物理法則に基づいています。この明確な比例関係により、高い直線性を確保でき、比較的広い計測範囲(レンジアビリティ)で安定した精度を得られます。また、出力がパルス(デジタル)信号であるため伝送誤差が少なく、分解能も確保しやすいことから、再現性の高さがメリットとして挙げられます。

 比較的構造がシンプルで、コンパクトで配管への組み込みが容易

渦式流量計の基本的な計測部は、渦発生体とセンサのみという非常にシンプルな構造です。そのため、機器自体が比較的コンパクトで、設備の配管ラインに容易に組み込みやすく、設置スペースに制約がある現場でも柔軟に対応できます。
※ただし、機器本体としての設置性が良い一方、計測精度を確保するには後述の通り「所定の直管長」が必要です。

カルマン渦式流量計のデメリット

一方、渦式流量計には次のような弱点もあります。

 一定の流速がないと渦が発生せず、低流領域に弱い

渦式流量計の原理であるカルマン渦は、流速がある程度(臨界レイノルズ数)以上にならないと安定して発生しません。そのため、流速が遅く渦が形成されにくい領域(低流量域)では、渦発生が途切れたり不安定になり、計測誤差が増えます。この特性から、渦式流量計は測定可能レンジの下限が比較的高く、一定以上の流速がある中流量域以上での計測に適しています。

 性能発揮には上流側の直管長の確保が必要

渦式流量計は流れの状態に敏感です。直前にあるバルブやエルボなどの影響で流れが乱れると、渦の発生が不安定になり、計測誤差につながります。これを避けるため、流量計の上流側に定められた長さの直線配管(直管長)を確保する必要があります。

 強い流速の脈動に弱い

流速や圧力が周期的に変動する脈動流(例:コンプレッサやブロアの出口付近)が流れると、渦の周期性が乱され、計測値が不安定になったり(ハンチング)、大きな誤差が生じたりします。脈動の影響を避けるため、ダンパーなどの対策が必要になる場合があります。

 気泡・液滴・粒子を含む混相流には弱い

渦式流量計は、単相流(気体のみ/液体のみ)の流れを前提としています。流れの中に気泡、液滴、固体粒子などの異なる相が混ざると、渦発生体から剥離する渦の構造が乱され、周波数検出が不安定になり、計測結果が大きく乱れます。このため、気液混相流やスラリー系の計測には適していません。

他方式との比較表

渦式流量計と主な流量計の違いを比較すると下記のようになります。

種類測定方式メリット主な用途
カルマン渦式流量計ブラフ体による渦周波数を計測高温・高圧・蒸気対応
可動部がなく耐久性が高い
蒸気ライン、空調、化学、食品、エネルギー
熱式流量計加熱素子と温度差で質量流量を測定微少流量に強い
高応答性・高感度
高精度測定
半導体、石油・ガス、化学、発電、食品・飲料製造、環境モニタリング
差圧式流量計オリフィスなどで発生する差圧を測定構造がシンプルで低価格
多用途に対応
高温・高圧・腐食性流体にも強い
石油・ガス、上下水道、化学、発電、半導体、空調
電磁式流量計液体の電磁誘導電位を測定低圧損で導電液体に対応
異物混入に強い
直線性が良好
上下水道、排水、食品、化学
超音波流量計超音波の伝播時間差またはドップラー効果を利用非接触測定が可能
クランプオン対応
上下水道、排水、石油・ガス、化学、食品、空調
コリオリ式流量計チューブ振動によるコリオリ力で質量・密度を直接測定質量・密度の高精度測定が可能
液体・スラリー対応
成分変動にも強い
石油・ガス、化学、食品、医用

カルマン渦式流量計の主な用途

渦式流量計は、液体・気体(水蒸気も含む)を問わず幅広い産業で用いられる「汎用型」の流量計です。可動部を持たない構造ならではの耐久性と比較的高い精度、そして設置のしやすさから、プロセス計測の定番として定着しています。ここでは、渦式流量計が特に活躍する代表的な用途を紹介します。

 蒸気ライン(飽和蒸気・過熱蒸気)

渦式流量計が最も得意とする用途の一つが蒸気流量の計測です。蒸気は高温であり、可動部を持つ流量計では腐食や摩耗による故障リスクが高まりますが、渦式は可動部がないため、過酷な条件下でも安定した計測が可能です。特に、エネルギー管理の指標として広く使われています。

 工場ユーティリティ(水・空気・窒素など)

工場内を流れる一般的な流体にも適しています。
例えば、冷却水ライン・工業用水・圧縮空気・窒素ガス・炭酸ガスなどの供給ラインといった“日常的に使われる流体の監視”がよく見られる用途です。流れの変動が多少あっても安定して読み取れるため、設備保全や省エネ管理の指標として採用されています。

 HVAC(空調設備)における流量管理

建物の空調設備でも渦式流量計は活躍しています。
特に、温水/冷水配管の流量管理・エアハンドリングユニット(AHU)用の蒸気ライン・ビル管理におけるエネルギー消費の最適化など、空調効率の改善や快適性の維持を目的とする現場で使われるケースが増えています。

 化学・食品・製造プロセスでの流体計測

化学プラントや食品工場では、安定した流量管理が品質に直結します。
渦式流量計は、加熱工程の蒸気流量・洗浄プロセス用水・不活性ガス供給ライン・添加剤/プロセスガスの投入管理など、プロセスの様々な場面で利用されています。
“混相流には弱い”という弱点はあるものの、単相であれば気体・液体のどちらでも扱えるのが最大の魅力です。

 エネルギー監視・コスト管理

近年では、省エネや脱炭素の流れに後押しされ、ボイラ効率の可視化・工場全体の蒸気コスト配分・設備単位のエネルギー監視といった用途で渦式流量計の導入が増えています。流量だけでなく、温度・圧力センサと組み合わせることで、熱量計(エネルギーメータ)として運用されるケースもあります。
渦式流量計は、蒸気・水・空気・窒素などのガスといった、工場やビルで欠かせない流体の「標準的な量りもの」を得意とする流量計です。
可動部のないシンプルな構造と、単相流に対する安定した応答性から、ユーティリティ管理の“万能選手”として多くの現場で採用されています。
蒸気に強い点は大きな特徴で、他方式が苦手とする領域でも安定した計測ができます。

まとめ

渦式流量計は、シンプルな構造でありながら、液体・気体・蒸気といった幅広い単相流体を一つの原理で測定できる、非常にバランスの良いプロセス流量計です。カルマン渦の発生周波数という明確で安定した物理現象を利用するため、直線性に優れ、再現性の高い測定ができる点も大きな強みと言えます。
一方で、「一定以上の流速が必要」「性能を発揮するためには直管長の確保が求められる」など、設置条件には注意が必要です。また、混相流や脈動の強いラインでは性能が十分に発揮されないため、用途に応じた選定が欠かせません。
それでも、蒸気配管やユーティリティ、設備全体の流量監視といった“現場でよくある計測ニーズ”に対して、渦式流量計は非常に扱いやすい選択肢です。可動部のない構造による保守性の高さもあり、プラント運用の中で「使いやすくて信頼できる」流量計として長く支持されています。
渦式流量計の特徴・仕組み・メリット・デメリットを理解することで、より最適な計測機器選定につながります。ぜひ、本コラムを現場の判断材料として活用してみてください。

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