面積式流量計は、内部を通過する流体の量に応じて可動部の位置が変化し、その状態から流量を把握する方式の流量計です。
構造が比較的シンプルで目視による確認がしやすく、ガス・液体を中心に研究用途から設備の簡易モニタリングまで幅広く用いられています。
電源を必要としないモデルも多く、扱いやすさを重視した流量計として長く使われています。
本記事では、面積式流量計の原理・特長・他方式との違い・主な用途について、わかりやすく解説します。
面積式流量計は、流体が流れることでフロート(浮き子)などの可動部が上下し、その位置から流量を読み取る方式の流量計です。
代表例としては、透明なテーパー管の中でフロートが上下する可視式が広く知られていますが、ほかにも次のような構造があります。
・金属管型:内部フロートと外側指示器を磁気結合する構造
・スプリング荷重型:直管内のフロートやピストンとばねを用い、可動部の位置から流量を読み取る構造
・電気信号化モデル:外部指示器の位置をセンサーで読み取り、アナログ信号や各種デジタル出力が可能なタイプ
このように構造や形態はさまざまですが、いずれの方式でも、流体が流れることでフロートなどの可動部が移動し、安定した位置を流量として読み取るという点が共通しています。
次章では、この可動部がどのような力の関係でその位置に決まるのか、計測の仕組みを詳しく見ていきます。
前章で触れたように、面積式流量計では、流体が流れることでフロートなどの可動部が移動し、流量に応じた位置で安定します。
この平衡状態は、流体から受ける力と、重力やスプリング力とが釣り合うことで決まります。この力のバランスによって決まる位置と流量が1対1に対応するよう、面積式流量計は内部構造が設計されています。そのため、可動部が安定した位置を読み取ることで流量を把握することができます。
この共通原理をどのような構造で実現しているかは、採用されている方式によって異なります。
・テーパー管式:上に行くほど流路断面積が広がる構造で、流量が増えるほどフロートは高い位置で静止
・金属管式:内部構造のカム形状やスプリング特性により、テーパー管と同様の“位置—流量特性”を再現
・スプリング荷重型:スプリングの伸縮特性を利用し、流量増加で可動部の位置が変化
可動部の位置の読み取り方法も方式によって異なります。テーパー管式は目視による直接の読み取りが一般的ですが、金属管式や一部の高機能モデルでは磁気結合やセンサーで位置を検出し、アナログ/デジタル信号などで出力することが可能です。
また、ガス用の一部モデルでは温度・圧力センサーを内蔵し、可動部位置から得た体積流量に補正をかけて標準状態に換算した流量として表示することもできます。
このように、力の釣り合いによって決まる位置を流量として読み取るという基本原理は共通でありながら、用途や使用環境に応じてさまざまな構造・指示方式が選択されています。
可動部の位置を目視または信号として読み取るという特性から、面積式流量計は構造が単純で扱いやすく、流量状態を直感的に把握しやすい方式です。一方で、姿勢制限や使用条件に起因する制約もあります。ここでは、その特長と注意点を整理し、電磁式・渦式・超音波式など他方式との違いをわかりやすくまとめます。
面積式流量計は、可動部の位置を指標として流量を把握するというシンプルな原理から、日常的な流量監視から機器組み込み用途まで幅広く利用されています。可動部の位置から流量を直接的に把握する仕組みは、次のような利点があります。
面積式流量計はフロートなどの可動部と管路で構成されるシンプルな構造を持ちます。電子部品を使わないモデルでは電気系トラブルが発生しにくく、現場での信頼性が高い点が特長です。異常時には可動部の状態を確認しやすく、原因の切り分けがしやすいことも扱いやすさにつながります。
透明なテーパー管式では、フロートの位置を人が直接目で確認できるため、流量の増減や停止といった状態変化を直感的に把握できます。金属管式や信号出力付きモデルでも、「位置」を基準とした表示・出力のため、研究機器やラボ装置、小規模設備における状態監視用途に適しています。
テーパー管式、金属管式、スプリング荷重型など構造の選択肢があり、ガス・液体いずれにも対応可能なモデルが用意されています。使用条件や設置環境に応じて構造を選べる点は、面積式流量計の大きな特長です。
差圧式や超音波式とは異なり、上流側に長い直線配管を厳密に確保しなくても、比較的安定した計測が可能です。装置の配管途中や狭いスペースにも取り付けやすいため、研究・実験装置では特に重宝されています。
温度・圧力補償や信号出力を備えた高機能モデルも存在しますが、基本的には構造が簡単で、電源や信号系を必要としない構成でも使用できます。そのため、複数ラインの流量の状態を、低コストで把握したい用途に適しています。
一方で、面積式流量計は可動部を用いた位置検出方式であるため、他方式と比べていくつかの構造的な制約を持ちます。
フロート位置が流体物性(密度・粘度)や配管条件の影響を受けやすく、方式上、
熱式や差圧式などと比べると達成できる計測精度には限界があります。
面積式流量計は基本的に体積流量を指示する方式であるため、気体の温度・圧力が変動する環境では、質量流量や濃度を安定して管理する用途には注意が必要です。
フロートが摺動する構造である以上、砂や粉末などの固体粒子を含む流体(スラリー)や粘度の高すぎる液体は不向きです。可動部の引っかかりや粘着で動作不良が発生する可能性があります。
高温・高圧・腐食性流体に対しては、ガラス製テーパー管式は使用できず、
金属管式などの専用仕様が必要になります。ただし、適用可能な圧力・温度・材質には限界があるため、
安全性や保守性を十分に考慮した選定が求められます。
機械的なフロートの慣性や粘性抵抗のため、流量が急変するプロセスでは応答が遅れる場合があります。
面積式流量計と主な流量計の違いを比較すると下記のようになります。
| 種類 | 測定方式 | メリット | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 面積式流量計 | 可動部(フロート)の位置から流量を測定 | 構造がシンプルで視認性が高い 低コスト・設置が容易 電源不要で計測可能(メカニカルタイプの場合) | 研究・ラボ装置、装置補助用途、パージ・バイパス、エア供給ライン |
| 熱式流量計 | 加熱素子と温度差で質量流量を測定 | 微少流量に強い 高応答性・高感度 高精度測定 | 半導体、石油・ガス、化学、発電、食品・飲料製造、環境モニタリング |
| 差圧式流量計 | オリフィスなどで発生する差圧を測定 | 構造がシンプルで低価格 多用途に対応 高温・高圧・腐食性流体にも強い | 石油・ガス、上下水道、化学、発電、半導体、空調 |
| 電磁式流量計 | 液体の電磁誘導電位を測定 | 低圧損で導電液体に対応 異物混入に強い 直線性が良好 | 上下水道、排水、食品、化学 |
| 超音波流量計 | 超音波の伝播時間差またはドップラー効果を利用 | 非接触測定が可能 クランプオン対応 | 上下水道、排水、石油・ガス、化学、食品、空調 |
| タービン式流量計 | 流体によって回転する羽根車の回転数を測定 | 高い繰り返し精度 比較的低コストで導入可能 構造がシンプルで小型軽量 | 石油・ガス、化学、浄水、食品 |
面積式流量計は、「流量の絶対精度」よりも「現場での視認性・簡便性・導入しやすさ」 を優先する場面で多く使用されます。特に、研究開発用途や、装置内部のパージ・バイパス・補助ラインにおける状態確認を目的とした補助計測、および簡易監視用途での採用が目立ちます。
ガラス製テーパー管式の視認性の高さから、分析装置の前段ガス流量調整や小型反応器・実験装置のガス供給、キャリアガス・パージガスの監視など、ラボスケールのガスラインで非常によく使用されます。流れていることがひと目で分かる点が特に評価されています。
高精度な流量計が主計測として使われる装置においても、パージラインやバイパスラインなど、「流れているかどうか」を即座に確認したい補助系統では、面積式が併用されることがあります。特に機械メーカーや実験装置メーカーでの「目視でさっと確認するための補助計測」として利用されます。
工場のユーティリティラインやサブラインで、N₂パージや空気の供給、洗浄液・冷却水などのラインにおいて、流れの有無や大まかな流量状態を確認する目的で使われます。精度要件が厳しくない配管では「安く・確実に・目で分かる」ため需要があります。
制御盤内のエアブローや小型アクチュエータ用エアのように、エアが正常に流れているかどうかを確認することが主目的のラインでは、高精度測定よりも即時の視認性が重視されます。そのため、エアが出ているか、フィルタ詰まりで流量が落ちていないか、ラインが閉塞していないかなどの状態監視用途として、面積式がよく使われます。測定値で制御を行わないため、メーターリレーなしの目視確認だけで十分です。
水処理設備などでは、プロセス本流の流量制御は電磁式・ギア式などが担当しますが、その周辺の 補助ガスや補助薬液ラインで、曝気槽への空気供給の大まかな確認、センサー洗浄用のガスの流れの有無確認や補助薬液ラインで「流れている/止まっている」だけ把握したい場合など、厳密な制御を要しないサブライン において面積式が使用されることがあります。
携帯型の面積式がフィールド点検漏れの有無の確認流量の大まかな目安取りなどで使用されます。厳密な定量性は求められないものの、流量状態をおおまかに把握できれば十分な点検・保全作業において重宝されます。
面積式流量計は、可動部の位置と流量が対応するシンプルな原理を利用した流量計で、ガラス製テーパー管式から金属管式まで幅広い形式があります。構造が分かりやすく、目視で流量の変化を確認できることから、研究機器や設備の補助ラインなど、“流れているかどうかをすぐ把握したい場面”で特に力を発揮します。
一方で、流体物性や配管状態の影響を受けやすく、高精度を求める用途には向きません。気体の温度・圧力変動により指示値が変化しやすいため、精密な濃度管理や質量流量の管理を行う場合は、熱式・コリオリ式・超音波式といった他方式が優先されます。
視認性・簡便さ・設置性といった特徴を活かして補助的な流量監視に使用するのが面積式流量計のもっとも自然な使い方です。
流量計を選定する際は、求める精度・流体条件・設置スペースなどを踏まえ、面積式が“サブライン用途に最適”なのか、あるいは他方式を採用すべきなのかを判断することが重要です。
