KEY TECHNOLOGIES

タービン式流量計とは?(原理・特徴・用途を徹底解説!)

高精度かつ安定した流体流量測定を実現する「タービン式流量計」は、石油や化学薬品、水などの幅広いプロセス制御分野で活躍しています。シンプルな構造ながら高い測定精度を実現し、多くの現場で信頼されてきました。
本記事では、タービン式流量計の計測原理や特長、他方式との比較、主な用途までをわかりやすく解説します。

目次

タービン式流量計とは?

タービン式流量計は、流体の流れによって羽根車(タービンロータ)を回転させ、その回転数を検知して流量を求める機械式の流量計です。構造が比較的シンプルで応答性が高いのが特徴です。低粘度の液体では、流速に忠実に羽根車が回転するため優れた繰り返し精度を実現できます。また、小型・軽量であるため装置への組込や現場設置に適しています。
正確な測定のためには流量計の前後に十分な直管部(一般的に上流10D(配管内径の10倍)、下流5Dなど)を確保する必要があります。また可動部である軸受は摩耗するため、定期的なメンテナンスが必要で、高粘度液体や異物を含む流体への使用には注意が必要です。

計測の仕組み

タービン式流量計は、流体の流れによって羽根車を回転させ、その回転速度から流量を算出する方式の流量計です。
配管内を流れる液体が、流れと平行に取り付けられた羽根車に当たって回転し、その回転数を磁気センサやピックアップコイルで検出することで、瞬時流量や積算流量を算出します。

▼回転数と流量の関係
羽根車の回転速度は流速にほぼ比例しており、次の式で流量を求められます。

【流量 = 1回転あたりの体積 × 回転数】

羽根車に取り付けられた磁石や金属片が回転するたびにセンサがパルス信号を検出し、そのパルス数から体積流量を演算します。
これにより、応答性の高い精密計測が可能です。

タービン式流量計の特徴と他方式との比較

タービン式流量計は、前述の通り羽根車の回転を利用して流量を計測するシンプルな構造ながら、高精度かつ応答性に優れる点が特長です。小型で設置性にも優れており、装置組込や現場設置に適しています。
しかし、直管部の確保や軸受の摩耗、高粘度液体や異物を含む流体への対応など、使用環境によって注意すべき点もあります。
ここでは、こうした特徴と注意点を整理したうえで、タービン式流量計のメリット・デメリットを詳しく見ていき、さらに電磁式やコリオリ式などの他方式と比較して、その選定ポイントや活用の違いを紹介します。

タービン式流量計のメリット

タービン式流量計には、以下のような利点があります。

 優れた繰り返し精度

流体の流れによる羽車の回転数を読み取るシンプルな測定原理により、同一条件下での再現性に優れています。バッチ計量や定量供給など、高い繰り返し精度が求められる用途に最適です。

 高速な応答性

羽根車が流れの変化に直接・即座に反応するため、応答時間が非常に短く(数ミリ秒~数十ミリ秒)、流量変動をリアルタイムで捉えられます。プロセス変動の監視や、バッチ処理の制御に有効です。

 経済的な初期コスト

構造がシンプルなため、コリオリ式や高精度電磁式と比較して導入コストを抑えられます。異物や高粘度成分を含まない液体を対象とする用途では、コスト効率に優れた選択肢となります。

 瞬時流量と積算流量の同時表示

パルス出力から瞬時流量・積算流量の両方を演算・表示できるため、プロセス監視と総量管理を1台で実現します。バッチ処理や定量供給の管理に便利です。

タービン式流量計のデメリット

 可動部の摩耗とメンテナンス負荷

羽根車と軸受の経年摩耗により、定期的な点検・校正・部品交換が必要です。摩耗により発生する微粒子は、超純水など高清浄度ラインでの使用を制限します。

 清浄な流体が必須条件

異物や汚れの付着、気泡の混入により、回転不良や測定誤差が発生します。スラリー、懸濁液、気泡を含む流体には使用できません。フィルター設置など前処理が必要になる場合があります。

 低粘度液体に限定される

測定対象が液体の場合、おおよそ粘度5mPa·s(ミリパスカル秒)以下の液体での使用が推奨されます。高粘度流体では回転トルク不足により精度が低下し、温度による粘度変化も測定精度に影響します。

 十分な直管部の確保が必須

正確な測定には前側10D、後側5D以上の直管部が必要です。弁やエルボの直後では乱流により精度が低下するため、設置スペースに制約が生じます。

 圧力損失と流れ方向の制限

羽根車により0.5~1.0bar程度の圧力損失が発生します。また、一般的な機種では一方向流のみに対応し、双方向流や逆流には使用できません。

他方式との比較表

タービン式流量計と主な流量計の違いを比較すると下記のようになります。

種類測定方式メリット主な用途
タービン式流量計流体によって回転する羽根車の回転数を測定高い繰り返し精度
比較的低コストで導入可能
構造がシンプルで小型軽量
石油・ガス、化学、浄水、食品
熱式流量計加熱素子と温度差で質量流量を測定微少流量に強い
高応答性・高感度
高精度測定
半導体、石油・ガス、化学、発電、食品・飲料製造、環境モニタリング
差圧式流量計オリフィスなどで発生する差圧を測定構造がシンプルで低価格
多用途に対応
高温・高圧・腐食性流体にも強い
石油・ガス、上下水道、化学、発電、半導体、空調
電磁流量計液体の電磁誘導電位を測定低圧損で導電液体に対応
異物混入に強い
直線性が良好
上下水道、排水、食品、化学
カルマン渦式流量計ブラフ体による渦周波数を計測高温・高圧・蒸気対応
可動部がなく耐久性が高い
工業プラント、発電所、空調、蒸気ライン
超音波流量計超音波の伝播時間差またはドップラー効果を利用非接触測定が可能
クランプオン対応
上下水道、排水、石油・ガス、化学、食品、空調
コリオリ式流量計チューブ振動によるコリオリ力で質量・密度を直接測定質量・密度の高精度測定が可能
液体・スラリー対応
成分変動にも強い
石油・ガス、化学、食品、医用

タービン式流量計の主な用途

タービン式流量計は、流体の定量管理やプロセス監視を目的とした幅広い分野で利用されています。特に低粘度の液体を安定的に計測できる点が評価され、石油・燃料分野、化学・薬品ライン、食品・飲料製造等、精密な流量管理が求められる現場で高い信頼性を評価され、以下のような用途で多く採用されています。

 石油・燃料分野

ガソリン・軽油・灯油などの石油系燃料の定量供給や積算計測に広く利用されています。これらの燃料は清浄性が高く、かつ適度な潤滑性も持つため、軸受への負荷が少なく、長期間安定した精度を維持できます。計量タンクや移送ライン、燃料供給システムなど、優れた繰り返し精度が求められる積算流量管理が求められる工程に最適です。

 化学・薬品ライン

各種溶剤や薬液など、低粘度の化学流体の流量モニタリングやバッチ供給管理に用いられています。本体材質にSUS316を採用したモデルが標準的で、腐食性の低い薬液や有機溶剤に対応します。特に、非導電性の有機溶剤(電磁流量計が使用不可)、やコリオリ式ではコストや設置スペースの面で課題がある場合に高精度かつ経済的な選択肢として採用されています。トルエン、アセトン、IPA(イソプロピルアルコール)などの計量に実績があります。

 浄水・冷却水ライン

浄水設備や冷却水循環システムなど、清浄な水系統の流量管理に利用されています。構造がシンプルで応答性に優れ、瞬時流量・積算流量を高精度に計測できるため、ポンプ性能監視や設備診断に適しています。 可動部を持つため、超純水ラインや衛生基準の厳格なラインでは電磁式等が優先されますが、一般工業用水では比較的安価に高精度・高応答性を実現できる点が強みです。

 食品・飲料製造ライン

醤油、みりん、食酢などの低粘度調味料や、清浄な果汁、工程内の中間原料(低粘度な糖液など)の計量に利用されています。タービン流量計の優れた繰り返し精度は、生産ライン内での充填量の管理や定量供給といったバッチ処理に適しています。衛生性向上のため、オールステンレス製のサニタリー仕様が採用され、一部のモデルではCIP(定置洗浄)に対応しています。

まとめ

タービン式流量計は、構造がシンプルで優れた繰り返し精度を持つ、実用性の高い流量計です。清浄で低粘度の流体を精密に計測でき、瞬時流量と積算流量の両方を把握できる上、コストパフォーマンスにも優れています。
一方で、可動部を有する特性上、粘性流体や異物・汚れに弱く、軸受の摩耗を避けるための定期的な点検・校正が欠かせません。使用環境や流体特性を正確に把握し、十分な直管部の確保など適切な設置条件とメンテナンス体制を整えることが、安定した計測を実現する鍵となります。
可動部のない電磁式・超音波式が普及する中でも、タービン式は「コストを抑えながら確実な精度を実現したい」というニーズに応える堅実な選択肢として、多くの産業現場で採用され続けています。流体特性と用途に応じた長所を活かすことで、信頼性の高い流量計測を実現できます。

 

堀場エステックのタービン式流量計のラインナップはこちら
小型液体流量計 LW/LD Series - HORIBA

お問い合わせ

HORIBAグループ企業情報