KEY TECHNOLOGIES

超音波式流量計とは?(原理・特徴・用途を徹底解説!)

超音波式流量計は、配管内を流れる流体を超音波の伝わり方から読み取ることで流量を測定する方式です。配管を切断せずに非接触で設置できるタイプもあり、メンテナンス性や設置自由度の高さから、水処理設備やプラントなど、幅広い分野で活用が進んでいます。本記事では、その原理・特徴・他方式との違い・用途をわかりやすく解説します。

目次

超音波式流量計とは

超音波式流量計とは、超音波の伝播特性を利用して流体の流速を測定する流量計です。超音波とは、人の耳では聞き取れない高周波の音波で、物体の内部を透過したり、異なる物質に当たると反射したりする性質があります。超音波式流量計は、この性質を活用し、流体中を伝わる超音波の伝達時間や周波数変化を解析して流速を求める仕組みです。
主な方式としては、超音波の伝達時間差を測る「伝搬時間差方式」と、反射波の周波数変化を捉える「ドップラー方式」があります。

計測の仕組み

超音波式流量計には、主に「伝搬時間差方式」と「ドップラー方式」の2つの測定原理があります。どちらも超音波を利用して流体の流速を求めますが、そのアプローチは大きく異なります。

 伝搬時間差方式(トランジットタイム式)

伝搬時間差方式では、配管の上流側と下流側に超音波センサを取り付け、超音波を交互に送受信します。流れの方向に送った超音波は早く届き、逆方向に送った超音波は遅れて届くため、その伝わる時間差(伝搬時間差)をもとに流速を計算します。
イメージとしては、流れる川を往復するボートで流れに乗った場合と逆らった場合で到達時間が変わるのと同じ原理です。この時間差をもとに流速を算出し、さらに配管の径を掛け合わせることで流量を求めます。
この方式は、気泡や固形物のない清澄な液体の測定に適しており、高精度な測定が可能です。また、センサを配管外側に取り付ける「クランプオン型」も多く、既設ラインへの後付けにも向いています。

 ドップラー方式

ドップラー方式は、流体中の微小な粒子や気泡を利用するタイプです。センサから発信した超音波が、流体中の粒子や気泡に当たって反射すると、流れの速さに応じて反射波の周波数がわずかに変化します(ドップラー効果)。この周波数のずれを解析することで、流体の流速を求めることができます。
たとえば、救急車のサイレンが近づくと音か高く、遠ざかると低く聞こえる現象と同じ原理です。
ドップラー方式は、ある程度の濁りや気泡を含む流体でも測定できるため、排水やスラリー流などの用途に適しています。
両方式ともに、超音波の物理特性を活かした非接触測定が可能ですが、伝搬時間差方式は清澄な流体での高精度測定に、ドップラー方式は粒子や気泡を含む流体での安定測定に強みがあります。

超音波式流量計の特徴と他方式との比較

超音波式流量計は、流体中を伝わる超音波の伝搬特性を利用して流速を求める方式です。可動部がなく、圧力損失がほとんど発生しない点が大きな特徴です。また、配管外側から設置できる「クランプオン式」をはじめ、非接触で計測が可能なタイプも存在し、既設配管への後付けにも対応しやすいという構造的な利点があります。本章では、超音波式流量計のメリット・デメリットに加え、他の代表的な流量計との違いについて比較表を用いてわかりやすく解説します。

超音波式流量計のメリット

 可動部がないため構造がシンプル

可動部がないため摩耗による故障やメンテナンスがほとんど不要で、長期にわたって安定した計測が可能です。

 レンジアビリティが大きい

微少流量から大流量まで幅広く対応できるため、用途に合わせた柔軟な測定が可能です。

 設置の柔軟性が高い

配管外から計測できるクランプオン式など、既設配管にも後付け可能です。大口径配管でも、センサの増設や外付けで対応しやすく、大規模な工場でも利用しやすいです。

 圧力損失がほとんどない

非接触型(クランプオン式)や流路に突出が小さい構造のため、流体の流れを妨げず、流体のエネルギーの損失(圧力損失)がほとんど発生しません。

超音波式流量計のデメリット

 流体条件に依存する

伝搬時間差方式:濁り、気泡、固形物があると測定不能または誤差が大きくなります。
ドップラー方式:反射源(粒子・気泡)をほとんど含まない流体では測定できません。

 流速分布の影響を受けやすい

上流側にバルブやエルボがあると流れが乱れ、測定誤差が発生する場合があります。そのため、一定の直管長を確保することや、整流器を設置することが推奨されます。

 設置環境によっては取り付け条件に制約が生じる

方式ごとに固有の設置条件があります。挿入型では、配管への穴開けやバルブ設置などの工事が必要になり、既設配管での作業は手間がかかることがあります。クランプオン式は非接触で取り付けられる反面、配管の材質・肉厚・表面状態、内部スケールの付着状況によっては超音波が伝わりにくく、精度が低下したり測定が不安定になる場合があります。

 低流速域では精度が低下する

ゼロ付近の流量も検出できますが、流速が極端に遅い場合には測定のばらつきが大きくなります。

他方式との比較表

超音波式流量計と主な流量計の違いを比較すると下記のようになります。

種類測定方式メリット主な用途
超音波流量計超音波の伝播時間差またはドップラー効果を利用非接触測定が可能
クランプオン対応
上下水道、排水、石油・ガス、化学、食品、空調
熱式流量計加熱素子と温度差で質量流量を測定微少流量に強い
高応答性・高感度
高精度測定
半導体、石油・ガス、化学、発電、食品・飲料製造、環境モニタリング
差圧式流量計オリフィスなどで発生する差圧を測定構造がシンプルで低価格
多用途に対応
高温・高圧・腐食性流体にも強い
石油・ガス、上下水道、化学、発電、半導体、空調
電磁式流量計液体の電磁誘導電位を測定低圧損で導電液体に対応
異物混入に強い
直線性が良好
上下水道、排水、食品、化学
タービン式流量計流体によって回転する羽根車の回転数を測定高い繰り返し精度
比較的低コストで導入可能
構造がシンプルで小型軽量
石油・ガス、化学、浄水、食品
カルマン渦式流量計ブラフ体による渦周波数を計測高温・高圧・蒸気対応
可動部がなく耐久性が高い
工業プラント、発電所、空調、蒸気ライン
コリオリ式流量計チューブ振動によるコリオリ力で質量・密度を直接測定質量・密度の高精度測定が可能
液体・スラリー対応
成分変動にも強い
石油・ガス、化学、食品、医用

超音波式流量計の主な用途

超音波式流量計は、液体・気体を問わず幅広い流体の計測に対応できる汎用性の高い流量計です。配管を切断せずに外側から計測できるため、既設配管への後付けが容易でリークリスク軽減を図ることができます。

 上下水道・排水処理設備

清水から下水・汚泥水まで幅広く対応します。配管にセンサを挿入しない非接触式であれば、沈殿物や異物によるセンサの詰まりや摩耗の心配がなく、メンテナンスも容易です。

 化学プラント・薬品ライン

硫酸やアルカリなどの腐食性流体や高温・高圧流体など、センサを直接触れさせたくない環境で理想的です。リークのリスクを最小限に抑え、高価で危険な薬液の流量を安全に管理できます。

 発電プラント・ボイラ系統

給水ラインや冷却水ラインなど、24時間365日の連続稼働が求められるラインでの流量管理に適しています。可動部がなく、圧力損失もほとんど発生しないため、長期にわたる安定した高い信頼性を発揮します。

 空調・冷却水システム

ビル設備や工場でのチラー水・冷媒ラインなど、熱源の効率を測る熱エネルギー管理のための流量計測に活用されます。熱量計測(カロリー計測)の基本データとして、省エネ効果の可視化に貢献します。

 食品・飲料・製薬分野

衛生面が極めて重要な工程に採用されています。クランプオン方式であれば配管の外側から計測できるため、流体に一切影響を与えません。衛生性が求められる流体に直接触れないため、コンタミネーション(異物混入)のリスクを極小化できるため、CIP(定置洗浄)ラインにも安心して利用できることが大きなメリットです。

 気体計測用途(空気・ガスライン)

特殊構造の超音波式流量計は、圧力や温度の影響を受けやすい空気や各種ガスの流量計測にも対応できます。広いダイナミックレンジと高精度が求められる、エア消費量の管理や燃焼ガスの流量計測に活用されます。

まとめ

超音波式流量計は、可動部を持たないシンプルな構造と、配管外から測定できるクランプオン式をはじめとした低負荷な計測方式が特長です。流体の状態に応じて、伝搬時間差方式(トランジットタイム式)やドップラー方式など複数の原理が使い分けられ、清澄な液体から気泡・粒子を含む流れまで幅広い現場に対応できます。圧力損失をほとんど生じず、保守負担が少ない点も大きな利点です。
一方、気泡や懸濁物が多い場合、または流速分布が乱れている環境では、伝搬時間差方式の精度が低下することがあります。ドップラー方式はその逆に反射源がないと測定できません。また、挿入型・配管内設置型では配管加工が必要となるなど、設置方式によって求められる条件も異なります。そのため、流体特性や設置環境に応じた適切な方式選定が重要です。
このように超音波式流量計は、非接触計測・低圧力損失・保守性の高さといった特長を生かし、多様な産業分野で安定した流量計測を支える有力な選択肢となっています。

お問い合わせ

HORIBAグループ企業情報