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マスフローコントローラ 活用事例集

カーボンニュートラルやライフサイエンスの進展など、新しい産業分野の拡大に伴い、研究や製造の現場ではガスの流量をいかに安定して制御するかがますます重要になっています。
マスフローコントローラは産業界を支える精密な流量制御技術として、今や欠かせない存在となっており、半導体製造や燃料電池評価、細胞培養研究など、多くの分野でその高い再現性と応答性が求められています。本記事では、マスフローコントローラの実際の活用事例をわかりやすくご紹介します。

目次 事例集

 

半導体製造プロセス(MOCVD)

半導体製造のMOCVD(有機金属気相成長法)プロセスでは、成膜の均一性や副生成物を含む不純物を抑えた高品質な結晶成長が求められます。わずかなガス流量の乱れでも膜厚のばらつきや結晶欠陥につながり、最終的にデバイス性能や歩留まりの低下を招くため、安定したガス供給は不可欠です。そこで、マスフローコントローラは、プロセスに用いられるキャリアガスやバブラー部の搬送ガス流量をリアルタイムに高精度制御し、常に安定したガス供給を実現します。さらに、窒化膜の原料となるNH₃や、GaN・AlGaN結晶を形成するTMA・TMGaなどの原料ガスを適切に気化・供給することで、反応領域でのガス組成を最適化します。これにより膜厚分布の均一化や不純物混入の抑制、結晶欠陥の低減に寄与し、マスフローコントローラは安定した高品質成膜を支える欠かせない要素となっています。

半導体製造プロセスアプリケーション全体例はこちら:
半導体 〜半導体製造プロセスチャンバにおける計測・制御技術〜 - HORIBA

中空糸製造プロセス

中空糸は、水処理フィルターや人工透析器などの医療・環境分野で欠かせない素材です。この高性能素材の製造工程において、中空部を形成するための空気流量の安定した制御が極めて重要な役割を果たします。空気流量が不安定になると、中空部が均一に形成されず、製品性能の低下や不良品発生につながる可能性があります。
そこで、マスフローコントローラで空気流量を高精度かつ安定的に制御することで、中空糸の中空部の形成の均一化に貢献します。この制御技術により、製造プロセスの安定稼働が実現され、歩留まり向上に貢献します。
さらに、中空糸はCO2回収技術にも活用されており、ガス混合物からCO2を効率的に分離することで、環境負荷低減に寄与しています。

※CO2回収技術に関するアプリケーション全体例はこちら:
「はかる」技術でカーボンニュートラルに貢献する堀場エステックの事例 - HORIBA

細胞培養プロセス(バイオリアクター)

細胞培養は、バイオリアクターと呼ばれる装置を用いて微生物や細胞を培養し、医薬品、バイオ燃料、食品分野など幅広い領域で重要な役割を果たしているプロセスです。
バイオリアクターの運転においては、温度やpHと並んで、ガスの流量管理は特に重要です。O₂やCO₂等の供給量によって細胞の代謝や増殖が大きく左右されるため、流量制御は、細胞にとって快適で成長に適した環境を保つための重要な要素となります。
そこで堀場エステックのマスフローコントローラは、CO₂やN₂などのプロセスガスを安定かつ高精度に供給することで、酵素活性やpHの安定化を実現し、細胞培養に適した環境を作り出します。さらに、バッチごとの生産性や品質のばらつきを抑え、長期運転においても再現性の高いプロセスを実現し、一貫した品質の確保に大きく貢献します。

バイオリアクターアプリケーション全体例はこちら:
製薬・食品・医用 〜可能性を広げる堀場エステックの流体制御技術〜 - HORIBA

触媒研究試験(メタネーション)

メタネーションは、再生可能エネルギー由来のH2とCO2からCH4を合成する技術であり、カーボンニュートラル社会の実現に実用化が期待されています。また、メタネーションプロセスにおいて、触媒の性能評価試験において、H2,CO2,N2などの混合比率を精密かつ任意に行えることは重要なファクターとなるため精密なガス制御が必要となります。ガスの流量が安定供給されていないと、CH4の収集率が低下や、反応時の発熱による触媒の劣化が促進されるなど様々なリスクが生じます。
そこで、堀場エステックのマスフローコントローラを使って各プロセスガスを高精度にコントロールすることで、メタネーション触媒の浄化性能や耐久性能評価などの多様な試験ガス条件の生成を可能します。これにより、触媒の浄化性能や耐久性能評価を効率的に行うことができ、カーボンニュートラルプロセス研究の発展に貢献します。

触媒研究開発アプリケーション全体例はこちら:
触媒・センサ・燃料電池 〜ガス濃度・湿度制御の最適化のために〜 - HORIBA

燃料電池評価試験

燃料電池の性能向上や効率化を実現するためには、安定かつ精密なガス供給・制御が不可欠です。例えば、セル内への正確なガス導入は、化学反応の効率に直接影響を与え、燃料電池の性能を左右します。
マスフローコントローラは、温度や圧力の変動に影響されることなく、質量流量を精密に制御する技術を備えています。これにより、水素や酸素といった燃料電池の発電に必要なガスを常に設定された流量で安定供給することが可能です。さらに、気化器との組み合わせにより、複雑なガス混合比率の調整や液体燃料の気化供給にも対応可能です。
この高い安定性と再現性により、研究者は信頼性の高い実験環境を構築し、燃料電池の性能評価や改良を効率的に進めることができるため、多様な実験条件下での燃料電池の性能検証や、新たな燃料技術の開発に貢献します。

燃料電池評価アプリケーション全体例はこちら:
触媒・センサ・燃料電池 〜ガス濃度・湿度制御の最適化のために〜 - HORIBA

アンモニアセンサ評価試験

アンモニアセンサは、工業地帯での大気汚染監視や化学工場でのガス漏れ検知など、安全管理の分野において欠かせない機器です。特にアンモニアは毒性を持つ気体であり、環境や人体への影響を防ぐために、その濃度を正確に監視する必要があります。
評価試験では、センサが正しく機能するかどうかを確認する必要がありますが、試験時のガス濃度が不安定だと誤検知や不良品の原因となる恐れがあります。
そこでマスフローコントローラを用いて試験用ガスの流量を高精度に制御し、複数種類のガスを正確に混合することで、目的の濃度を安定的に作り出します。これによりセンサの反応特性・性能を正確に評価でき、製品の信頼性向上や安全管理体制の強化に貢献します。

加工部品のリーク試験

自動車部品や電子機器の製造において、製品の品質と安全性を確保するためには、加工部品のリークテストが欠かせません。これらの部品は、わずかな漏れが故障や事故につながる可能性があるため、極めて高精度な検査が求められます。
堀場エステックは、この課題を解決する革新的な流体制御技術を提供しています。オートプレッシャー・レギュレータとマスフローメータを組み合わせることで、試験体に安定したガスを供給するシステムが構築できますまた、安定したガス供給を実現することで、従来では困難だった微細な漏れの検出を可能にし、製品の安全性を向上させます。検出した漏れ量を数値化してデータ管理することで検査工程の効率化と自動化が進み、品質管理と安全性の向上に貢献します。

まとめ

マスフローコントローラやマスフローメータは、製造工程から環境エネルギー研究、安全評価試験まで、さまざまな分野で欠かせない役割を担っています。中空糸製造や細胞培養のように製品品質や生産性を支える用途もあれば、メタネーション研究やアンモニアセンサ評価のように新技術開発や安全管理を下支えするケースもあります。
これらに共通するのは、ガス流量を安定かつ精密に制御することが成果の信頼性や効率に直結している点です。堀場エステックの流体制御技術は、産業・医療・環境といった多様な現場で、品質向上と持続可能な社会の実現に貢献しています。

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