工場や製造現場では、私たちの目に触れないところで多種多様な流量計が活躍し、不良品の防止や安全の確保、コストの削減に貢献しています。
この記事では、身近な使用例から産業用途まで幅広く利用されている「流量計」について、その基本的な仕組みや種類、そして重要性をわかりやすく紹介します。
流量計は、流体(液体・気体・蒸気)の流れる量を正確に測るための装置です。
別名:フローインジケーター/フローメーター等
普段の日常生活において流量計を意識することは少ないと思いますが、実は私たちの生活の中にも多く使われています。例えば、水道メーターやガスメーターも流量計の一種です。これらは「積算流量計」と呼ばれ、今までに使用した水やガスの総量を測るために使われています。一方で、「瞬時流量計」というものも存在します。これは、「1時間あたりにどれだけの水やガスが流れているのか」などといった瞬間的な流量を測るものです。工業分野では、この瞬時流量を正確に測定することが重要になり、私たちの流量計もこうした用途に活用されています。
工場や製造ラインでは、適切な流量の維持が不良品の発生を防ぐうえで重要です。
例えば、半導体の洗浄装置や滅菌装置では、流体の供給量が不適切だと洗浄不足や滅菌不良につながります。工作機械では潤滑油の供給不足により部品同士での摩耗が進行し、不良品や故障の原因となることもあります。流量計を使用して流体の流れを正確に管理することで、不良品の発生を未然に防ぐことができます。
流量の異常は、設備の故障や事故につながる可能性があります。例えば、冷却水の流量が不足すると、熱交換がうまく行えず、装置の温度が異常上昇します。その結果、性能低下だけでなく、最悪の場合には機器の損傷や火災といった重大なトラブルに発展する危険性があります。流量計を用いることで、こうした異常を早期に検知し、設備の安全運転やトラブルの未然防止に大きく貢献します。
流量計は、導入や運用の工夫次第でコスト削減や省エネにも貢献します。例えば、配管工事を必要としないタイプの流量計を選べば、設置工事の費用や作業負担を大幅に軽減できます。さらに、電磁式や熱式のように可動部のない流量計であれば、定期的なメンテナンスの頻度や手間を抑えることができます。このように、用途に合った流量計を適切に選定・運用することで、無駄なコストを削減しながら業務の効率化やエネルギーの有効活用にもつなげることが可能です。
流量計は、工場や製造ラインにおいて製品の品質を安定・向上させるために欠かせない存在です。たとえば、半導体や食品の製造工程では、液体や気体を決まった量だけ添加する場面が多くあります。このとき、添加量にばらつきがあると、製品の性能や風味、安全性にまで影響が出る可能性があります。そのため、流体の流量を正確に測定・制御する流量計の導入は、品質のばらつきを防ぎ、安定した製品づくりを支える上で非常に重要です。精密な管理が求められる業界ほど、流量計によるモニタリングと制御が品質管理の鍵となります。
流量計には、測定原理や構造の違いによってさまざまな種類があります。流体の性質(液体・気体・蒸気)、粘度や導電性、配管の設置条件や必要な精度などによって、最適な流量計は異なります。以下の図では、主な流量計の種類を、計測原理ごとの分類とともに整理しています。それぞれの特徴や仕組みについても、詳しく解説していきます。
(図1)
熱式流量計は、「流体がセンサーを通過する際に発生する温度変化を利用して流量を測定する方式」です。流れのある状態では、上流側で熱が奪われて温度が下がり、下流側に熱が伝わって温度が上がります。この上流・下流での温度差と流体の質量流量には一定の関係があるため、そこから流量を求めることができます。
該当製品はこちら:SEC-Z500X Series, SEC-N100Series
コリオリ式流量計は、「振動するチューブ内を流れる流体によって発生するコリオリの力を利用して質量流量を測定する方式」です。コリオリの力は流体の質量と速度に比例し、その影響で生じるチューブのねじれ角度から流量を算出します。
石鹸膜流量計は、「ガラス管内に石鹸膜を形成し、その膜が一定距離を移動するのにかかる時間と容積から流量を計算する方式」です。基本的には単純な時間計測によって体積流量を求めますが、一部の製品では大気圧や温度を測定・入力することで補正をかけ、より正確な体積流量の測定が可能です。
該当製品はこちら:SF-U Series
差圧式流量計は、「配管内にオリフィスやノズルなどの絞りを設置し、その前後で発生する圧力差から流量を計測する方式」です。構造がシンプルで堅牢なため、幅広い分野で利用されており、安定した測定が求められる場面で多く採用されています。
該当製品はこちら:CRITERION D500 Series
容積式流量計は、「内部に組み込まれた2つのギア(歯車)の回転によって、流体の流量を測定する方式」です。流体が持つエネルギーのみでギアが回転するため、外部電源を必要とせず、構造もシンプルで高い信頼性を持っています。粘度の高い液体の計測にも適しており、安定した体積流量の測定が可能です。
カルマン渦式流量計は、「配管内に設置した渦発生体(ブラッフボディ)によって流体の中に発生するカルマン渦を利用して流量を測定する方式」です。流速に応じて発生する渦の周波数が変化するという特性を利用して、流量を算出します。構造がシンプルで可動部がないため、メンテナンス性に優れ、気体・液体の両方に対応可能です。
電磁式流量計は、「導電性のある液体が磁界を通過する際に発生する電圧を測定し、その大きさから流量を算出する方式」です。可動部がないシンプルな構造であるため、摩耗が少なく、高精度かつ長期間にわたる安定した測定が可能です。汚れや異物に強く、上下水処理や薬品の計測など幅広い分野で使用されています。
タービン型流量計は、「流体の流れによって羽根車を回転させ、その回転数から流量を測定する方式」です。羽根車の回転速度が流速に比例する特性を利用しており、シンプルな構造で耐久性にも優れています。応答性が高く、比較的低流量の測定でも安定した動作が可能です。
超音波式流量計は、「超音波の伝播特性を利用して流量を測定する方式」です。代表的な方式には、上流と下流に送受信器を配置し、超音波の伝播時間の差から流量を求める「伝搬時間差方式」と、液体中の気泡や粒子による反射波の周波数変化を利用する「ドプラー方式」があります。非接触で測定可能なため、配管の外側から取り付けられるタイプもあり、保守が容易で幅広い用途に対応しています。
体積(面積)式流量計は、「テーパ管(内径が広がった円錐状の管)内に配置された浮子(フロート)の位置から流量を測定する方式」です。流体の流れによって浮子が押し上げられ、浮子の位置と流量には一定の関係があるため、目盛を読み取ることで流量を確認できます。構造がシンプルで視認性も高く、アナログ表示による直感的な流量確認が可能です。
流量計を設置する前に、使用条件を十分に確認し、それに適した流量計を選定することが重要です。以下の8点を確認することで、より正確かつ安定した計測が可能になります。
【仕様例】
窒素(常温)を室温環境下で10L/min使用。配管は1/4インチの二重フェルール継手、電源必要。使用後はスクラバーへ排出。バイパスラインは不要。
※当社では、お客様のご使用条件(流体の種類・流量・温度・継手の種類など)をお知らせいただければ、最適な流量計をご提案いたします。
流量計は、主に電源の接続と継手による配管接続によって設置します。製品の種類や仕様によって設置方法が異なるため、必ず各製品のマニュアルに従い、正しい手順で施工してください。
例:マスフローメータの場合、専用工具を使用して二重フェルール継手に接続し、専用の表示ユニットに接続して電源を供給します。その後、表示ユニットで流量を確認します。
「流量」を測るのが流量計、「圧力」を測るのが圧力計
流量計と圧力計、どちらも機械設備や工業プラントの運用に欠かせない計器ですが、その違いを正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。ここでは、両者の役割と違いについてわかりやすく解説します。
流量計は、これまでの説明の通り、液体・気体・蒸気といった流体が配管内をどれだけ流れたか(流量)を測定する機器です。流体の供給量や工程制御に欠かせず、製品の品質管理や安全運用にも直結する重要な計測機器です。
一方、圧力計は、流体が持つ圧力(押し出す力)を測定する機器です。単位はPa(パスカル)やkPa、MPa、bar、torrなどが使われ、用途によって様々なスケールで計測されます。圧力は私たちの身近なところでも使われており、例えばタイヤの空気圧や飛行機での気圧変化、台風の気圧などがその一例です。産業用途では、ボイラーや空気圧縮機、ガスボンベなどの圧力管理が安全運転に直結するため、圧力計は欠かせない存在です。