液体微少マスフローコントローラとは?
(冷却式流量センサの仕組みと特徴)

目次

液体の微少流量を高精度に制御するためには、流量の変化を安定して検出できるセンサ技術が欠かせません。
一方で、微少流量の制御では、以下のような要因が測定精度や再現性に影響します。

  • 気泡の混入(液体単相での測定前提が崩れる) 
  • 低沸点液体の気化や溶存ガスの析出(気泡発生の要因) 
  • 温度変動による物性変化(粘度や熱移動特性の変化)
     

そのため、これらの影響を受けにくい測定方式が求められます。

冷却式流量センサの原理

本センサは、毛細管に接したペルチェ素子と複数の温度センサで構成されています。
ペルチェ素子により局所的に冷却し、流路内に温度分布を形成します。その上下流の温度差(ΔT)を検出することで流量を求めます。
液体が流れていない場合、温度分布は左右対称になります。一方、液体が流れると熱が流体によって運ばれるため、温度分布は下流側へ偏ります。この温度分布の変化に応じて上下流の温度差(ΔT)が変化するため、その関係を利用して流量を検出します。これにより、微少流量でも高い分解能での測定が可能です。

マスフローコントローラとしての制御
液体マスフローコントローラ(MFC)は、上記の流量センサに制御バルブと制御回路を組み合わせた製品です。
設定流量と実測流量を比較し、その差が小さくなるようにバルブ開度を自動制御するフィードバック制御を行います。そのため、微少流量域でも安定した流量制御が可能です。
また、冷却式センサにより流量を安定して検出できるため、再現性の高い制御にも適しています。

冷却方式の特徴

液体の微少流量制御では、気化や気泡の発生が測定誤差の大きな要因となります。
加熱方式と比較した場合、冷却方式には以下の特徴があります。

冷却方式のメリット

 低沸点液体でも測定しやすい

加熱方式では、センサ部で流体を加熱するため、低沸点液体では気化が発生しやすくなります。
一方、冷却方式では流体を加熱しないため、気化を誘発しにくく、低沸点液体でも安定した測定が可能です。

 気化や溶存ガスの再放出の影響を受けにくい

冷却方式ではセンサ部での加熱を伴わないため、気化や溶存ガスの再放出を誘発しにくく、気泡による測定誤差の影響を受けにくくなります。
※気泡の発生自体は、供給系の条件(溶存ガス量・圧力条件など)に依存します。

 温度依存性が小さく、安定性が高い

流量測定は流体の熱輸送特性に依存するため、温度変化は測定値に影響を与える要因となります。
冷却方式では温度変化を最小限に抑えた状態で測定を行うため、温度条件の変動による影響が小さく、安定した流量測定が可能です。

冷却方式のデメリット・注意点

 流体条件によって適用可否の確認が必要

冷却方式は、流体の熱移動特性を利用して流量を検出する方式です。そのため、流体の種類、粘度、熱特性、温度条件などによって、測定精度や適用範囲が変わる場合があります。使用する液体や流量レンジに応じて、適用可否や校正条件の確認が必要です。

 気泡の発生自体を防ぐものではない

冷却方式は、センサ部での加熱を伴わないため、気化や溶存ガスの再放出を誘発しにくい方式です。
一方で、供給系で発生した気泡や、液体中にもともと含まれる溶存ガスの影響を完全に防ぐものではありません。気泡の影響を抑えるには、タンク、配管、脱気、圧力条件など、供給系全体での対策が重要です。

 流量レンジや使用条件に制約がある

冷却方式は、微少流量域の測定に適した方式ですが、すべての流量域や使用条件に対応できるわけではありません。必要な流量レンジ、応答性、使用圧力、流体条件によっては、他方式や別構成の検討が必要となる場合があります。そのため、用途や装置条件に応じた方式選定が重要です。

液体の微少流量制御に用いられる主な方式

液体の微少流量制御にはいくつかの方式がありますが、微少流量域での安定性や適用条件は方式によって異なります。
ここでは、代表的な方式として熱式、コリオリ式、および参考として差圧式の考え方を紹介します。

 熱式(加熱方式・冷却方式)

熱式は、流体が熱を運ぶ性質を利用して流量を検出する方式です。
液体向けでは、熱の与え方によって加熱方式と冷却方式に分けて考えることができます。
加熱方式では、センサ部で流体に熱を与え、その熱移動の変化から流量を求めます。
一方、冷却方式では、ペルチェ素子などを用いて局所的な温度分布を形成し、その上下流の温度差から流量を求めます。
低沸点液体や気化しやすい流体では、加熱方式は条件によって気化や溶存ガスの再放出を招く可能性があります。
これに対し冷却方式は、加熱を伴わずに測定できるため、こうした影響を誘発しにくい点が特長です。

 コリオリ式

コリオリ式は、振動する流路内を流体が通過するときに生じるコリオリ力を利用して、質量流量を直接計測する方式です。
流体物性の影響を受けにくく、質量流量を直接測定できることから、高い精度や再現性が求められる用途で用いられます。
一方で、構造、設置条件、応答性、コストなどを考慮する必要があります。
そのため、装置構成や必要な制御性能に応じて、熱式との使い分けが検討されます。

 (参考)差圧式などの流量計測方式

差圧式は、流路内の絞りや流路抵抗によって生じる圧力差を測定し、その値から流量を求める方式です。液体の流量計測方式として用いられる場合もありますが、微少流量域では流体物性や気泡、使用条件の影響を踏まえて適用を判断する必要があります。そのため、本ページでは、液体微少マスフローコントローラの代表的な方式として、熱式とコリオリ式を中心に整理しています。

まとめ

液体微少マスフローコントローラでは、冷却式センサにより流体の熱輸送を利用して流量を検出しています。
この方式は、気泡や気化の影響を受けにくく、低沸点液体や微少流量領域において高い安定性と再現性を実現します。
また、流量センサと制御バルブ、制御回路を組み合わせることで、設定値に対して流量を自動追従させるフィードバック制御が可能です。
そのため、精密な液体供給が求められる用途において有効な方式となります。

液体微少マスフローメータ/コントローラ LF-F・LV-Fシリーズ
堀場エステックでは、冷却式センサを採用した液体用微少マスフローメータ LF-Fシリーズ、および液体用微少マスフローコントローラ LV-Fシリーズを取り扱っています。
LF-Fシリーズは液体の微少流量を測定するマスフローメータです。LV-Fシリーズは、LF-Fシリーズに制御バルブと制御回路を組み合わせ、設定流量に応じて流量を自動制御する液体用マスフローコントローラです。
低沸点液体や微少流量域での安定供給をご検討の場合は、対象流体、流量レンジ、圧力条件に応じて適用可否をご確認ください。

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液体微少デジタルマスフローメータ/コントローラ LF-F/LV-F series - HORIBA

 こんな課題がある場合にご相談ください

液体の微少流量制御において、以下のような課題がある場合は、方式選定や適用可否の検討対象となります。

  • 流量が安定しない、ばらつきが大きい
  • 気泡の発生により測定値が不安定になる
  • 低沸点液体で気化が発生する
  • 条件変更後の立ち上がりが安定しない
  • 微少流量域で再現性を確保したい
     

対象流体、流量レンジ、圧力条件に応じた適用可否や方式選定については、ぜひご相談ください。

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