※以下マスフローコントローラをMFCと略称で記載いたします。
MFCの置き換えでは、使用するガスや流量が同じでも、そのまま交換できるとは限りません。取付寸法、コネクタのピン配列、通信コマンド、校正条件などが異なり、配管や周辺機器、装置側の設定を変更する必要になることがあります。
また、古い製品では銘板が読み取りにくかったり、メーカーのWebサイトに情報が残っていなかったりして、既設品の型式そのものを特定できないケースもあります。
本記事では、既設MFCを後継機種や代替品へ置き換える際に確認したいポイントと、型式や仕様が分からない場合の進め方を解説します。
※なお、ガス種・流量範囲・圧力条件などを一から決める場合の考え方は、マスフローコントローラの選び方 初めて導入する前に確認したいポイントで解説しています。
置き換えを検討する際は、既設品と同じ使用条件を引き継ぐのか、変更後の条件に合わせて選び直すのかを最初に切り分けます。
MFCの置き換えが必要になる理由は、大きく3つに分かれます。
MFCの故障や性能低下により、修理しても継続使用できない場合は、交換を検討します。
ただし、流量が安定しない、設定した流量まで流れないといった現象は、MFC本体ではなく、供給圧力、配管、電源、信号などの周辺条件が原因の場合もあります。そのため、交換を進める前に発生している現象と使用条件を整理します。
生産終了により交換品や予備品を確保できない場合です。生産終了から時間が経過していると、修理部品の供給や保守サービスも終了していることがあります。
ガス種、流量、圧力、制御方法などが変わる場合です。この場合は、既設条件を引き継ぐ単純な置き換えではなく、変更後の条件に基づく再選定として扱います。選定コラム
以降は、使用条件は変えずに機器だけを置き換える場合を前提に説明します。
MFCは、同じシリーズ・同じ流量レンジでも、型式の末尾記号などによって、使用ガス、継手、電源、入出力信号、通信方式が異なる場合があります。シリーズ名や外観だけで判断せず、正確な型式を確認します。
製品によって記載内容は異なりますが、MFC本体の側面や背面に貼付されたラベル(銘板)から、メーカー名、型式、シリアル番号、使用ガス、フルスケール流量、電源仕様などを確認できる場合があります。
型式は末尾の記号まで省略せずに記録します。末尾の記号に、継手や電気仕様などの違いが含まれている場合があるためです。シリアル番号は、同じ型式でも製造時期や個別仕様を確認する手掛かりになります。
銘板だけで判断できない場合は、次の資料も確認します。
納入仕様書には、標準カタログに載っていない個別仕様が記載されている場合があります。また、装置メーカーがMFCを組み込んでいる場合は、MFC単体の型式ではなく装置メーカー独自の部品番号で管理されていることもあります。
長期間使用している装置では、導入当初から配管や制御方法が変更されていることがあります。資料上の仕様だけでなく、現物の設置状態も併せて確認します。
情報がすべてそろっていなくても、複数の手掛かりを組み合わせることで仕様を絞り込める場合があります。
銘板の一部しか読めない場合でも、判別できない部分を推測で埋めないことが重要です。似た文字や数字を誤って伝えると、異なる仕様の製品として確認が進んでしまいます。読み取れた範囲をそのまま記録し、不明部分は不明として伝えます。
問い合わせの際は、写真が有力な手掛かりになります。
銀色など反射しやすいラベルは、角度を変えると読み取れる場合があります。また、配管やケーブルを外す前に設置状態を撮影しておくと、交換後の接続確認にも使えます。
MFC本体の型式を確認できない場合は、接続されている電源装置、表示設定器、専用ケーブルなどの型式も確認します。
周辺機器の型式から、接続可能なMFCのシリーズや電源・信号仕様を絞り込める場合があります。特に専用の電源装置や表示設定器を使用している場合は、MFC本体と併せて銘板や接続状態を記録します。
ただし、周辺機器が後から交換されている可能性もあるため、その情報だけでMFCの仕様を確定することはできません。
置き換え候補が見つかったら、既設品との差分を確認します。特に見落とされやすいのは次の項目です。
| 確認項目 | 見落としやすい点 |
| フルスケール(F.S.)流量 | F.S.が変わると、同じ設定信号でも流量が変わる。 PLC側のスケーリング変更が必要になる場合がある。 |
| 流量単位の基準条件 | 基準温度・基準圧力が異なると、同じsccmなどの表記でも、流量値が示す物質量が異なる。 単位だけでなく基準条件まで確認する。 |
| 校正ガス | 校正・換算方法(実ガス校正/C.F.換算など)が異なると指示値に差が出る |
| 混合ガス | 成分や混合比が変わると、ガス補正条件や流量特性も変わる。 |
校正条件は特に注意が必要です。 実ガス校正、基準ガスからのC.F.換算、内部のガスデータによる補正など、校正・換算方法が異なる場合があります。こうした条件の違いを考慮せずに置き換えると、同じ流量レンジや指示値でも、実ガス流量に差が生じる可能性があります。(例)既設品が実ガス校正で、置き換え品がN2校正+C.F.(またはその逆)の場合、型式上の流量レンジが同じでも実際に流れる流量が変わります。
必要な差圧が不足すると、設定流量まで流れない場合があります。一方、許容圧力や推奨差圧の範囲を外れると、制御性能や機器への負荷に影響する可能性があります。測定・制御方式が変わる場合は、必要差圧や使用可能な圧力範囲が大きく異なることがあるため、特に確認が必要です。
装置内に組み込まれている場合、放熱や隣接機器の影響で周囲温度が高くなっていることがあります。既設品より許容周囲温度の範囲が狭い製品に置き換えると、実際の設置環境で仕様どおりの精度が得られない場合があります。また、加熱したガスや蒸気を扱うラインでは、既設品が加熱仕様である可能性があるため、ガス温度と加熱の要否を併せて確認します。
継手が同じでも、以下が異なれば配管や取付板の変更が必要になります。
使用ガスに対する接ガス部・シール材の適合性に加え、リーク性能、清浄度仕様(表面処理、洗浄グレード)が既設品と同等かを確認します。
コネクタ形状が同じでもピン配列が異なることがあります。既設ケーブルを流用する場合は、形状ではなくピン配列で照合してください。
通信規格が同じでも、コマンド体系、アドレス設定、データのスケーリングまで同じとは限りません。既設の制御プログラムをそのまま使う場合は、コマンド仕様レベルでの確認が必要です。
一般的なMFCの制御バルブは流量を調整するためのもので、気密遮断を目的とした遮断弁とは異なります。製品によっては閉止時にも規定のリーク量があるため、確実な遮断が必要な用途では、製品仕様を確認したうえで別途遮断弁を検討します。
既設品と応答特性が異なると、短時間で流量を切り替える用途や複数MFCでのガス混合では、プロセス結果に影響する場合があります。
置き換えの影響範囲は、大きく3段階に分かれます。
配管接続、取付寸法、電源、信号、制御方法がすべて適合していれば、MFC本体の交換だけで対応できます。ただし後継機種であっても全仕様が同一とは限らないため、事前確認は必要です。
流量仕様が合っていても、面間寸法やコネクタが異なればそのままは 取り付きません。この場合は、継手・変換継手、取付金具、電源装置、ケーブル、コネクタ変換部品、表示設定器などの変更が必要になります。
電源、入出力信号、通信方式、流量レンジなどが異なる場合は、配管・配線の変更、PLCのスケーリング変更、制御プログラムや通信設定の変更、運転シーケンスの見直しが必要になります。変更範囲が大きい場合は、MFC交換ではなく装置改造として計画します。
※以下はMFC交換時の一般的な確認例です。実際の作業手順は、使用するガスの性質や装置構成、製品によって異なります。製品の取扱説明書、使用ガスに関する安全情報、装置側の作業手順に従って実施してください。
交換前
交換後
すべてそろっていなくても構いません。分かる範囲で以下を整理しておくと、置き換え候補の検討が進めやすくなります。
メーカー名/型式(末尾記号まで)/シリアル番号/銘板の写真/本体・設置状態の写真/納入仕様書・取扱説明書/装置図面
使用ガス/常用流量とフルスケール流量/入口・出口圧力/使用温度/継手の種類・サイズ/電源仕様/設定信号・出力信号/通信方式/接続している電源装置・表示設定器・PLC
故障や性能低下(発生している現象、頻度、いつからか)/同一型式が入手できない/予備品の確保/保守サービス終了/装置・使用条件の変更
型式が読み取りにくい場合は、推測した型式を伝えるのではなく、銘板全体の写真を提示するほうが確実です。
MFCを置き換える際は、ガス種や流量だけでなく、校正・圧力条件、取付寸法、電気・通信仕様、バルブ動作などを既設品と比較する必要があります。仕様の違いによっては、MFC本体だけでなく、周辺部品や装置側の設定変更が必要です。
型式や仕様が分からない場合は、銘板の情報、本体・設置状態の写真、周辺機器、装置資料、現在の使用条件を整理します。すべての情報がそろっていなくても、複数の手掛かりから置き換え候補を絞り込める場合があります。
仕様を推測したまま製品を選ばず、集めた情報をメーカーや装置メーカーへ提示し、既設設備への適合性を確認しましょう。
MFCの置き換えや選定をご検討の方は、以下の選定フォームをご利用ください。