3つの気化方式

バブリング方式・ベーキング方式・直接気化方式の違い

半導体や電子部品の製造などでは、液体の材料を「気体(ガス)」の状態に変えて装置へ供給する場面が数多くあります。この液体を気体に変える工程を「気化」といいます。
液体材料を気化して供給する代表的な方式には、バブリング方式、ベーキング方式、直接気化方式があります。同じ液体材料でも、必要な発生濃度・発生流量、キャリアガスの有無、供給先の圧力条件などによって、適した方式は異なります。
本ページでは、3つの気化方式の仕組みと特徴、方式を選ぶ際に確認したいポイントを解説します。

目次

バブリング方式とは

バブリング方式は、液体材料を入れたタンク内にキャリアガスを通し、液体材料を気化させながらガスとして取り出す方式です。キャリアガスとは、気化した材料を供給先へ運ぶために使用するガスで、窒素などが使用される場合があります。イメージとしては、水槽のエアポンプのように液体中へガスを通し、そのガスに材料の蒸気を含ませて取り出す方式です。純水やアルコールなどの液体材料を気化ガスとして発生させる方法として、生産設備や研究開発機器などで広く使用されています。比較的シンプルな構成で、一定濃度のガスを連続的に発生させたい場合に用いられ、水分添加や評価用テストガスの発生などにも適した方式です。
一方で、発生濃度は液体材料の蒸気圧、液温、タンク内圧力、キャリアガス流量などの影響を受けます。そのため、一定濃度で安定して発生させるには、温度・圧力・キャリアガス流量を適切に管理することが重要です。

バブリング方式の原理

液体材料の発生濃度の算出方法

ベーキング方式とは

ベーキング方式は、液体材料を入れたタンクを加熱し、液体材料から発生したガスを取り出して供給する方式です。イメージとしては、やかんを加熱して湯気を発生させるように、液体材料をタンク内で加熱して気化させる方式です。
発生したガスは、マスフローコントローラなどで流量を制御しながら供給します。

※マスフローコントローラは、ガスの質量流量を測定・制御し、設定した流量で供給するための機器です。
ベーキング方式は、キャリアガスを用いずにガスを取り出す構成にしやすく、液体材料由来のガスを一定流量で供給したい場合に用いられます。また、液体材料をタンク内で気化させるため、材料に含まれる不揮発成分が気化部や流量制御部へ持ち込まれにくい場合があります。

※不揮発成分とは、加熱しても気化せずに残る成分のことです。
一方で、発生量は液体材料の蒸気圧やタンク温度の影響を受けます。そのため、必要な発生流量に応じた温度条件の検討が重要です。また、タンクを加熱してガスを発生させる方式のため、条件変更後の応答性や、配管内で再び液体に戻る再液化への配慮も必要です。

ベーキング方式の原理

直接気化方式とは

直接気化方式は、液体材料を気化部へ導入し、加熱や減圧を利用して連続的に気化させる方式です。液体材料やキャリアガスの流量を制御しながら気化部へ供給する構成や、キャリアガスを使用せずに液体材料を気化させる構成があります。
イメージとしては、必要な量の液体材料を気化部へ送り、その場で気化させる方式です。バブリング方式やベーキング方式のようにタンク内で気化させる方式とは異なり、液体材料を必要量に応じて気化部へ導入する点が特徴です。
液体材料を必要量に応じて気化部へ導入できるため、タンク方式と比べて、気化部を中心とした比較的コンパクトなシステム構成にしやすい場合があります。また、キャリアガスを使用する構成では、キャリアガス流量を調整することで、供給先に応じたガス流量や濃度条件を設定しやすくなります。
一方で、液体材料を気化部で直接気化させるため、気化に必要な熱量や、気化部・供給先側の圧力条件を考慮する必要があります。また、発生したガスが配管内で再液化しないよう、気化部から供給先までの温度管理も重要です。
材料の種類や純度、加熱条件によっては、不揮発成分や分解生成物が気化部、ノズル部、配管内などに残留し、発生流量の低下や供給量の変動につながる場合があります。

※分解生成物とは、材料が熱などによって分解した際に生じる別の物質のことです。
インジェクション方式など、直接気化方式の詳しい気化原理については、関連ページで解説しています。

▶液体材料気化システムの気化原理|インジェクション方式による連続気化 - HORIBA

直接気化方式の原理

バブリング方式・ベーキング方式・直接気化方式の比較

バブリング方式、ベーキング方式、直接気化方式は、いずれも液体材料を気化したガスとして供給する方式ですが、気化の仕組みや制御方法、適した用途は異なります。方式を選定する際は、液体材料の性質や必要な発生濃度・発生流量、キャリアガスの有無、供給先の圧力条件などを確認することが重要です。

項目バブリング方式ベーキング方式直接気化方式
基本原理液体材料を入れたタンク内にキャリアガスを通し、発生した蒸気をキャリアガスとともに取り出す液体材料を入れたタンクを加熱し、発生した気化ガスを取り出す液体材料を気化部へ導入し、加熱や減圧を利用して連続的に気化させる
キャリアガス不要要/不要(方式次第)
流量・濃度の考え方液温、タンク内圧力、キャリアガス流量などにより発生濃度を管理するタンク温度や蒸気圧をもとに発生したガス流量を制御する液体材料やキャリアガスの流量を制御しながら気化部へ供給する
特徴比較的シンプルな構成で、連続的な濃度発生に用いられる液体材料由来のガスを一定流量で供給したい場合に用いられる必要量に応じて液体材料を気化部へ導入でき、応答性やシステム構成の自由度を確保しやすい
注意点発生濃度が液温・圧力・キャリアガス流量の影響を受ける発生量が蒸気圧やタンク温度の影響を受ける気化部への熱供給、圧力条件、再液化防止、堆積物への配慮が必要
向いている用途の例水分添加、テストガス発生、一定濃度の連続発生高純度材料の気化ガス供給、一定流量の連続供給半導体製造装置など、液体材料を連続的に気化供給する用途

気化方式を選ぶときのポイント

気化方式を選ぶ際は、単に「液体を気化できるか」だけでなく、必要な濃度や流量を安定して供給できるか、装置構成や運用条件に合っているかを確認することが重要です。
主に、以下のような項目を整理しておくと、方式を検討しやすくなります。

  • 使用する液体材料の蒸気圧・沸点・気化しやすさ
  • 必要な発生濃度・発生流量
  • キャリアガスを使用するかどうか
  • 供給先の圧力条件
  • 気化部や配管で再液化を防げるか
  • 材料の純度、不揮発成分、分解生成物への配慮
  • 連続運転時の安定性やパージ条件
     

特に、材料の性質や供給条件によっては、方式だけでなく、温度管理、圧力管理、配管構成、パージ方法まで含めて検討する必要があります。

よくある質問

キャリアガスは必ず必要ですか?
方式によって異なります。バブリング方式では基本的にキャリアガスを使用します。ベーキング方式ではキャリアガスを使用しない構成にしやすく、直接気化方式ではキャリアガスを使用する構成と使用しない構成があります。

高純度の液体材料を気化したい場合、どの方式が向いていますか?
キャリアガスを使用せずに供給しやすいベーキング方式が候補になる場合があります。ただし、必要な発生流量、温度条件、供給先の圧力条件などによって適した方式は変わるため、使用条件に応じた検討が必要です。

装置をできるだけ小さくしたい場合は、どの方式が向いていますか?
タンク方式と比べて、直接気化方式は比較的コンパクトなシステム構成を検討しやすい場合があります。ただし、必要な発生流量、気化に必要な熱量、配管加熱、安全設計などによって装置構成は変わります。

まとめ 液体材料や使用条件に合った気化方式を選ぶために

気化方式を選ぶ際は、まず「使用する液体材料」と「必要な発生濃度・発生流量」を整理することが重要です。そのうえで、キャリアガスの有無、供給先の圧力条件、再液化防止、不揮発成分や分解生成物への配慮、運用時のパージ条件などを確認することで、適した方式やシステム構成を検討しやすくなります。
HORIBA STECでは、バブリング方式、ベーキング方式、直接気化方式に対応した気化システムをご提案しています。使用する液体材料や必要な発生濃度・発生流量をお知らせいただければ、条件に応じた方式やシステム構成の検討をサポートします。気化方式の選定でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

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