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ガス分析計とは?(原理・特徴・用途を徹底解説!)

ガス分析計は、現代の環境保全、産業安全、そして最先端の半導体プロセス等において、ガス成分を正確に測定する目のような役割を果たす計測装置です。分子レベルでの精密な分析を可能にし、対象ガスや用途に応じて様々な測定原理が使い分けられます。
本コラムでは、ガス分析計の基本的な役割と仕組みを解説し、代表的な測定方式を紹介します。

目次

ガス分析計の役割と仕組み

ガス分析計は、対象ガス中の特定成分を検出し、その濃度を定量的に測定する装置です。
分子が持つ物理的・化学的特性――例えば質量、赤外線吸収特性、光の透過率等――を利用することで、各成分の種類と量を明らかにします。
こうした計測結果は、環境保全のための排出管理や、半導体製造におけるプロセス制御、安全確保などに欠かせません。
ガス分析計は分析対象や測定環境によって最適な測定方式が異なるため、用途に応じた方式選定が重要となります。

ガス分析計の主な方式

ガス分析計には分析対象や用途に応じてさまざまな測定原理があります。
それぞれの方式は、ガス分子が示す異なる物理的・化学的特性を利用しており、
「どの特性を測るか」によって得られる情報や分析精度が変わります。
代表的な方式として、分子の質量をもとに分析する質量分析方式(Q-MASS)、
赤外線の吸収を利用する赤外吸収方式(NDIR)や広帯域の光を用いるフーリエ変換赤外分光法(FTIR)、赤外レーザー吸収方式(IRLAM™)、そして成分を時間的に分離して測定するガスクロマトグラフィーなどがあります。
ここではそれぞれの原理・特長・主な用途を簡単に整理し、概要を簡単にまとめます。

 質量分析方式(Q-MASS: 四重極質量分析計)

質量分析方式は、真空中のガス分子を質量電荷比(m/z)に基づいて分離・検出する方式です。極めて高い分解能で成分を識別できるため、真空装置内の残留ガス分析や半導体プロセス監視などに広く用いられます。
チャンバー内に存在する水分や有機残渣、反応副生成物などの微量成分の変動をリアルタイムで把握できる点も大きな特長です。
詳細の原理や特長はこちら:四重極分析とは - HORIBA

 赤外吸収方式(NDIR)

赤外吸収方式は、ガス分子が特定の赤外線を吸収する性質を利用し、濃度を測定する方式です。構造がシンプルで安定性が高く、定期的なキャリブレーション以外のメンテナンスが少ないのが利点です。環境計測や排ガス監視など、堅牢性と信頼性が求められる現場で多く使用されています。
NDIRの仕組みと応用例はこちら:非分散形赤外線吸収方式(NDIR:Non-Dispersive Infrared Absorption)測定原理

 フーリエ変換赤外分光法(FTIR)

フーリエ変換赤外分光法(FTIR)は、広帯域の赤外光を一度に照射し、得られた干渉スペクトルを解析することで、複数のガス成分を同時に高精度分析する方式です。
特定ガスの単成分測定に適したNDIR方式に対し、FTIRは化学種の同定能力と多成分同時計測性に優れ、環境計測や研究開発、排ガス分析など多用途に活用されています。

 赤外レーザー吸収方式(IRLAM™)

赤外レーザー吸収方式は、赤外レーザーを光源に用いて特定ガスの吸収スペクトルを高精度に検出する方式です。
微量成分の検出やリアルタイムモニタリングに適しており、プロセス制御やリーク検知などに用いられます。
IRLAMの詳細解説はこちら:HORIBAの次世代赤外分光技術 IRLAM(アーラム)

 ガスクロマトグラフィー

ガスクロマトグラフィーは、キャリアガスで試料中の成分を分離し、検出器で個々の濃度を測定する方式です。分析時間は比較的長く、一般的にはサンプリングした試料を段階的に分析するバッチ計測が主流ですが、分離能と定量精度が極めて高く、標準的な分析手法として確立しています。
多成分混合ガスの定性・定量分析に適しており、研究・開発から品質管理まで幅広い分野で使用されています。
ここで紹介した各方式は、それぞれ異なる特性と得意分野を持っています。リアルタイム監視に優れる方式もあれば、高精度なオフライン分析を得意とする方式もあります。
分析対象や測定目的に応じて最適な方式を選定することが、正確で再現性の高いガス分析を行うための第一歩です。

HORIBAグループとガス分析計

HORIBAグループでは、長年にわたり多様なガス分析計技術を開発・提供しています。
中でも堀場エステックは半導体分野や精密プロセス向けのガス分析・制御ソリューションを担っており、QLシリーズ(Q-MASS)、IRシリーズ(NDIR)、LGシリーズ(IRLAM)などの技術を展開しています。
グループ全体の計測技術を活用することで、測定精度や信頼性の高い分析環境を提供可能です。

ガス分析計の活用分野

各方式で特徴が異なるガス分析計は、分析対象や環境条件に応じて最適な手法が選ばれます。その用途は研究開発から産業プロセス、環境モニタリングまで多岐にわたり、目的に応じて異なる分野で活用されています。
以下では、代表的な分野ごとにガス分析計の活用事例を簡単にご紹介します。

 半導体プロセス

半導体製造プロセスでは、ガスの純度・濃度・反応生成物の管理が極めて重要です。ガス分析計は、プロセスチャンバー内や排気系のガス組成をリアルタイムで監視し、歩留まりや膜質の安定化に寄与します。
特にエッチング、CVD、ALDなどのプロセスでは、反応中および反応後のガス組成を高精度に把握することで、装置制御や異常検知の精度を高めることが可能です。

 環境計測

大気・排ガス・燃焼ガスなどの環境関連分野では、CO₂、NOₓ、SO₂といった成分濃度の連続測定が求められます。ガス分析計は、環境基準の遵守やエネルギー効率の最適化に欠かせない計測機器として利用されています。

 産業安全・エネルギー関連

化学プラントやエネルギー関連施設では、可燃性・有害ガスの漏洩検知や燃焼効率の最適化が常に求められます。ガス分析計は、安全管理とエネルギーマネジメントの両面で重要な役割を担います。
燃焼排ガスのO₂・CO濃度測定による燃焼制御、H₂やCH₄の濃度監視による爆発リスク低減など、プロセス安全性の確保に直結します。

 研究開発分野

基礎研究から応用開発まで、ガス分析は新しい材料・プロセスの理解に不可欠な手段です。反応ガスの組成変化をリアルタイムで追跡することで、新素材開発の加速につながります。
多様な測定原理を組み合わせることで、研究から実用化フェーズまで継続的な評価が可能です。

まとめ

ガス分析計は、ガス成分を正確に把握することで、産業・環境・研究開発など幅広い分野を支える重要な計測装置です。
測定原理や分析対象に応じて、質量分析方式、赤外吸収方式、フーリエ変換赤外分光法、レーザー吸収方式、ガスクロマトグラフィーなど、さまざまな方式が用いられます。
それぞれの方式には、得意とする分野・検出限界・応答性・設置条件といった特性の違いがあり、用途に応じた適切な選定が求められます。また、ガス分析技術の発展により、環境保全や産業安全、半導体プロセスの高精度化など、社会のさまざまな領域で計測の信頼性が向上しています。

 


HORIBAグループでは、これら多様な計測ニーズに応えるため、ガスの種類や濃度範囲、使用環境に応じた分析ソリューションを提供しています。研究開発から生産プロセス、環境モニタリングまで、正確で信頼性の高い測定を支える技術を追求しています。


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