目次
非分散形赤外線吸収方式(NDIR)は、分子の赤外線吸収を利用する方法で多くのガス成分の測定が可能です。
分子は、特定の光を吸収する性質を持っています。たとえば赤いリンゴが赤く見えるのは、リンゴの表面が、赤以外の波長を持つ光を吸収し、逆に、赤い波長の光を反射するからです。この現象は、赤や黄色などの目に見える光(可視光)だけでなく、ガス成分の濃度測定に広く使われている赤外線でも同じように起こります。赤外線は分子に吸収されると、その分子の温度を上昇させます。また分子により吸収する赤外線の波長が異なります。
この赤外線の特性を利用した測定原理が、非分散形赤外線吸収方式(NDIR)です。NDIRという呼び方も普及しています。赤外線は波長により近赤外線、中赤外線、遠赤外線に区分され、ガス成分の濃度測定では中赤外線域の2.5 ~25 μmの波長が使われます。
赤外線光源から出る中波長領域の赤外線のうち、特定波長を測定に使用する方式を非分散形と言います。赤外線を吸収しないガスも存在します。例えば、窒素(N2)は赤外線を吸収しないため、別の測定原理のガス分析計で測定します。
NDIRを用いたガス分析計の測定原理
図1:NDIRを用いたガス分析計の基本構造(例:CO2中のCOを測定する場合)
赤外線光源を用いたガス分析計は、測定するガスセルの中にガスを流し、そこに赤外線を通し、検出器で赤外線の吸収量を検出することでガス濃度を測定します。(図1)
ガスの種類によって吸収する赤外線の波長が異なります。(図2)ガス種ごとに特定波長の赤外線を吸収し、その吸収量は濃度に依存するので「どの種類のガスが」「どれくらいの濃度で存在するか」がわかります。図1ではCO検出器でCO2ガス中のCOガスの濃度を測っています。
図2:ガスの赤外線吸収波長と吸収量
ガスの種類によっては、吸収される赤外線波長が重なる部分が発生する場合があります。(図2)これはガスの干渉と呼ばれます。
図3:ガス濃度と赤外線吸収量の関係
赤外線の吸収量はガスの濃度に比例し、ガスが低濃度であれば小さく高濃度であれば大きくなります。(図3)
赤外線吸収量とガス濃度の関係は Lambert-Beerの法則で決まります。
赤外線の吸収量は吸収分子の濃度に応じて変化する。この関係はLambert-Beerの法則により表される。
Ι = Ι0exp (-μcd)
Ι :透過光強度
Ι0 :入射光強度
c :吸収分子(測定成分ガス)の濃度
μ:吸収係数(分子と波長で決まる定数)
d :吸収分子層(ガス層)の厚さ