熱式マスフローコントローラとは?

原理・特徴・用途を徹底解説!

熱式マスフローコントローラ(以下、熱式MFC)は、主にガスを設定した量で安定して供給するための流量制御機器です。流量センサーで現在の流れを測定し、その結果に合わせて制御バルブを自動で調整することで、設定した流量を一定に保ちます。
流量制御の現場では、「同じ設定値のはずなのに、条件が変わると供給される量がずれる」といった課題が起こることがあります。特に気体は温度や圧力によって密度が変化するため、体積を基準にすると、同じ流量でも実際に供給される質量が意図せず変化する場合があります。
熱式MFCは、流れによって運ばれる熱の変化を利用して流量を捉える方式であり、微少流量の供給やガス混合など、供給量の再現性が求められる用途で広く用いられています。
なお、熱式MFCと熱式流量計は同じ原理のセンサーを用いますが、熱式MFCは測定結果を利用してバルブを制御し、流量を一定に保つ点が大きな違いです。  
熱式の検出原理を詳しく知りたい方は、以下の解説ページをご覧ください。  
▶ 熱式流量計とは?(原理・特徴・用途を徹底解説!) - HORIBA
本ページでは、熱式MFCの仕組みと特長、どのような場面に適した方式なのかを基礎から解説します。

目次

熱式マスフローコントローラの仕組み

熱式MFCは、「流体が流れると熱が運ばれる」という現象を利用して流量を捉えています。
流れがない状態では温度分布はほぼ対称ですが、流体が流れると熱が下流へ運ばれるため、上流側は相対的に冷え、下流側は相対的に温まり、上流と下流の間に温度差が生じます。センサーはこの温度差を電気信号として取り出し、現在の流れの状態を検出します。
制御回路はその信号から流量を判断し、設定された流量になるよう制御バルブの開度を調整します。この「測定」と「調整」を連続的に繰り返すことで、制御範囲内で配管内の圧力や温度などの条件が変化しても、流量が一定になるよう保たれます。

なぜ質量流量が測定できるのか

熱式MFCでは、上流と下流の温度差(またはその温度差を維持するために必要な加熱電力)を流量の指標として利用しています。これは、流体が流れると熱が下流側へ運ばれ、加熱部からの熱の運ばれ方が流量に応じて変化するためです。

流れが小さい場合、運ばれる熱は少なくなります。反対に流れが大きい場合は多くの熱が運ばれます。つまり、どれだけ熱を運べるかは「流れている量」に対応します。
ここで重要なのは、同じ体積の流れであっても、含まれる流体の量が同じとは限らないという点です。気体は温度や圧力によって密度が変わるため、同じ体積が流れていても実際に供給される量は変化します。
一定の温度・圧力条件下では、温度差(または加熱電力)と質量流量の間に比例関係が得られます。そのため、対象ガスに合わせた校正(ガス換算)を行うことで、質量流量を基準とした制御として運用されます。

※実際の運用では、表示や設定値として体積流量(例:SLM、NL/min など)に換算した値が用いられることもあります。これは、使用量を直感的に把握しやすく、運用上扱いやすいためです。

熱式マスフローコントローラの特長

熱式MFCは、設定した流量を一定に供給し続けることを目的とした方式です。微少流量の連続供給や、ガス混合比を一定に保つ用途で多く採用されています。
一方で、すべての条件に最適な方式というわけではなく、使用する流体や環境条件によっては別の方式が適する場合もあります。ここでは、熱式MFCが選ばれる理由と、使用時に理解しておきたいポイントを整理します。
 

 熱式マスフローコントローラが得意とする点

-微少流量の制御に適している
 熱の移動量を利用して流量を検出するため、小さな流れの変化にも反応しやすい特長があります。微量のガスを長時間、同じ量で供給したい用途に適しています。
-変動を検出しやすく、再現性を確保しやすい
 センサーが流れの変化を連続的に捉えるため、流量の変動を早い段階で検出できます。その結果、設定流量から外れた際にも補正が行われ、流量が安定状態へ戻りやすい特長があります。
-クリーンなガス供給系と組み合わせやすい
 流量を検出するセンサー部に機械的な可動部がなく、内部容積も小さい構造のため、パージや置換が行いやすく、ガス供給ラインを清浄な状態に保ちやすい特長があります。
 

 使用時に理解しておきたい点(注意点)

-流体の一部を測定して全体の流量を求めている
 多くの熱式MFCでは、流路の中に「センサーを通る経路」と「バイパス経路」が設けられており、流体の一部のみがセンサーを通過する構造になっています。センサー側とバイパス側に流れる量の比率(分流比)が一定になるよう設計されているため、センサーで検出した流量から配管全体の流量を求めることができます。
-ガス種によって指示値が変わることがある
 熱式MFCは、流体がどれだけ熱を運ぶかを利用して流量を検出しています。そのため、同じ流量であってもガスの種類が変わると熱の運び方が異なり、センサーの出力が変化することがあります。実際の使用では、対象とするガスに合わせた校正(ガス換算)が必要になります。
-汚れや凝縮があると指示がずれることがある
 センサー周辺の熱の伝わり方が変わると、出力に影響する場合があります。ミストやパーティクル、凝縮性成分を含む場合は注意が必要です。
-適用範囲には向き不向きがある
 微少〜中流量域では扱いやすい一方、流量が大きい場合や、流体の温度・状態が大きく変化する条件では別方式が選択されることがあります。

どんな用途に使われるか

熱式MFCは、特に「供給量のわずかな違いが結果に影響する場面」で使用されます。単にガスを流すためではなく、装置や反応の状態を安定させる目的で用いられるのが特徴です。
■ ガスを一定の比率で混合したい場合
複数のガスを混合する工程では、重要になるのは体積の比率ではなく、実際に供給されるガスの量の比率です。温度や圧力の条件が変わると、ガスの密度が変化し、同じ体積の中に含まれるガスの量は変化してしまいます。そのため体積流量で制御した場合、設定値は同じでも混合比がずれることがあります。
熱式MFCは質量流量を基準に制御するため、条件が変化しても供給量の比率を揃えやすく、安定したガス濃度を作りやすい特長があります。
■ 微量のガスを安定して供給したい場合
分析装置や研究装置では、ガスを大量に流すことよりも、一定量を長時間安定して供給できることが重要になります。供給量がわずかに変動すると、測定値や評価結果そのものが変わってしまうためです。
熱式MFCは微少流量域での制御に適しており、安定した供給を行いやすい特長があります。
■ 反応・成膜・培養など、ガス量がプロセス結果に直結する工程の場合
化学反応や細胞培養では、供給されるガス量が変化すると反応速度や生成物が変わります。熱式MFCにより供給量を一定に保つことで、反応の再現性や品質のばらつきを抑えやすくなります。成膜プロセス、触媒評価、バイオリアクターなどで使用されます。
■ 評価試験やリーク試験の再現性を確保したい場合
評価試験では、日を変えても同じ条件を再現できることが重要になります。供給するガス量がわずかに変わるだけでも、試験結果の比較が難しくなるためです。
熱式MFCは質量流量を基準に制御できるため、温度や圧力、ボンベ残量などの条件が変わっても、供給する実際のガス量を揃えやすい特長があります。  
装置例や活用シーンを見たい方はこちら

差圧式(圧力式)との違い

熱式MFCは、流れによって運ばれる熱の変化を利用して流量を検出します。一方、差圧式(圧力式)MFCは、抵抗体を通過時に生じる圧力差と流体の性質の関係から流量を求めて、バルブで制御を行う方式です。
熱式は、微少な流量変化に対する感度が高く、少量のガスを精密に制御する用途に適しています。これに対して差圧式は、圧力差という流体力学的な量をもとに流量を求めるため、用途や設計によっては、比較的広い流量域での安定供給に適する場合があります。
つまり両者は精度の優劣というより、得意とする条件が異なる方式です。用途や運転条件に応じて使い分けることが重要になります。

まとめ

ここまで見てきたように、熱式マスフローコントローラ(熱式MFC)は、流体が運ぶ熱の変化を利用して流量を測定し、設定した供給量になるようバルブで自動調整する流量制御機器です。
気体は温度や圧力によって状態が変化するため、供給量の再現性が求められる場面では、質量流量を基準に考えることが重要になります。熱式MFCは、対象ガスに合わせた校正(ガス換算)を前提に、質量流量を基準とした制御として運用され、微少流量の供給、ガス混合、評価試験などで広く用いられます。
一方で、流量レンジや流体条件によっては差圧式など他方式が適する場合もあるため、用途に応じた選定が重要です。
用途に応じた選び方や他方式との違いをさらに詳しく知りたい方は、以下のページもご参照ください。
▶ マスフローコントローラとは - HORIBA
▶ 差圧式マスフローコントローラとは - HORIBA
▶ マスフローコントローラ 活用事例集 - HORIBA

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