マスフローコントローラ(MFC)とは、ガスなどの流体の“流れる量”を一定に保つための流量制御機器です。
設定した流量になるように自動的に調整を行い、プロセス条件を安定させる役割を持ちます。
一般的な流量計は、温度や圧力の条件によって実際に供給される質量が変わります。MFCは、これらの影響を受けにくい「質量流量」を基準に制御することで、条件が変化しても同じ供給状態を再現できるようにした装置です。
半導体製造装置や研究・評価装置、分析機器など、精密なガス供給が求められる分野で広く使用されています。
流体の「流れる量」は一つではなく、空間の大きさで捉える方法(体積流量)と、流れている質量で捉える方法(質量流量)があります。
一般的な流量計で表示されるL/min や m³/h は体積流量であり、「どれだけの体積が通過したか」を示しています。ただし気体では、同じ体積であっても温度や圧力の条件によって含まれている物質の量は変わります。
これに対して質量流量は、実際に供給された質量を基準に考える指標です。マスフローコントローラは、この質量流量を基準として流量を制御することで、条件が変化しても安定した供給を行えるようにした装置です。
実際の装置ではこの違いが選定や精度に大きく影響します。考え方の詳細は以下のページで解説しています。
▶質量流量と体積流量の違いを徹底解説-流量計の基礎知識 - HORIBA
マスフローコントローラは、流量を測定しながら設定値になるように自動調整する制御機器です。構造は主に「流量センサ」「制御(電気)回路」「制御(コントロール)バルブ」の3つの要素で構成されています。
※検出方式や内部構造は方式・機種により異なります。
※上記は、代表的な分流型熱式MFCの基本構造例です。
流量センサ:現在の流量を検出し、電気信号として制御回路へ送ります。
制御回路:設定流量(目標値)と、流量センサが検出した流量を比較し、設定流量と検出流量が常に一致するように制御バルブへ指令を出します。
制御バルブ:制御回路からの指令に応じて開度を調整し、流量を増減させます。
この調整は常に繰り返されており、外部条件が変化しても流量が一定になるよう自動的に調整されます。
このように、流量を測定した結果をもとに自ら流れを調整する「フィードバック制御」を行う点が、流量を監視する流量計やマスフローメータ(MFM)との大きな違いです。
マスフローコントローラは、「測る → 比べる → 調整する」を連続的に繰り返すフィードバック制御によって、流量を一定に保ちます。
たとえば装置側の圧力が変化した場合、同じバルブ開度でも流れるガス量は変化します。MFCはその結果として変わった「流量」を流量センサで検出し、設定値との差が小さくなるよう制御バルブの開度を調整し続けます。このフィードバック動作により、流量は設定値に近い状態に保たれるよう制御されます。制御がどのように働くかは、以下の動画(※熱式センサの制御イメージ)で直感的に確認できます。
マスフローメータ(MFM)は流量を測定する装置です。一方、マスフローコントローラ(MFC)は、測定結果をもとにバルブを自動制御して流量を一定に保ちます。「流量を一定にしたい」場合はMFC、「流量を監視・記録したい」場合はMFMが基本の使い分けになります。
MFM:測定のみ/制御なし
MFC:測定+バルブ制御(フィードバック)
マスフローコントローラは、流量を一定に保つ装置ですが、その流量の捉え方や制御の考え方にはいくつかのアプローチがあります。
用途や求められる精度、使用条件に応じて適した方式が使い分けられています。
ここでは代表的な方式について概要のみを紹介します。
※各方式の詳しい原理や特長については、個別ページで解説しています。
液体の微少流量制御には、ガスとは異なる専用方式が用いられます。
熱式マスフローコントローラは、流体が熱を運ぶ性質を利用して流量を検出し、その値をもとに制御を行う方式です。
比較的安定した条件での流量制御に適しており、低〜中流量域の用途で広く用いられています。
半導体プロセスや研究・評価用途など、精密なガス供給が求められる分野で使用されています。
原理や特長については、以下のページで詳しく解説しています。
▶ 熱式マスフローコントローラとは
差圧式(圧力式)マスフローコントローラは、流体の流れによって生じる差圧から流量を算出し、その値をもとに制御を行う方式です。
流路内の圧力情報をもとに流量を求めるため、安定した流量制御や高い再現性が求められる用途で用いられます。
原理や特長については、以下のページで詳しく解説しています。
▶ 差圧式マスフローコントローラとは
コリオリ式は、流体が振動する流路を通過する際に生じるコリオリ力を利用して、質量流量を直接計測する方式です。高精度な質量流量計測が可能なことから、液体や大流量の用途などで広く用いられています。
コリオリ式は計測装置(質量流量計=マスフローメータ)を中心とした構成で、バルブを組み合わせて流量制御を行う場合もありますが、一般的なガス用マスフローコントローラとは構造や適用領域が異なります。そのため用途に応じて使い分けられます。
▶ コリオリ式流量計とは?(原理・特徴・用途を徹底解説!) - HORIBA
マスフローコントローラは、さまざまな装置・プロセスにおいて、「ガス供給を安定させたい場面」で使用されます。
装置構成や具体的な利用例は、以下のページで紹介しています。
▶ マスフローコントローラ 活用事例集 - HORIBA
マスフローコントローラは主にガスの流量制御に用いられますが、液体の微少流量制御に対応した製品も存在します。
液体の場合は気泡や気化の影響を受けやすいため、専用の測定方式が用いられます。
▶ 液体微少マスフローコントローラとは?(冷却式流量センサの仕組みと特徴) - HORIBA
マスフローコントローラ(MFC)は、流体の質量流量を基準に流量を一定に保つための制御機器です。
単にガスを流す装置ではなく、供給量を安定させることで装置条件や反応状態の再現性を維持する役割を持ちます。
使用される方式や構成は用途によって異なり、求められる精度や流量範囲、使用するガスの種類、周囲条件などを踏まえて選定されます。
そのため、まずはどのような目的で流量を制御したいのかを整理することが重要です。
MFCの原理や方式の違い、具体的な用途については、それぞれ以下のページで詳しく解説しています。具体的な装置構成や使用例から理解すると、どの方式が適しているかを判断しやすくなります。

