ナガエ動物病院

導入施設の紹介

東京都

ナガエ動物病院

院長 長江 秀之先生

使用機器:動物用自動血球計数装置  LC-662
測定項目:CBC

血球計数装置で行うCBC検査以外に、ヘマトクリット毛細管で測定するヘマトクリット値は血液検査時必ず測定する項目ですが、装置の数値と差がほとんどないことに感心しています。また塗抹を引いてもその数値の違いに違和感がなく信用できます。メンテナンスの簡便さとランニングコストについても、最も大きなメリットといってもいいと思います。

まずは、先生のご経歴についてお伺いいたします。

獣医師になろうとお考えになられたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?


実は、現役時代は文系で経済学部を受けていました。浪人した後はとにかく独立したいと考えるようになり、自分がやりたいことを熟考したら獣医師しか残りませんでした。そういう意味では「獣医師になりたい!」という強い意志があったわけではないのですが、たまたま祖父の代が獣医師で父が薬剤師だったということ、動物がいっぱいいる家庭だったということが、なんとなく医療関係に興味を持ち、獣医師という道を選択したのではないかと思います。今は天職だったと思っています。

最初から小動物臨床に従事しようとお考えでしたか?小動物臨床に対して先生の感じられた魅力をご教授ください。


獣医になろうと思ったときから小動物臨床しか考えていませんでした。正確に言うと、獣医師を志すときには小動物以外の分野があることは知りませんでした。だから最初から小動物一本です。
ワンちゃんネコちゃんは本当の家族だという認識で一緒に生活している人がほとんどです。だから人と同じ医療レベルを望む方が多いので、勉強すればするほど、頑張って治療すればするほど、ご家族に寄り添えば寄り添うほどご家族のためになり、社会の役に立ちます。診察の後に「ありがとうございました」と言って帰られる姿を見ると「ためになって良かった」と実感でき、動物とご家族と社会に役立ったと感じられます。

学会活動や学術活動等運営を含めて、第一線でご活躍されておられますが、そういった活動にご興味をもたれたきっかけは何でしょうか?


私には3人の恩師がいます。大学の指導教授、勤務先の院長(義父)、卒業後様々な分野で育てて下さった先生です。この3人の小動物臨床に対する真摯な姿を見て育ってきたので「勉強する」のは自然なことだとすり込まれました。恩師には「一生勉強」という言葉をいただいたことがあり、この言葉が心に突き刺さったまま生きてきています。

ですから、今でも毎月、講師をお招きしての症例検討会やレントゲン読影会を開催しています。自分で症例データをまとめることで、毎回気がつかなかったこと、わからないことがいっぱい出てきます。それなりに年を経ているので、今は全てを吸収するほどではないですが、一つや二つでも知らないことを見つけることができれば今後の診療の糧となるので、大事な勉強会と思って続けています。この勉強会は勉強熱心な獣医師であれば、誰でも参加できる会にしています。ただ、あまり大きく広めず、経験が浅くてもディスカッションしやすい、勉強しやすい環境作りに努めています。
日々技術も変化し、発展していくので、ちょっと勉強していないと、単純についていけなくなると感じています。まさに日々勉強ですね。3人の恩師に出会わなければ、こんなに勉強したり、本を書いたり、講演させていただくことはなかったと思います。本当に感謝しかありません。

昨今、若い獣医師の方々の獣医師会・学会離れが顕著に見られるようですが、そんな中、日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)を立ち上げて積極的に学会運営や学術活動を実施されてきた先生に、苦労された点ややっていてよかったこと等ございましたらご教授ください。


開業獣医師は自分の病院という狭い社会で生きていて、しかもその長なので視野が狭くなりがちだと言われています。このことは大学時代から聞いていたので避けたかったですし、そもそもみんなと一緒に社会のために活動することは小さな頃から染みついていたので、病院の殻を破って外の世界に出ていくことは私にとって当然のことでした。病院外での活動は病院スタッフや家族には迷惑をかけたかもしれませんが、社会性や知識の吸収という点ではそれ以上に得られることが多かったと思っています。外で得られた知識、学会発表や講演、執筆で得られた知識は当然臨床に役立つし、自分一人で勉強しているだけでは絶対に得られない知識をたくさん得ることが出来ました。
20年あまり日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)の運営をしてきました。本来は、私ども開業医が手弁当で作る勉強会の規模ではなかったですが、大学卒業したての若い獣医師が全国均一のレベルで勉強できる会が少なかったので、恩師と共に作り上げたという感じです。
私たちが目指したのは、あくまでも若い獣医師や学生、愛玩動物看護師向けに勉強する場を提供することです。いろいろな大学を卒業された若い世代の獣医師に同じレベルの高い卒後教育を受けてもらいたい、という思いがありました。実際そのニーズがあったからこそ多くの方に受け入れられたのだと実感しています。新しい会を立ち上げ、新しい風を入れたと思っているので、学生も含め多くの獣医師や愛玩動物看護師に広く活用いただけたら嬉しいです。

ここからは、病院の診察状況について伺います。

まず、犬と猫の来院数と比率はどれくらいでしょうか?


いつもは毎日30-50件くらいの来院があります。10年くらい前から猫が多くなってきている印象はありますが、半分半分だと思います。猫が増えた一方、大型犬をあまり見なくなったという印象です。
COVID-19の影響で来院数に大きな波があり、診療数や診療スタイルが変わってきたと思います。患者さんが集中すると、時間をかけて診察することができなくなってしまうのと、待合室が混んでいる状況を嫌がるご家族も多かったため、完全予約制に変えました。そのためか、最近では診療しやすい状況に落ち着き、ご家族からも好評を得ています。

来院患者数に関して、近年の長寿命化で変化は感じられますか?来院数の増減や増えた疾患等ございましたらご教授ください。


以前は病気になってしかも重症化してからの来院が多かったのですが、今は初期症状での来院が増え、重症例は減ったと感じています。高齢化が進んで心臓病や腎臓病が増えましたが、ともに末期の治療よりも維持管理が増えた印象です。当院では一年を通じて時期ごとに異なる様々な検査サービスを提供していますが、定期的な検査を受ける方がとても増加しています。時にCOVID-19以来、ご家族が自宅にいる機会が増えちょっとした症状を気にするようになったことにより、重症例の減少、軽症での来院が増えました。重症患者が減り、救える命が増えたことは本当に動物にとってもよいことですし、20歳を超えるほど長生きする猫も犬も増えてきたと思います。ただ一方で、以前に増して泌尿器系の結石、胆泥胆石が急増している印象があります。
膀胱結石は、以前はストラバイト結石が多かったですが、近年はシュウ酸カルシウム結石が多くなりました。動物をかわいがり、お野菜を多く与えるのは良いのですが、シュウ酸が多く含まれる野菜には注意が必要です。特にほうれん草、バナナ、ブロッコリー、レタス、サツマイモ等には膀胱結石の原因となるシュウ酸が多く含まれます。多めの水を摂取して何度もトイレに行けばある程度は防げますが、シュウ酸の過剰摂取は避けたほうが良いでしょう。また、ドライよりもウェットのフードを与えるほうが水分を多く摂取できるので、泌尿器系の負担は軽減されるのでは、と思います。

院内で実施されているCBC検査、検体検査についてお聞かせください。

なくてはならない検査と考えられるCBC検査ですが、どのようなタイミングでご使用になられていますか?採血量や塗抹標本を作製するタイミング等もあわせてご教授ください。


CBC検査の使用頻度は、毎日5検体程度になりますので、月検体数は100-150検体だと思います。 発熱がある場合、感染症が疑われる場合、炎症がある場合、貧血が疑われる場合は必ず実施します。問診、身体診察で必要があればご家族に血液検査を勧めます。

通常は2.5mLのシリンジで2mL採血し、0.5mLはEDTA管に入れてCBC検査用とし、残りの1.5mLは血液化学検査用としています。そしてシリンジに残ったEDTA処理をしていない微量の血液で採血現場にて血液塗抹標本を作製します。塗抹は採血した獣医師がその場で診察中に引いています。数値では異常が見られなくても、塗抹でおかしいな?と感じたら、すぐに網赤血球から白血球から色々確認できるためです。塗抹自体は1-2分で引いてしまうので、診察時間に大きく影響しません。
血球計数装置で行うCBC検査以外に、ヘマトクリット毛細管で確認するヘマトクリット値は血液検査時必ず測定する項目です。御社の装置に買い替えて装置差がほとんどないことに感心しています。また塗抹を引いてもその数値の違いに違和感がなく、信用できると思います。

違和感なくご使用いただいていると伺い、大変安心いたしました。その流れで弊社の自動血球計数装置に関してさらに詳細をお聞かせください。

以前ご使用になっていた装置と比べて、運用面で気になった点やよかった点がありましたらご教授ください。


検査機器で大切なのは簡便性(操作とメンテナンス)、迅速性、正確性、価格、設置面積です。LC-662はそのすべてを兼ね備えていると思います。基本的に看護師が測定を行っていますが、測定時間が早くなった、操作がむしろ楽になったと聞いています。さらにメンテナンスの簡便さとランニングコストについては、最も大きなメリットといってもいいと思います。

弊社の白血球分類のデータによって、スクリーニングに役立った症例等ありますか?


白血球総数が正常なのにリンパ球が多い例で異常なリンパ球を見つけられる時が多々あり、また好酸球が多いことから診断に繋がった例があります。白血球総数だけで判断するのは大きな危険があります。

他に特に気にしてご覧になられている項目があればご教授ください。


白血球の山と谷(粒度分布)は毎回確認しており、心配なときには再検査の実施や塗抹をすぐに確認します。粒度分布は見やすいと思います。

最後に、先生のこれからの目標についてお聞かせください。

今度どのような活動に力を入れていきたいと考えていらっしゃいますか?


学会運営に関しての最前線は後輩に譲ったので、今後は縁の下の力持ちでいたいと思います。 臨床に関しては一生勉強です。自分でまだ学びたいことがいっぱいあります。講義したり、本を書いたりして今ある知識を引き続きお伝えしていこうとは思っていますが、まだまだ勉強しなければならない立場だと思っています。勉強し続けることを苦だと感じたことは一度もありません。勉強の手綱は緩めず地道に学んでいくつもりです。

地域に根差している動物病院として、地域に愛される動物病院の在り方について、心がけていらっしゃること等ございましたらご教授ください。


動物医療は人と動物の絆の上に成り立ちます。動物の病気が治ってもご家族が満足しなければその医療は成功とはいえません。その逆もしかりです。獣医師がしっかりと勉強し、動物を治し、ご家族に寄り添えばおのずと結果はついてくると思います。そのため、施設は常にエデュケーショナルホスピタルでありたいですね。患者さんもスタッフも色々学べる環境にするために自分はその両方に対する情報を引っ張っていく立場でないといけないと思っています。また施設の環境作りも大事です。スタッフあっての病院なので、労働基準法のルールをしっかり守った環境作りも徹底しています。

施設インフォメーション

病院名ナガエ動物病院
住所東京都世田谷区桜3-16-7
電話03-3439-0028
ウェブサイトnagae-ah.com

ワンタッチでイヌ・ネコ切り替え。
吸引量10 μL。診断に必要な検査結果を、約70秒で表示します。

製造販売届出番号 :
22動薬第1806号

※本製品は、MICROSEMI Corporationといかなる関係もありません。


診察室には健康診断のお知らせポスターや検査内容・検査項目が書かれたチラシを多く掲示されていました。インタビュー中の細かな質問の際にも、壁に掲示されているポスターやチラシを参考にご説明いただき、ご家族にもこのようにわかりやすく説明されているのだなと感じました。新しい検査項目や治療に関する内容についてもいろいろとご教授いただき、先生がおっしゃる「一生勉強」の意味を肌で感じるインタビューでした。

(2023年9月掲載)

※掲載している情報は取材時点のもので、現在とは異なる場合がございます。


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※本製品は、MICROSEMI Corporationといかなる関係もありません。

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