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動物専用の血球計数装置を開発

1999年5月11日


当社は、動物専用の血球や白血球など8項目を同時自動測定する、血球計数装置(LC-152)を開発、5月24日より販売を開始します。
本装置は、微量(12μl)の血液を前処理せずにそのまま測定、1台で複数の動物種を最も最適な条件で測定できます。動物病院や大学の研究機関を中心に販売します。

動物の場合、人間の細胞と大きさや数が違い、また動物の種類によってもそれぞれ異なりますが、健康診断やある程度重い病気の診断や治療に欠くことのできない基本的な検査として、人間と同様に血液学的検査が行われています。実際の検査としては、あらかじめ、その動物特有の赤血球、白血球、血小板の細胞大きさや数のデータを元に、通常の装置つまり人間用が流用されるケースが普通です。
 一方、小動物であれば検査に必要な採血量の確保が難しいことや、細胞の大きさや数の違いから動物の種類により設定を変えなければならないなど繁雑なため、動物専用装置への需要が、動物病院の設備の高度化に連動して増えています。

今回開発した装置は、通常の人間用に比べ1/10の12μlと、少ない血液で測定できます。しかも、前処理なしに直接測定することができ、熟練を要しません。また、イヌ用、ネコ用と動物の種類による細胞の大きさ、数に基づくデータを記憶させたICカードを装置にセットするだけで最適な設定に装置が自動的になるため、動物の種類の違いごとに設定を変更する手間が軽減できるなど、動物の検査専用の装置です。


〈 主 な 特 長 〉

  1. 検体量は12μlと微量でOK。小動物の測定にも対応
  2. ICカードを差し替えるだけで、瞬時に動物種の変更が可能。動物別ICカードを用意(現在はイヌ用,ネコ用の2種類)。
  3. 採血した血液を前処理なしに直接吸引する自動測定。測定は80秒。特別の技術や知識がいらず、簡単に短時間測定。


〈 用 途 例 〉

  • 動物病院での血液学的検査
  • 大学の研究機関での実験
  • 医薬品の安全性確認や研究実験



〈 標 準 価 格 〉 420万円


〈 販 売 目 標 台 数 〉 初年度 100台


〈 主 な 仕 様 〉
測定・演算項目:8項目/WBC(白血球)、RBC(赤血球)、Hgb(ヘモグロビン)、Hct(ヘマトクリット)、PLT(血小板)、MCV、MCH、MCHC

測定原理:電気抵抗法-WBC,RBC,HCT シアンメトヘモグロビン法-Hgb

検体吸引量:12μl

処理能力:37検体/時 1検体の測定時間は80秒

電源:AC100V, 50/60 Hz
外形寸法:360(幅)×420(高さ)×320(奥行)mm
質量:約 14 kg

参考資料

  • 血液学的検査とは
    例えば血管系(循環器)を道路網とすれば、血液はそこを通る車両に相当します。道路を通過中の車両の種類や数を調べれば、その地域社会の経済的発展度や文化の進展度を推測できるように、血液を測定すれば体の基本的な健康度が分かります。また各種の病気や怪我を治療するにしても、体全体の健康度が分かっていれば、より適切な治療の方針が立てられます。血液学的検査は、健康診断やある程度重い病気の診断や治療に、欠かすことのできない基本的な検査です。
    また血液学的検査が、比較的直接に病気の原因や実態を示す場合があります。動物にただ元気がなく、どこと言って異常が見当たらない場合など、血液学的検査が役に立ちます。もし、貧血(赤血球数の減少)が見られたら、消化器の病気や寄生虫などにより、血液が徐々に消化器から糞便中に排泄されていることが疑われます。これは出血が常に続いているのですが、微量であるために気が付かないのです。この場合は更に消化器検査や寄生虫検査をしなければなりません。白血球は免疫を担当しますが、感染性の病気では、病気の重さに比例して増減する傾向があります。従って白血球数が増え続ければまだ病気は進行中と見られますし、逆に減り始めたら治療が効いていると判断できます。また、食餌性の病気の一つとして、鉄欠乏性貧血がありますが、この最も早い発見のきっかけも血液学的検査です。
    動物病院における検査のもう一つの重要性は、主訴(「お腹が痛い」など、患者が自分の不調さを表現すること)がない条件で診断・治療しなければならないことです。病気の重症度は症状と関係なく進むこともあり、診断や治療に検査が大きな頼りとなります。
  • 動物の血液の特徴
    各種の動物にも人と同じように、赤血球、白血球、血小板の3種類の細胞がありますが、動物種によってそれぞれの大きさや数が異なります。例えばイヌでは赤血球の大きさがヒトの約80%しかなく、その代わり数が多くなっています。ネコの赤血球は更に小さく、ヒトのほぼ半分の大きさです。白血球や血小板についても同様で、種により血液細胞の大きさが変わり、また細胞の数もヒトと違います。

    • 本装置の特長1.「正確な検査結果」
      多くの普及型血球計数装置は、細胞の大きさにより血球の種別を分類し、分類別に計数します。つまり、ある大きさ(閾値・しきいち)を定めて、それより大きければ例えば赤血球であり、それより小さければ血小板である、と認識しています。ところで先に述べたように、動物は種によって細胞の大きさが変わり、閾値をヒトと同一値にはできません。これを無理にヒトと同じ条件で測定すると、誤った検査値となってしまいます。従来よりいくつかの装置が動物血の測定に使われていますが、それらは種によって閾値を変更する手順を必要として、患者から採血しても直ぐには使えませんでした。LC-152は、これらの閾値をスマートカードと呼ばれるICカードに動物種別に記憶させておき、これを差し替えるだけで、瞬時に動物種の変更が可能です。
    • 本装置の特長2.「微量血液で検査可能」
      ヒトの場合の採血量は、最近は減少傾向があるとはいっても、小動物から採血可能な量に比べれば圧倒的に多量です。ヒト用の検査装置はヒトの採血量を基準に設計されているために、動物にとっては非常に多量に相当する血液量を必要とします。装置やメーカーによって異なりますが、ヒト用の大型自動検査装置では一般的に100〜200μlが必要です。LC-152では検体量を12μlと微量化し、小型動物の採血量負担を軽くしました。
    • 本装置の特長3.「熟練者を要しない」
      従来動物用の血液学的検査装置として、コストが安く、その代わりに手数がかかる装置、いわゆる半自動型計数装置が多く使われてきました。半自動型は、血液の前処理や装置への設定、メンテナンスなどの手数と時間さえ惜しまなけば、かえって動物用に適する面もあるのですが、その代わり操作者に高度な知識と熟練が必要であり、技術や勘が検査値を左右します。時として複数の検査が重なった時、処理途中の検体の取り違えが生じたりすることもあります。つまり、忙しかったり、緊急検査が多かったり、また職制が分担化された診療現場には不向きでした
      LC-152では、採血した血液をそのまま吸わせて、後は80秒後の結果を待つだけであり、特別の技術や知識を必要としません。