iCaチェッカで迅速スクリーニング

乳牛の血液中のカルシウムイオン(iCa)が低下する低カルシウム血症は、多くの周産期の乳牛が罹患しているといわれている一般的な疾患です。乳牛の健康状態を良好に保ち、牛乳の生産量を維持するためには、iCa濃度の測定と迅速な処置が求められます。本ページでは、コンパクト型ウシ血液iCaチェッカを用いることで、現場で迅速に血液中のiCa濃度を測定できることを紹介します。

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なぜイオン化カルシウムを測るのか?

出産に伴うiCa濃度の変動

血液中のiCa濃度が大きく変動すると想定される出産前後で乳牛の血液を測定し、スクリーニング用のチェッカとして運用が可能であるか確認を行いました。乳牛の血液は尾部から採血し、抗凝固剤としてヘパリンリチウムを添加しました。測定結果を以下に示しました。図中ではコンパクト型ウシ血液iCaチェッカの2個のセンサで3回ずつ測定した平均値を○で示しており、最大値と最小値をエラーバーで示しています。この乳牛は、出産前には1.25 mmol dm-3であったiCa濃度が、出産直後に0.94 mmol dm-3にまで低下しました。同時に、低カルシウム血症の症状を呈し、それに起因する疾病にも罹患していました。その後、手術、治療を行い、iCa濃度は1.18 mmol dm-3まで回復しました。

Figure 1 ウシ血液iCaチェッカによる出産前後の乳牛の血液の測定結果

Figure 1 ウシ血液iCaチェッカによる出産前後の乳牛の血液の測定結果

血液中のカルシウム存在形態について

血液中のカルシウム(総カルシウム:tCa)は、主に3つの形態で存在しています。tCaのうち、50%がアルブミンなどのタンパク質と、5%がクエン酸やリン酸といった有機酸と結合しており、残りの45%がイオン化した状態(iCa)で存在しています[1]

iCaは神経筋興奮、血液凝固、酵素反応、ホルモンおよび神経伝達物質の放出反応などに寄与しており、生理活性を有するのはiCaのみであるとされています[1, 2, 3]。これが、乳牛の健康状態を把握するために、iCa濃度の分析が必要となる理由です[4]。研究例により多少の違いはありますが、乳牛の血液中のiCa濃度は1.05〜1.30 mmol dm-3が正常値であるとされており、0.9 mmol dm-3以下で低カルシウム血症と診断されています[1]

LAQUAtwin iCaチェッカで迅速スクリーニング

LAQUAtwinシリーズはイオン選択性電極法を採用したコンパクト水質計です。測定部には薄さ約0.8 mmの平面シートを採用しており、測定に必要なサンプル量が0.3 mLという微量測定が可能となります。片手で持ち運べるサイズであるため、現場で簡易にイオン濃度を測定することができます。

測定フロー

外形寸法

おわりに

コンパクト型ウシ血液 iCaチェッカは平面センサを用いることで、現場で簡単に血液中のiCa濃度を測定することができます。ご不明点・ご質問等ございましたら以下「お問合せ」よりご連絡ください。

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参考文献

[ 1 ] 加藤敏英.カルシウム輸液剤の投与法を再考する.獣医輸液研究会会誌.2004,4(1),p. 1-4
[ 2 ] 桧山尚子.乳牛におけるイオン化カルシウムの動態.広島県獣医学会雑誌.2006,21,p. 4-7
[ 3 ] 鈴木一由.乳熱の輸液.Fluid Therapy in Large Animal Practice. 2011,11(1),p. 14-16
[ 4 ] R. C. Naves. et al. Method comparison and validation of a prototype device for measurement of ionized calcium concentrations cow-side against a point-of-care instrument and a benchtop blood-gas analyzer reference method. J. Dairy Sci. 2017, 101, p. 1334-1343
[ 5 ] 金井正光ほか.臨床検査法提要.金原出版. 2010

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