次期排出ガス規制“Euro 7”とは

Euro 7は、SPN10をはじめとする規制成分の追加・強化、ブレーキエミッション・バッテリー耐久などの新たな規制が盛り込まれた欧州の次期排出ガス規制です。Euro 7の概要をご紹介します。

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目次

新たな排出ガス規制“Euro 7” 策定の背景

2019年12月、欧州委員会は、欧州グリーンディールを最優先政策として発表しました。2050年までに、ヨーロッパが世界で最初の気候中立大陸※1になることを目指し、各産業セクターでロードマップを定めました。また、具体策として、2030年までに少なくとも55%のGHG排出削減を実現するための政策パッケージ Fit for 55※2を提案し、多くの法案が採択されてきました。

運輸産業においては、Fit for 55 packageの1つ、乗用車/軽商用車 のCO2排ガス規制の改正法が2023年4月に採択されました※3。また、2024年5月には重量車のCO2排ガス規制の改正法案※4が採択され、平均CO2排出量は年々強化される流れにあります。

こうした中、次期欧州排出ガス規制Euro 7が採択され、2024年5月8日にEU Regulation2024/1257として公布※5されました。2022年11月に発表された欧州員会の初期案※6、では、LDV(Light Duty Vehicles ; 乗用車/軽商用車)・HDV(Heavy Duty Vehicles ; 重量車)の規制を一本化することに加え、燃料・技術によらない規制にすることや、Real World Emissionの運転範囲の拡張が提案されていましたが、最終的には、LDVの排ガス規制は初期案からは緩和されたものとなりました。

※1 気候中立:温室効果ガスの排出が実質ゼロであること
※2 Fit for 55 - The EU's plan for a green transition - Consilium (europa.eu)
※3 EUR-Lex - 32023R0851 - EN - EUR-Lex (europa.eu)
※4 Heavy-duty vehicles: Council signs off on stricter CO2 emission standards - Consilium (europa.eu)
※5 Regulation - 2024/1257 - EN - EUR-Lex (europa.eu)
※6 Euro 7 standard proposal (europa.eu)

Euro 7 排出ガス規制の主な変更点

LDVのEuro 6からの主な変更点

LDVの排出ガス規制は、現行規制であるEuro 6に以下の項目を変更・追加しています。

  • SPN23(粒子径23nm 以上の固体粒子数)からSPN10(粒子径10nm 以上の固体粒子数)に変更
  • PM規制・PN規制を、直噴に限らないガソリン車すべてに拡張

HDVのEuro VIからの主な変更点

HDVの排出ガス規制は、現行規制であるEuro VIに以下の項目を変更・追加しています。

  • SPN23からSPN10に変更
  • CH4(メタン)、N2O(亜酸化窒素)、NMOG(非メタン有機ガス)が新たな規制成分として追加
  • NH3が濃度規制から質量規制に変更
  • HCHOの規制化については継続して検討を行う

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蒸発ガス試験の主な変更点

LDVの燃料蒸発ガスは規制値が強化されます。当初案で提案されていた給油時の蒸発ガス規制は最終的には、なくなりました。

Euro 7 新たな規制

Euro 7では、世界で初めてとなるテールパイプ・燃料蒸発ガス以外の規制として、ブレーキエミッション・タイヤ摩耗を規制対象にしています。さらに、消費者の信頼を高めるため、バッテリーの耐久性能も新たに規制対象としています。また、On-Board Monitoringが要求されます。

ブレーキエミッション(ブレーキ粉塵)

ブレーキエミッションについては、LDVのPM10に対してのみ、規制値が設定されています。2030年以降の規制値には、HDVへの規制や、PN規制も追加される予定です。LDVの試験法には、UN GTR(Global Technical Regulations)No.24※7が採用されます。本GTRでは、PM10に加え、PM2.5、SPN10、TPN10の計測法が定められています。

※7 Global Technical Regulations (GTRs) | UNECE

PM10  :粒子径が10 μm以下の微粒子の質量
PM2.5 :粒子径が2.5 μm以下の微粒子の質量
SPN10:粒子径が10 nm より大きい揮発性粒子を含まない固体粒子数エミッション
TPN10:粒子径が10 nm より大きい揮発性粒子を含んだ総粒子数エミッション

今後の検討の中で、ブレーキエミッション(ブレーキ粉塵)・タイヤ摩耗率(タイヤ粉塵)の規制成分・規制値・計測手法の詳細が検討されます。

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タイヤ摩耗率試験

タイヤ摩耗率規制は、試験前後のタイヤの重さの差分を摩耗量とする規制となります。規制値については現在検討中ですが、試験法についてはUNR(UNECE Regulation)No.117 のリアルワールド試験法を採用することが予定されています。

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バッテリー耐久規制

Euro 7では、電気自動車への消費者からの信頼性向上を目的として、バッテリーの耐久性に関する性能要件が追加されます。LDVのバッテリー耐久試験法には、UN GTR No.22※8が採用されます。

※8 Global Technical Regulations (GTRs) | UNECE

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OBM(On-board Monitoring)

Euro 7では、OBMシステムを用いて排出ガスの挙動を常時監視します。対象成分は、NOx, NH₃, PMで、車載センサーなどによって計測されます。排出ガス超過を検知すると、ドライバーへ警告して修理を促します。また、当局がOBMのデータを集め、ライフタイムにわたる排出ガス適合性の監視を行うとしています。

Euro 7の今後の動向

Euro 7の規制開始時期は下記の通りです。
LDV;新規型式認証 2026/11/29 継続生産車 2027/11/29
HDV;新規型式認証 2028/5/29  継続生産車 2029/5/29
C1 class タイヤ 2028/7/1, C2 class タイヤ 2030/4/1, C3 classタイヤ 2032/4/1
少数生産車(LDV); 2030/7/1  少数生産車(HDV);2031/7/1

また、今後、関係する実行法(implementing acts)が採択される予定で、2025/5/29までにLDV、2026/11/29までにHDVの実行法が採択される見込みです。

Euro 7 計測ソリューション

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