\はかせのひとこと/
購入検討中の方、予想値と比べて値がずれる方に必見じゃ!
水溶液中の測定対象イオン濃度を定量する分析方法の一つに、イオン電極法があります。
イオン電極は測定対象イオンに対する選択性に優れておりますが、測定対象イオンと性質が似ている他のイオンにも応答する場合があります。測定対象イオンと共存すると、測定対象イオン濃度の測定に影響を与えるイオンを「妨害イオン」と呼びます。
イオン電極法においては、このような妨害イオンの影響をよく知ったうえで測定を行うことが重要です。
今回は一例として、複合型塩化物イオン電極 6560S-10Cを使用し、塩化物イオンに対して妨害イオンの一つである臭化物イオンを添加した場合における測定値への影響について紹介します。
塩化物イオン標準液100 mg/Lと1000 mg/Lで校正し、基準サンプル(塩化物イオン濃度:100 mg/L)、サンプルA(塩化物イオン濃度:100 mg/L、臭化物イオン濃度:3 mg/L)、サンプルB(塩化物イオン濃度:100 mg/L、臭化物イオン濃度:10 mg/L)、サンプルC(塩化物イオン濃度:100 mg/L、臭化物イオン濃度:30 mg/L)を180秒間測定しました※1,2。
180秒後の各サンプル測定結果は、測定サンプルの濃度に対する測定値(mg/L)と測定誤差(%)※3として表1に示しました。
※1: 使用した標準液と測定サンプルはイオン強度調整剤(1 mol/L 硝酸カリウム水溶液)を50:1(標準液または測定サンプル:イオン強度調整剤)になるようそれぞれ添加しました。恒温槽を用いて25℃に調整し、スターラーを用いて標準液または測定サンプルを攪拌した状態で校正および測定しました。
※2: 基準サンプル及びサンプルA、B、Cは、塩化ナトリウムおよび臭化ナトリウムを用いて調製しました。
※3: 測定誤差百分率 {測定誤差(サンプルイオン濃度と測定値の偏差)のサンプルイオン濃度に対する割合}
測定中の様子
表1に各サンプルの測定開始から180秒後の測定結果を示しました。図1に各サンプル測定した際の指示経時変化を、基準サンプル(黒実線)、サンプルA(青実線)、サンプルB(赤実線)、サンプルC(緑実線)で示しました。
基準サンプルでは、測定開始直後から測定値が安定しており、実際の塩化物イオン濃度である100 mg/Lに近い値を示しました。一方で、妨害イオンである臭化物イオンが含まれるサンプルA、サンプルB、サンプルCでは測定値が安定せず、測定開始から180秒経過後の測定値は測定誤差が100%以上ありました。塩化物イオン選択性電極が塩化物イオンに加えて添加した臭化物イオンにも応答したため、サンプルA、サンプルB、サンプルCの測定値と実際の塩化物イオン濃度との間で差が生じる要因となりました。
また、妨害イオンが含まれるサンプルA、サンプルB、サンプルCを比較すると、サンプルA<サンプルB<サンプルCと、妨害イオン濃度が高くなるにつれて値が安定するまでにかかる時間が長くなり、測定誤差は大きくなりました。妨害イオン濃度が高くなることで、イオン電極に反応する妨害イオン量が多くなり、その結果、応答速度の低下や測定誤差が大きくなる要因となりました。
以上のように、イオン電極法によるイオン測定においては、サンプル中に妨害イオンが含まれると測定誤差が大きくなることから、サンプル中の妨害イオンの有無に留意して測定することを推奨します。
表 1 各サンプルの測定結果(180秒後)
図1 塩化物イオン測定値の経時変化
\はかせの総括/
妨害イオンがあると測定値がずれるのぉ。
イオン測定をする前に、サンプルの成分はしっかりチェックすることが大事じゃ!