pHを自動化するなら「洗浄」がキーポイント!
~オートサンプラーの洗浄機能を徹底解説~

pH測定を自動化する際、多くの方がまず気にするのは「自動化によって再現性のある測定が実現できるかどうか」ではないでしょうか。 しかし実は、洗浄工程も自動化の成否を大きく左右する重要なポイントです。
測定後の電極表面には、わずかであってもサンプルが残留しています。それをしっかり洗い流せていないと、次の測定に前のサンプルが混入し、正確な測定ができなくなる可能性があるからです。

 

洗浄の自動化をすると、安定した測定が可能に

では、洗浄を自動化することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?
最大の利点は、「人によるばらつきをなくせる」こと。 手作業による洗浄は、作業者のクセや判断に左右されやすく、誰が行うかによって洗浄の質が変わってしまうこともあります。しかし自動化すれば、あらかじめ設定された条件に基づいて常に一定の手順で洗浄が行われるため、均一で再現性の高い結果を得ることができます。

洗浄を自動化すればどのケースでもうまくいくとは限りません。サンプルの性質を考慮した上で、適切な洗浄方法と洗浄時間を設定することが重要です。
今回のコラムでは、オートサンプラーの洗浄機能について、構造や特徴を分かりやすく解説します。
さらに、粘性の高いサンプルの代表例としてシャンプーとコンディショナーを用い、洗浄機能を検証した結果もご紹介します!

オートサンプラーの洗浄機能は2種類から選択できます。

①オーバーフロー洗浄

二重の構造になっており、
電極が上下動を繰り返しながら、内側の筒に常に新しい水が入ることで洗浄します。

②シャワー洗浄

電極の上からシャワーを当て、さらに電極洗浄槽内のスポンジでこすり洗いをします。
シャワーだけでなく、スポンジで洗浄を行うことでより高い洗浄力があります。

さらに便利なカスタマイズ機能!

洗浄シーケンスは、順番や時間、回数などを自由に設定できます。例えば、シャワー洗浄を2回連続で実施したり、シャワー洗浄後にはエアフローを行うなど、多彩なカスタマイズが可能です。

実際にシャンプーとコンディショナーで洗浄してみた!

ここからは実践編!
洗浄方法やシーケンスを工夫してどこまで洗浄できるかを確認するため、高粘度サンプルのシャンプーを用いて2種類の洗浄パターンを比較しました。電極が洗浄できているかどうかは、洗浄後にpH標準液を測定しその値で判断します。
 

 洗浄方法シーケンス設定
パターン①オーバーフロー洗浄(10秒)洗浄 → ふき取り
パターン②シャワー洗浄(20秒) + エアフローシャワー洗浄 ×2回 + エアフロー ×2回

パターン① オーバーフロー洗浄

1つ目のサンプル(今回はコンディショナー)を置き、2つ目にpH7の標準液を置いています。
標準液は洗浄できているか確認するために置いています。

洗浄の流れ

サンプル(コンディショナー)を測定 ▶ オーバーフロー洗浄(電極を上下に動かしながら10秒間洗浄)▶ ふき取り処理 ▶ pH標準液を測定

<洗浄後の評価>
電極にほとんど汚れが残った状態です。
その後、洗浄確認用のpH6.86の標準液を測定すると、理論値の6.8とはかけ離れた値が表示されました。

 1回目測定2回目3回目平均値
コンディショナー3.486(21.1℃)3.485(21.1℃)3.491(21.1℃)3.487(21.1℃)
標準液3.628(21.0℃)3.644(21.0℃)3.656(21.0℃)3.643(21.0℃)

 

コンディショナーのような粘性の高いサンプルは、電極に成分が付着しやすく、単純な流水洗浄だけで除去しきれないということじゃな。

パターン② シャワー洗浄+エアフロー

続いて、洗浄条件を最適にした場合です。
シャワー洗浄を20秒に延長し、シャワー洗浄とエアフローを各2回組み込んでいます。

洗浄の流れ

サンプル(コンディショナー)を測定 ▶ 電極の上からシャワー洗浄 ▶ 洗浄槽内のスポンジでこすり洗い ▶ 電極を上方に移動させながらエアフローで水滴除去 ▶ 同じプロセスをもう一度繰り返し(合計2回)▶ pH標準液を測定

<洗浄後の評価>
見た目は、汚れが取れているのがわかります。
見た目だけでなく実際に汚れを取れているか、標準液で確認すると、先ほどは値が出ていませんでしたが、今回は6.8付近の正しい値が表示されており、洗浄が問題なく行えたことがわかります。

 1回目測定2回目3回目平均値
コンディショナー3.558(22.4℃)3.553(22.4℃)3.550(22.4℃)3.554(22.4℃)
標準液6.709(22.4℃)6.743(22.4℃)6.770(22.4℃)6.741(22.4℃)

シャワー洗浄とスポンジによるこすり洗いと、エアフローで水滴を確実に除去することで、電極表面の洗浄効果が大幅に改善したぞ。 今回は標準液での測定結果も良好で、洗浄が適切に行われたことが分かる。綺麗に洗浄できてスッキリ!

 おまけ

泡立つようなサンプルは、洗浄できるのでしょうか?
こちらは、シャンプーを測定した例の動画です。
シャワーの水流、スポンジの使用、エアーの混入など、通常であれば泡が発生しやすいような環境下での洗浄を行っていますが、適切な洗浄条件を設定することで、泡立つことなくスムーズに洗浄ができています。

今回のコラム、いかがでしたか?
オーバーフローでは落としきれないサンプルをお使いの場合は、シャワー洗浄をおすすめします。今回の例のように粘性が高く、オートサンプラーでは洗浄できなさそうとあきらめていたサンプルでも、シャワー洗浄で工夫することで解決できる可能性があります。
弊社では、お客様のサンプルについて最適な洗浄方法をご提案させていただく オンラインデモを実施しています。コンタミでお困りの方や、電極の洗浄頻度が高く作業工数がかかっておられる方、ご興味がございましたら、ぜひ弊社のオンラインデモサービスをご活用ください。

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