\はかせのひとこと/
水道水・純水を測定する方に必見じゃ!
ガラス電極によるpH測定法は、ガラス電極と比較電極の2本の電極の間に生じた起電力(電位差)を測定することで、溶液のpHを求める方法です。 またこの方法は、一般的に液間電位※1の発生を抑制するため高濃度KCl内部液をサンプル中に流出させていることから、純水のような低電気伝導率サンプルの測定では、流出する高濃度KClによるサンプルへの影響が大きく指示値の安定までに時間を要します。
そこで、純水を測定する際にpH電極からの流出物質の影響が少ない9600-10D※2を用いることで、値のふらつきを抑えられ、応答性の良い測定が可能となります。
本テクニカルノートでは、スタンダードpH電極9615S-10Dと、イオン液体塩橋搭載pH電極9600-10Dを使用し、水道水、純水※3を測定した結果を紹介します。
※1: 比較電極の液絡部で発生する電位で、性質の異なる溶液が接するところで発生します。
※2: ゲル化イオン液体塩橋(特許第4733588号(日本))を採用し、サンプルへの影響が従来の1/10000 以下(サンプルへの溶出物質(従来:3M以上のKCl、PUREIL 電極:イオン液体)の濃度比となります。
※3: 水道水の電気伝導率は100 µS/cm程度、純水の電気伝導率は1 µS/cm程度です。
9615S-10D、9600-10Dを標準液pH 4.01、pH 6.86、pH 9.18で3点校正を行い、水道水と純水を600秒間測定しました。測定は25.0℃条件下、攪拌状態で行いました。
実験の結果を図1、2に示しました。図1の水道水の測定では、9615S-10Dと9600-10Dともに最終指示値は同程度でしたが、9615S-10Dは値が安定し始めるまでに420秒程度要したため、値が十分に安定するまで待ち、安定したときの値を読み取る必要があります。これに対して、9600-10Dは浸漬後30秒程度で値が安定し、その後もふらつきはほとんどなく安定していました。9600-10Dの安定した結果は、流出物質の影響が少ない仕様の効果によるものと示唆されます。
また図2の純水の測定では、9615S-10Dは経時的にpHが変化し、本データでは600秒以上の時間が必要であることがわかりました。一方で、9600-10Dは480秒程度で値が安定しました。純水は、水道水よりも電気伝導率が低いため、両電極とも指示値が安定するまでに時間を要しました。純水測定においても、値が十分に安定するまで待ち、安定したときの値を読み取る必要があります。
以上のことから、水道水は、一定の時間は要するものの、9615S-10D、9600-10Dのいずれの電極でも測定できることがわかりました。一方で、純水のような低電気伝導率サンプルの測定には、応答性と指示値の安定性の観点から9600-10Dを推奨します。
(注記)測定値は、電極ガラス表面の荷電の状態で酸性側・アルカリ性側から始まる場合があります。
電極状態、測定条件により上記のような測定結果にならない場合もございます。
図1 水道水のpH測定値の応答性
図2 純水のpH測定値の応答性
\はかせの総括/
水道水や純水は、時間をかけて測定する必要がありそうじゃのぉ。
より早く測定したい場合は、9600-10Dがおすすめじゃ!
PURE IL 9600-10D イオン液体塩橋搭載pH電極
※記載されている内容は改良のため、予告なく変更することがあります。