\はかせのひとこと/
発泡サンプルのpH測定をする方に必見じゃ!
ガラス電極によるpH測定法は、ガラス電極と比較電極の2本の電極の間に生じた起電力(電位差)を測定することで、溶液のpHを求める方法です。
pH測定において、ガラス電極先端のガラス応答膜または比較電極の液絡部※1に気泡が付着すると、指示値のふらつきや再現性の低下を引き起こします。 そのため、測定中においては電極を揺らすことで付着した気泡を取り除く必要があります。
しかし炭酸水などの気泡が継続的に発生するサンプルを測定する場合、絶えず気泡が電極応答部に付着してしまいます。このような発泡サンプルを測定する際、事前にアルカリ溶液を用いて気泡の足場となるガラス応答膜表面の小さなキズ※2を除去することにより、安定した測定をすることが可能です。
今回はスタンダードToupH 電極9615S-10Dを使用し、発泡サンプルに対するアルカリ処理の効果を紹介します。
※1: 比較電極内部とサンプルの通を取るための内部液が流出する微細な孔です。
※2: 気泡が発生しないサンプルにおいては測定に影響はありません。
電極を標準液 pH 4.01 と pH 6.86 で2点校正し、炭酸水に浸漬後、120秒間電極応答部に付着する気泡の観察とpH測定をしました。アルカリ処理として、エタノールに水酸化カリウムを飽和させた溶液を調整※3し、同電極の先端を10分間浸漬しました。電極を純水で洗浄し、再び標準液 pH 4.01 と pH 6.86 で2点校正し、炭酸水に浸漬後、120秒間電極応答部に付着する気泡の観察とpH測定をしました。
※3: 10 mLのエタノールに1 g 程度の水酸化カリウムペレットを加え、30分~60分程度、室温にて撹拌して飽和溶液を作製しました。
アルカリ処理前後における炭酸水浸漬時の電極先端部を写真1に示しました。処理前では気泡が多量に付着していましたが、アルカリ処理により気泡の数が顕著に減少していることがわかります。
図1に炭酸水のpH測定値の経時変化を示しました。処理前では常時指示値のふらつきが見られ、特に40秒、90秒付近では大きな変動が確認されました。これはガラス応答膜や液絡部の一部、または大部分を気泡が覆ってしまっていることに起因しています。一方、アルカリ処理後では気泡の付着が抑えられたため、測定値は安定な挙動を示しました。
このように、アルカリ溶液でガラス応答膜表面の小さなキズを除去することで、発泡サンプルの安定した測定が可能となります。 発泡サンプルの測定時に値のふらつきが確認された場合は、測定前に電極先端部のアルカリ処理を推奨します。
なお、洗浄液#230(部品番号: 3200530494)での処理(電極先端部をA液に3分間、B液に12時間~24時間浸漬)においても同様の効果が得られることを確認しました。
写真1 炭酸水浸漬時の電極先端の様子
図1 炭酸水の pH 測定値の経時変化
\はかせの総括/
発泡サンプルを測定するときは、あらかじめ電極をアルカリ処理することで、安定した測定ができるのじゃ!
9615S-10D スタンダード ToupH 電極
標準液・比較電極内部液・洗浄液
