\はかせのひとこと/
精度良くイオンを測定したい方、校正時にどの標準液を使えばいいか迷っている方に必見じゃ!
水溶液中の測定対象イオン濃度を定量する分析方法の一つにイオン電極法があります。
イオン電極を用いたイオン測定を行う際、前準備として校正が必要です。 校正とは少なくとも 2 種の既知濃度の測定対象イオンを含有する水溶液 (標準液) を用いて、あらかじめ各標準液のイオン濃度における応答電位を測定して図 1 の点線または 1 点鎖線で示すような検量線を作成する操作です。
校正は測定誤差を小さくする (精度よく測定する) ために測定サンプルの測定値近傍のイオン濃度の標準液を準備し、測定サンプルの測定値を挟み込むように校正することが一般的です。
今回は複合型塩化物イオン電極 6560S-10C を使用し、測定サンプルの測定値を挟み込むように校正した場合と、挟み込まない校正をした場合における測定値への影響について紹介します。
① 1 mg/L の塩化物イオンサンプルに対して、挟み込むように校正できる 2種の低濃度塩化物イオン標準液 0.5 mg/L と 5 mg/L にて校正し 1 mg/L の塩化物イオンサンプルを測定、または校正結果をそのまま使用し校正範囲を超えるイオン濃度のサンプル 500 mg/L を測定しました※1。
両測定結果はサンプル濃度に対する測定値 (mg/L) と測定誤差 (%)※2 として表1に示しました。
② 500 mg/L の塩化物イオンサンプルに対して、挟み込むように校正できる 2 種の高濃度塩化物イオン標準液 100 mg/Lと 1000 mg/L にて校正し 500 mg/L の塩化物イオンサンプルを測定、または校正結果をそのまま使用し校正範囲を下回るイオン濃度のサンプル 1 mg/L を測定しました※1。
両測定結果は測定サンプルの濃度に対する測定値 (mg/L) と測定誤差 (%)※2として表1に示しました。
※1:①、②に用いた標準液と測定サンプルはイオン強度調製剤 (1 mol/L 硝酸カリウム水溶液) を 50:1(標準液または測定サンプル : イオン強度調製剤) になるようそれぞれ添加しました。恒温槽を用いて 25℃に調整し、スターラーを用いて標準液または測定サンプルを攪拌した状態で校正および測定しました。
※2: 測定誤差百分率{測定誤差 (サンプルイオン濃度と測定値の偏差) のサンプルイオン濃度に対する割合}
測定中の様子
表 1 に評価内容①、②の校正後の各サンプル測定結果を示しました。
図 1 に評価内容①の低濃度校正 (0.5 と 5 mg/L:●) における検量線 (破線)、評価内容②の高濃度校正 (100 と 1000 mg/L:▲) における検量線 (1 点鎖線) および各検量線を用いた測定点 (表 1、図 1 の点参照) を示しました。
黒線は塩化物イオン電極の塩化物イオン濃度に対する電位応答の推定挙動を示します。この電位応答挙動は 5 mg/L を下回る付近から電位応答を曲がり始め、直線では無くなります。 そのため、低濃度校正における検量線 (破線) は高濃度側で、高濃度校正における検量線 (1 点鎖線) は低濃度側で黒線で示す塩化物イオン電極の塩化物イオン濃度に対する電位応答挙動よりズレが大きくなるため、サンプルの測定値を挟み込まない校正をした場合の測定値は大きな誤差が生じました。
以上の結果から、サンプルの測定値近傍のイオン濃度の標準液を準備し、サンプルの測定値を挟み込むように校正することで測定誤差が小さくなる (精度良く測定できる) ことが実測定でも明らかで、約 10 倍濃度差もしくはそれ以下の標準液を準備し校正することを推奨します。
表 1 評価内容①、②の校正後の測定サンプルの結果
図1 イオン濃度と電位の関係
\はかせの総括/
青破線の低濃度側と赤1点鎖線の高濃度側が傾きが違うのぉ。サンプル値を挟み込む標準液で校正することをおすすめするぞ!
