『2010堀場雅夫賞』受賞者決定/授賞式は10月15日

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社外の「分析計測技術」研究者の奨励賞

当社は、国内外の大学または公的研究機関の研究開発者を対象とした、「分析計測技術」に関する研究奨励賞『堀場雅夫賞』の2010年受賞者をこのほど決定しました。

この賞は2003年に創設され、7回目となる今回の選考テーマは、“人間の健康・安心・安全に影響する空気中の拡散物質のノンサンプリング計測”です。本年4月から5月にかけて公募し、海外含め22件の応募がありました。その分野で権威の先生など7名で構成する審査委員会が、将来性や独創性、ユニークな計測機器への発展性に重点を置いて評価し、以下の3名に受賞者を決定しました。

受賞記念セミナーならびに授賞式は学究界からの参加者もご招待し、10月15日(金)京都大学 芝蘭会館にて行います。

 

受賞者と受賞研究内容

(2010堀場雅夫賞受賞者)

  • 財団法人レーザー技術総合研究所研究員 染川 智弘(そめかわ としひろ)氏
    『高強度フェムト秒レーザーを用いた白色光ライダーの開発』
     
  • 米国 プリンストン大学助教 ジェラード・ワイソッキ氏
    (Dr. Gerard Wysocki, Princeton University)
    『レーザー分散効果を応用した大気中の反応性化学種の高感度その場計測技術』
    (「Ultra-sensitive in-situ molecular detection of reactive chemicals based on laser dispersion effects 」
     
  • 首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 梶井 克純(かじい よしずみ)氏
    『ポンプ・プローブ法によるOH反応性測定と大気質診断法の開発』

 

堀場雅夫賞について

本賞は計測技術発展のため、2003年5月に当社創業者の名前を冠して創設した、社外対象の研究奨励賞です。毎回、対象テーマを計測の要素技術から選定し、単なる助成金にとどまらず受賞研究の実用化を支援するのが特徴です。本年は「人間の健康・安心・安全に影響する空気中の拡散物質のノンサンプリング計測」をテーマとし、4月1日から5月31日までの公募で計22件(国内11件/海外11件)の応募がありました。

2010年の受賞者3名は、その応募の中から、画期的でユニークな分析・計測技術の創生が期待される研究開発に従事し、将来の分析計測技術発展の担い手になるという観点で、実績と将来性を審査委員会で審議し選考されたものです。

 

授賞式について

本賞の授賞式は、創業者堀場雅夫の母校で、創業当時「産学連携」の礎となった京都大学の施設内(芝蘭会館)で行います。受賞者による講演やポスターセッションを通じて、研究内容を広く社会にアピールする予定です。

 

日程:2010年10月15日(金)
場所:京都大学芝蘭会館
(京都市左京区吉田牛の宮11-1/TEL 075-771-0958)

 

受賞者ご紹介

  • 財団法人レーザー技術総合研究所 研究員 
    染川 智弘氏 (30歳)
    「高強度フェムト秒レーザーを用いた白色光ライダーの開発」
    高強度フェムト秒レーザーを希ガスに集光する事で得られる紫外から赤外領域に及ぶ超広帯域スペクトルを有するコヒーレント白色光を用いて、大気環境を計測する白色光ライダーを開発した。この技術は、散乱の波長依存性を利用した大気中エアロゾルの粒径分布の推定、偏光特性を利用した黄砂の識別、赤外域を利用した二酸化炭素の濃度計測などの広域かつ多種多様な環境計測に応用できる。白色レーザー光源のコンパクト化にも取り組み、実現性が高い計測技術として期待される。
     
  • 米国 プリンストン大学 助教  
    ジェラード・ワイソッキ氏 (35歳)
    (Dr. Gerard Wysocki, Assistant Professor, Princeton University)
    「レーザー分散効果を応用した大気中の反応性化学種の高感度その場計測技術」
    「Ultra-sensitive in-situ molecular detection of reactive chemicals based on laser dispersion effects」
    試料大気に磁場をかけ、量子カスケードレーザー(QCL)を用いて常磁性の分子をファラデー回転分光で検出するという、斬新かつ画期的な技術を開発した。この手法によりバックグラウンドシグナルを低減させ、一酸化窒素(NO)0.38ppbの検出感度を持つ技術の確立に至った。この技術を応用して小型化したワイヤレス微量ガスセンサを用いて、広い地域をカバーする観測ネットワークの試験を実施している。高感度のガス分析計の基礎技術の応用だけでなく、広域モニタリングに発展する可能性が期待される。
     
  • 首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 教授  
    梶井 克純氏 (51歳)
    「ポンプ・プローブ法によるOH反応性測定と大気質診断法の開発」
      反応性大気成分ガスの網羅的な観測を行なう代わりに、OHラジカル反応性を測定することで同様の情報を引き出す、新しい方法を提案した。大気中のOHラジカルはほとんどの化学物質と高い反応性を示すため、大気中での直接的な検出と測定は困難である。本研究では、紫外線パルスレーザーを試料大気に照射してOHラジカルを生成させ、その減衰挙動をレーザー分光で観測することで、反応性物質の総量に相当する情報を得ることができるシステムを構築した。東京郊外で本手法による大気観測を実施し、同時に100種類もの化学成分ガスを測定し、それぞれの測定値を比較した結果、25~50%もの未知なるOH反応性物質の存在が確認され、大気のオキシダント生成能を評価する新しい概念を提案した。
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