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色々な赤外線ガス分析計と特長

現在、HORIBAは用途別に最適化された赤外線ガス分析計を販売しています。NDIRを使用した分析計の動作原理で分類すると8種類の方式があります。(2022年時点)。
赤外線ガス分析計をNDIRの特長である変調部の機構で大きく2つに分類し、各方式を表にまとめています。(表3,表4)
ここでは代表的な方式(方式1,2,4,6,7)の特長と構造・動作原理を説明します。

 

【光断続変調方式】

表3:HORIBAのNDIRを用いた赤外線ガス分析計の方式一覧(光断続変調方式)

【流体変調方式(クロスモジュレーション)】

表4:HORIBAのNDIRを用いた赤外線ガス分析計の方式一覧(流体変調方式)


【光断続変調方式】

変調機構に回転セクタ―を使用した方式(1-10Hz)

方式1:ダブルビーム方式(コンデンサーマイクロホン)

図11:ダブルビーム方式(コンデンサーマイクロホン)分析計の構造と動作原理

図11:ダブルビーム方式(コンデンサーマイクロホン)分析計の構造と動作原理

■特長と構造・動作原理 (図11)

これまでの赤外線ガス分析計で説明した方式です。(赤外線ガス分析計の構造と動作原理
高速応答・高感度が特長です。

赤外線光源を2つ使用した方式(ダブル)で感度の高い順番は一般的には下記の通りです。

  1. クロスモジュレーション方式(ダブルビーム)…方式6
  2. ダブルビーム方式(コンデンサーマイクロホン)…方式1
  3. ダブルビーム方式(フローセンサー)    …方式2

方式2:ダブルビーム方式(フローセンサー)

図12:ダブルビーム方式(フローセンサー)分析計の構造と動作原理

図12:ダブルビーム方式(フローセンサー)分析計の構造と動作原理

■特長と構造・動作原理 (図12)

特長

集光ブロックとフローセンサーの組み合わせで外部影響軽減(特に振動)、高感度、小型化を実現します。

 

構造・動作原理

試料セル、比較セルで吸収された各々の赤外線が半月型の回転セクターにより交互に集光ブロックに集められ、光学フィルターで透過されて測定成分用主検出器に入ります。検出器内部の前室・後室ではそれぞれの赤外線量に応じた赤外線吸収が発生し、それぞれの室内温度が上昇します。
同時に両室の温度差による封入ガスの流れが発生し、フローセンサーを通過します。フローセンサーで測定された流量はガス濃度と比例するため、ガス濃度検出信号として信号処理部へ送られます。

回転セクタ―の動きに同期してフローセンサーを通過するガスの方向は切り替わります。測定成分用検出器内での具体的な動作は次の通りです。

比較セルの赤外線が入光→前室の封入ガスが後室へ流入→回転セクターが回転→試料セルの赤外線が入光→後室の封入ガスが前室へ流入→回転セクターが回転→比較セルの赤外線が入光→繰り返し・・・・・・・

この一連の動きがコンデンサーマイクロホンのダイヤフラムの動きに相当します。コンデンサーマイクロホンでは圧力差を測定しますが、フローセンサーでは流量を測定します。また干渉成分用補償検出器も動作原理は測定成分用主検出器と同じです。


方式4:シングルビーム方式(焦電センサー)

図13:シングルビーム方式(焦電センサ―)の分析計の構造と動作原理

図13:シングルビーム方式(焦電センサ―)の分析計の構造と動作原理

■特長と構造・動作原理 (図13)

特長

焦電型センサーの使用により、ニューマチック検出器と異なりガスを封入する必要はありません。そのため、小型化できるのが最大のメリットですが、感度はニューマチック検出器に比べると低いです。

構造・動作原理

試料ガスに吸収された赤外線を検出するセンサーに焦電型センサーを使用し、変調機構には回転セクタ―を採用した方式です。試料ガス中の各測定成分を温度変化として検出するため、それぞれの測定成分ごとに光学フィルターと焦電型センサーをセットにして検出に使用します。これにより、各測定成分ガスよる赤外線吸収の変化をそれぞれの焦電型センサーで検出し、その検出信号と比較信号により各々の測定成分ガス濃度を算出します。


【流体変調方式(クロスモジュレーション)】

変調機構に電磁弁を使用しガスを切り替える方式(1Hz)

方式6:クロスモジュレーション方式(ダブルビーム)

図14:クロスモデュレーション方式(ダブルビーム)の分析計の構造

図14-1:クロスモジュレーション方式(ダブルビーム)の分析計の構造

■特長と構造・動作原理

特長

流体変調方式はクロスモジュレーション方式とも呼ばれています。
この変調方式はドリフトが非常に小さく長期安定した出力信号が得られます。さらに検出センサーのコンデンサーマイクロホンのダイヤフラムが左右に動き、回転セクタ―使用時の倍の信号量を得ることで対ノイズ性も向上します。
また回転セクタ―と違い、変調機構を整備する際の調整が不要であることも特長です。
ただし、ガスセルに封入ガスを使用しないため、常時比較ガスを流す必要があります。また試料ガスと比較ガスを交互にガスセルに流す電磁弁機構も必要です。

構造・動作原理(図14-1、図14-2)

この方式はこれまでの回転セクタ―を使用した変調とは異なり、電磁弁を一定時間ごとに切り替えて試料ガスと比較ガスを同じガスセルに交互に導入する機構(モジュレーション機構)を使用して変調を行います。この方式の分析計構造の一例が図14-1です。
回転セクターによる変調では、試料セルや比較セルに供給される赤外線光源量を変化させますが、クロスモジュレーション方式は、試料セルや比較セルに流すガスを変化させます。変調機構部を除き、測定成分ガスの濃度検出に必要な測定成分ガス濃度検出機能干渉成分ガス補償機能については、これまで説明してきた赤外線分析計と同じため、ここでは変調機構部の動作を中心に説明します。(図14-2)

図14-2:クロスモジュレーション方式の変調動作原理

電磁弁により、試料ガスを左ガスセルに、比較ガスを右ガスセルに同時に流します。試料ガス中に測定成分ガスがあれば、コンデンサーマイクロホンのダイヤフラムは左側(試料セル側)に膨らみます。(図14-2 左図

試料ガス中に測定成分ガスがあれば、ダイヤフラムは右側(試料セル側)へ膨らみます。(図14-2 右図

この動作を一定周期で繰り返して、コンデンサーマイクロホンの検出信号を変調します。ダイヤフラムの膨らみを左右に振ることで、回転セクターと比べ倍の信号量を得ることで対ノイズ性が向上します。それぞれのガスセルに試料ガスと比較ガスを流し測定することで、赤外線光源の劣化やガスセルの汚れによる検出信号の変化を低減し、長期安定した測定を実現しています。


方式7:クロスモジュレーション方式(シングルビーム)

図15:クロスモジュレーション方式(シングルビーム)の分析計の構造と動作原理

図15:クロスモジュレーション方式(シングルビーム)の分析計の構造と動作原理

■特長と構造・動作原理 (図15)

クロスモジュレーション方式(シングルビーム)はクロスモジュレーション方式(ダブルビーム)の動作を1つのガスセルで行います。電磁弁の周期的な切り替えにより、1つのガスセルが試料セル、比較セルの機能に切り替わり、その時々の検出信号により測定成分ガス濃度を算出します。

この方式ではコンデンサーマイクロホンが1つの室にしかつながっていないため、ダイヤフラムは左右には振れず、片方向だけの動きとなります。比較セルに切り替わった時点でダイヤフラムも膨らみのない状態に戻ります。それ以外はクロスモジュレーション方式(ダブルビーム)と同じ特長です。


関連製品

非分散形赤外線吸収方式(NDIR)の分析計は、色々な測定成分ガスを連続測定できるため、さまざまな分野で活躍しています。例えば、排ガス・プロセスガス・大気状態の監視や、半導体プロセスでは半導体製造用ガスの計測・制御で使用されています。さらにガス計測以外でも、水・液体の分析や連続計測、固体材料の元素分析にNDIRの分析計が利用されています。

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