非分散形紫外線吸収方式(NDUV)は、分子の紫外線吸収を利用する方式です。特にオゾン(O3)は特定波長の紫外線を吸収するため、この方式によるガス測定が可能です。O3ガスは、紫外領域の253.7nmに最大の吸収帯をもっているため、この波長を使用して濃度の測定を行います。これ以降は、試料ガス中のO3をNDUVで測定する場合について説明します。
図1:NDUVを用いたガス分析計の基本構造
紫外線光源からの特定波長の紫外線(入射光)は、測定する容器(ガスセル)に導入された試料ガス中のO3に吸収されます。どのくらい吸収されたかは、光学フィルターで選択透過された紫外線を光検出器で測定することで得られます。これらの測定値とLambert-Beerの法則により試料ガス中のO3のガス濃度を算出します。(図1)
紫外線吸収量とガス濃度の関係は Lambert-Beerの法則で決まります。
入射光の吸収量は吸収分子(特定ガス)の濃度に応じて変化する。この関係を表したのがLambert-Beerの法則です。
Ι = Ι0exp (-μcd)
Ι :透過光強度
Ι0 :入射光強度
c :吸収分子(測定成分ガス)の濃度
μ:吸収係数(分子と波長で決まる定数)
d :吸収分子層(ガス層)の厚さ
NDUVを用いた分析計は紫外線吸収ガス分析計と呼ばれ、構造が簡単でメンテナンスが容易であり、さらに連続測定に適した特長を持つためO3ガスの計測に用いられています。
図2:紫外線吸収ガス分析計の構造と動作原理
サンプリングされた試料ガスをガスセルに流しながら紫外線(入射光)を照射することで、試料ガス中のO3はガス濃度に応じて、この紫外線を吸収します。O3の濃度が高くなると、ガスセル内で吸収される紫外線量も増えます。ガスセルで吸収された紫外線は、光学フィルタ―で選択された透過光として検出器に入り、この透過光を光検出器(フォトダイオード)でとらえ信号処理することで、試料ガス中のO3のガス濃度を連続測定します。
試料ガス中のO3を除去して生成される比較ガスとクロスモジュレーション方式と呼ばれている流体変調機構を組み合わせることで、測定信号の対ノイズ性向上、紫外線光源の光量低下影響の低減を図っています。(図2)
クロスモジュレーション方式は、電磁弁ユニットによりガスセルのガスを周期的に切り替える変調方式です。クロスモデュレーション方式は、試料ガスと比較ガスを一定周期で交互に電磁弁ユニットで切り替えガスセルに導入することで、検出器の信号を変調します。この変調された検出信号を使用することで、ノイズが低減された高精度のガス連続計測できます。測定成分を含まないリファレンスガスを濃度ゼロのガスとして常に測定しているため、分析計のゼロ点も安定しています。
実際のクロスモジュレーション方式は電磁弁切り替え機構(変調機構)により1つのガスセルへ試料ガスと比較ガスを交互に流します。ガスセルに流す比較ガスは試料ガス中のO3をオゾン分解器で除去して生成します。(図3)
図3:オゾン(O3)分析計の構造と動作原理
クロスモジュレーション方式のNDUVにより、紫外線用の光検出器で検出された変調信号は、信号処理部で交流成分と直流成分に分けられ、交流成分はO3濃度信号として増幅され濃度演算されます。変調信号の使用により、測定信号の対ノイズ性が向上します。
また紫外線光源の輝度と比例する直流成分は、経年劣化による紫外線光源の輝度の低下を演算補正するために使用します。これらにより分析計のゼロ点やスパン点は長期間安定しています。
実際の紫外線吸収方式のオゾン(O3)分析計は、これらの構造や動作により、試料ガス中のO3を安定して連続測定しています。
非分散形紫外線吸収方式(NDUV)の分析計は、光化学スモッグの主成分であるオゾン(O3)の連続計測・監視に広く用いられています。また、半導体クリーンルーム内の汚染物質であるオゾン(O3)を監視するために利用されています。