測定溶液の撹拌状態はイオン電極による電位測定に対して電極電位、応答速度、定量下限の変化となって影響します。 これを避けるためにマグネチックスターラーでゆっくり撹拌してください。
撹拌する速度は撹拌子が1秒間に3〜4回転する程度が最適です。
スターラーの発熱により、液温が変化する場合はスターラー本体とビーカーの間に断熱用の発泡スチロール板を挟むとスターラーからの発熱の影響をほぼ防ぐことができます。
攪拌すると溶液中のイオン濃度および液温が均一になり、攪拌しないときよりも指示が安定し、より正確な値が得られます。また液間電位も小さくなります。ただし、あまり激しい攪拌は逆効果となるため注意してください。
スターラーの発熱により、液温が変化する場合は、断熱材(発砲スチロール板など)をスターラーの上に敷くか、恒温槽を用いて測定してください。
イオン電極の種類や構造によって測定可能なpH範囲が決まってきます(この範囲は一般に測定対象イオン濃度が低くなる程狭くなります)。このpH範囲を越えると測定値に影響が生じます。
イオン電極の中には光の影響を受けて電位差が変化するものもあります。
一般的に、応答膜にハロゲン化銀を主成分とする電極(Cl-、Br-、I-、CN- 電極など)にみられます。
同一サンプルでも液温の変化により測定値は異なります。ネルンストの式より液温が10℃上昇するごとに1価イオンで約2 mV、2価イオンで約1mVの変化を生じます(等温交点から10倍、1/10の濃度のとき)。つまり、液温が高くなると電位勾配は大きくなり、液温が低くなると電位勾配は小さくなります。
イオン電極は測定対象イオンに対する選択性に優れていますが、他のイオンにも応答する場合があります。
それらの測定を妨げるイオンのことを「妨害イオン」と言います。測定時にはサンプル中での共存イオンの影響をよく知り、その影響を避けることが重要です。
内部液と反応するサンプルでは、影響する場合があります。このようなときは、ダブルジャンクション形比較電極(形式:2565A-10T)を用いて外筒部の内部液を適切なものにしてください。通常では、内部液の流出量も10分間に1滴以下と微量のため、この程度の量では影響しにくいと考えられます。
流出量が少なすぎる場合 :液間電位、攪拌影響などを生じます。
流出量が多すぎる場合 :イオン強度の変化、妨害影響が生ずる可能性があります。
次ページ 錯体・低濃度イオン