pH測定は、物質の化学的性質を解き明かしたり、化学反応を管理するための第一歩として大変重要です。現在、化学工業をはじめ水を扱うほとんどの工業、そして公共機関、農林水産関係、さらに生物医学方面まで、実に幅広い分野においてpH測定が行われています。
では、実際にどのような分野において、どのような目的でpH測定が行われているのでしょうか。
合成繊維の研究・開発においては、汗などの外的な要因に対する耐久テストの際、pH測定が必要です。繊維が傷みやすかったり、切れやすかったりしては困るからです。
また、染色の工程においてもpH測定は欠かせません。染浴のpHによって染色の仕上げやスピードが違ってくるのです。染色工場においては、染浴のpHは自動的に調整されています。その他、染料の変色テストでも人工汗の調合にpH測定が行われています。
製紙・パルプ工業は、他のどの工業よりもその製造工程内で、多くのpH連続測定が行われています。紙料の蒸解、漂白、調合、抄造などの工程において、pH値を管理することで薬品の消費量を少なくし、機器の腐食を防止しています。
また、紙そのもののpHは耐久性や乾燥速度に関係しており、品質チェックのひとつの目安となっています。
化学反応の管理にpH測定は不可欠ですから、プラスチックや肥料をはじめ、半導体などの電子工学材料、セメント、ガラスなどすべての化学製品の製造工程において、pH測定が行われていると言っても過言ではありません。目的の反応だけをすすめ、不必要な反応を防止するためには、水溶液のpHの選び方が重要なのです。
たとえば、プラスチックでは、重合、縮合などいわゆる高分子化の工程においてpH管理が行われています。窒素肥料、カリ肥料、リン酸肥料などの化学肥料を効率よく製造するためにもpH管理が行われています。また、セメントではケイ酸塩の混合工程において、ガラスでは配合工程においてpH測定が重要です。さらに、ガラスは研磨剤のpHによって透明度などの仕上がりが変わってきます。
石油精製では、石油から硫黄分を取り除く脱硫工程などにおいて、pH測定が行われています。バイオエタノールのpH測定についても日本産業規格(JIS)化されています。
(JIS名:燃料用エタノール JIS K 2190 2011年制定)
金属は、それぞれ特定のpHの溶液に溶けやすいという性質を持っています。粗鉱石から金属を採取する場合、また金属精錬する場合、この性質を利用して不必要な金属を溶かさずに必要な金属だけを取り出すために、溶解液のpH調整が行われます。
たとえば、銅と亜鉛の混合金属を酸性の電解液に入れ電気分解すると、銅だけが陰極に析出します。
この分野では、メッキ、金属表面処理、電池製造などにおいてpH測定が行われています。
メッキでは、メッキ液のpH管理が仕上りに大きく関係しています。特に、酸性メッキ液ではpH管理をおこたると美しい色や光沢が出ず、メッキがはがれやすくなります。鍋などに施されているアルマイトはアルミニウムの表面を処理したものですが、このアルマイト加工でも表面処理液のpH管理が重要です。
また、塗装のための表面処理でも表面処理液のpHが塗装の仕上げを決定する大きな要素です。
電気分野では、電池の内部液のpH測定が挙げられます。電池の内部液のpH値が変化すると電池の寿命に影響を与えるため、pH管理が行われています。
印刷分野の中でも、最も多く使われている「オフセット印刷」において、湿し水管理は非常に多くの要因があり複雑となっています。
中でもpHの調整は、印刷インキの乾燥状態や印刷画像の色調、鮮明度に大きく影響するため、重要な項目のひとつとなっています。