磁気力方式は酸素の持つきわめて強い常磁性(*1)を利用した測定原理です。不均一な磁気中に酸素が存在すると、酸素は磁界の強いほうに引きつけられます。この特性を利用して 引きつけられた酸素の量を圧力として検出するのが、圧力検出形の酸素分析計です。この分析計では、磁気力として電磁石を使用し、磁界セル内の電磁石のセット数でシングルとダブルの測定方式に分かれます。圧力検出はシングル・ダブルともコンデンサーマイクロホン検出器(*2)を使用します。
(*1) 常磁性:磁場がない場合は磁化されず、磁場がある場合は磁場の方向に磁化される物質です。
(*2) コンデンサーマイクロホン検出器:コンデンサーマイクロホンをセンサーとして使用している検出器です。コンデンサーマイクロホンはダイヤフラムと固定板で構成され、ダイヤフラムの左右で圧力差が生じると、ダイヤフラムと固定板間の距離が変化します。この距離変化をコンデンサーの静電容量変化としてとらえて、圧力差を検出します。
酸素の持つきわめて強い常磁性を利用したものです。磁界中に酸素(常磁性の気体)が存在すると、酸素は磁界の強いほうに引きつけられ、その部分の圧力が上昇します。一般にその時の圧力上昇(ΔP)は以下の式で表せます。
ΔP = 1/2 H2・X・C
(H : 磁界の強さ X : 常磁性体(酸素)の磁化率 C : 常磁性体(酸素)の濃度と補助ガス(大気/窒素)の濃度差)
この圧力上昇を検出し、酸素濃度を測定します。
電磁石ON/OFFでの試料ガス中の酸素による圧力変化を補助ガスを用いて磁界セル外のコンデンサーマイクロホン検出器に伝搬させて酸素濃度に応じた圧力を検出し電気信号に変換して酸素濃度を測定します。
クリーンな補助ガスによる検出器への圧力伝搬は、試料ガス中の腐食性ガスやセル内の汚れが検出器に接触しないため長期安定した測定ができます。また補助ガスに大気を使用した場合はN2ボンベは不要です。
図1-1:磁気力方式 圧力検出形 (シングル磁界) 酸素分析計の構造と動作原理
シングル磁界と同じです。
シングル磁界の動作に加えて、1つの電磁石がON時は他方の電磁石をOFFとし、これを交互に繰り返します。
この動作により検出器内のコンデンサーマイクロホンにかかる圧力の向きが切り替りかわり、シングル磁界に比べ倍の信号量を検出することができます。倍の信号量を得ることで、シングル磁界に比べより高感度な測定値を得ることができます。
図1-2:磁気力方式 圧力検出形 (ダブル磁界) 酸素分析計の構造と動作原理
磁気力方式 圧力検出形を採用した分析計が、さまざまな分野の排ガスやプロセスガス中の酸素連続測定で活躍しています。