3月22日、HORIBAは経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「なでしこ銘柄」に3年連続で選定されました。HORIBAでは2014年にダイバーシティを推進する「HORIBAステンドグラスプロジェクト※」を立ち上げ、その活動のひとつとして女性活躍推進に取り組んでいます。
プロジェクトの発起人であり、ステンドグラスプロジェクト推進室の室長でもある森口真希にプロジェクト発足のきっかけや現在の取り組みについて聞きました。
※HORIBAステンドグラスプロジェクト:様々な色や形、大きさのステンドグラスが集まり1枚の美しい絵になるように、社員一人ひとりの強みや個性、才能を発揮することで、より強い組織を実現することを本プロジェクトの目標としています。2014年に発足し、2017年に組織化しました。
ステンドグラスプロジェクト推進室 森口 真希
ステンドグラスプロジェクト発足のきっかけは?
当時、社内では育児と仕事を両立するための制度が整いつつあり、継続就業する女性社員も増えていました。一方でロールモデルは少なく、この先どうなっていくのか将来像は見えにくい状態で、私自身も子育てと仕事の両立にジレンマを感じていました。そんな時に上司から勧められ参加した外部のリーダー研修で、世界で活躍されている女性リーダーから「両立に課題を感じている当事者が会社の意思決定に関わっていくことで会社も社会も変わる」という言葉をいただきました。女性だから、子育て中だからと「無意識の壁」を作っていた自分に気付き、ダイバーシティの課題に向き合うプロジェクトを立ち上げたいと当時の管理職登用研修の中で会社に提言し、スタートしました。最初に役員に相談した時の反応は、当時すでに数人の女性リーダーの活躍が目立っていたことから「HORIBAには特に必要はないのでは?」というものでしたが、女性の働き方の変化や海外のグループ企業の女性登用状況等について対話する中で、HORIBAでのダイバーシティをより加速させるこの取り組みのチャレンジに賛同いただきました。その後、経営戦略本部長だった齊藤壽一(現副会長)に、本プロジェクトのリーダーになってほしいとお願いしたところ、「リーダーはあなた、自分自身はオーナーになる」と言われ、思いがけず表舞台に立つことになりました。当時はたくさんの管理職の先輩方にも意見や後押しをもらいながらプロジェクトを形にしていきました。
プロジェクトはどのように推進していきましたか?
まずは、検討準備委員会を立ち上げ、そのメンバーとともに社内の状況を把握する目的で全社員アンケートを実施しました。この初回のアンケートでは、ダイバーシティという言葉を知っていた人は全体の2割程度で、このような活動が必要だということは、社内では殆ど認識されていない状態でした。
そこで活動の目的を社内に浸透させ、社員一人ひとりの意識に働きかけるために、広報、ロールモデル、社外交流、ワークショップの4つのワーキンググループでスタートしました。3年間はバーチャルプロジェクトとして取り組み、2017年からは推進室として組織化しました。専任組織となってからも、その時々の課題に応じたテーマでワーキンググループを立ち上げて取り組むことで、一歩ずつ確実に前進し、数値にも表れることを実感しています。
女性活躍推進のために取り組んできたことを教えてください
社外の事例を伝えることで多くの社員がダイバーシティを考えるきっかけになってほしいというおもいから、社外で活躍し、様々な課題に取り組まれている外部の方をお招きして講演会を実施しています。また、社内で活躍する女性管理職のことも意外と知られていない、ということが分かったため、先輩社員がキャリアを語る機会をワークショップ形式で設けました。
また、上司の意識と行動改革のために管理職研修においてダイバーシティの知識を学び、理解する場も継続して企画・開催しています。元 東レ経営研究所の佐々木 常夫氏をはじめ、ダイバーシティや働き方をテーマに様々な方々の講演やワークショップを開催しました。管理職の男性からは、「優秀な女性がたくさんいるが、リーダーに育てようと意識していなかった」、「女性活躍について、社会の変化がここまで進んでいることや、さまざまな制度が使えることを知らなかった」など、多くの気付きをもたらし、意識を変えるきっかけになりました。
女性活躍は進んでいますか?
国内グループ会社の部長職にも少しずつ女性が増え、様々なプロジェクトや会議において女性リーダーがいる風景が当たり前となってきました。ワーキンググループの継続的な活動とともに、キャリア研修や講演会も実施し、広く社員が参加できる活動が多いことが、なでしこ銘柄選定の評価にもつながっています。一方で管理職の意識、行動改革のスピード感と部門や部署間でのダイバーシティ意識のギャップが今後の課題だと考えています。
女性活躍推進以外では、どのようなことに取り組んできましたか?
多様な人々が活躍するためには今まで通りの働き方では難しく、働き方の変革を同時に進める必要があります。プロジェクト発足当初は、「長時間労働、残業が当たり前」「出張や転勤のハードルの低い人しかリーダーになれない」という声がアンケートにも多く寄せられました。マネジメントへの働きかけはもちろん、職場ごとに理想の働き方を考えるカエル会議※1を開催するなど、社内の取り組みや社会の変化もあり、働き方に対する考え方はずいぶん変化しています。創業者が生前、「残業は仕事ができない人の証しである」と言っていましたが、長く仕事をすることが必ずしも評価につながらない、という考え方がHORIBAに根付いてきています。
※1 カエル会議:仕事のやり方を“変える”、自分を“変える”ことを目的に、すべての社員が互いに生き生きと働き、成長できる理想の働き方を考える会議。
さらに働き方の変革を推進するうえで必要な取り組みは?
HORIBAは着実に変化していますが、それ以上に世の中が非常に速いスピードで変化しています。少子高齢化による労働人口の激減、介護や傷病との両立社員の増加に加え、日本のモノカルチャーの弊害など、多くの課題がすでに顕在化しています。
その変化を主体的に捉え、いかにマネジメントに活かしていくかが重要だと考えています。そのため、これまでのワーキンググループ活動は現場のメンバーが行ってきましたが、4月からは管理職が主体的に取り組む体制にシフトさせる予定です。マネジメントレベルで当事者意識をしっかり持ち、社内の変化を加速していきたいと思います。
現状の課題、および今後の目標と意気込みをお願いします。
中長期経営計画・MLMAP2023では、重点施策の一つとして“すべての事業活動推進の原動力となる「強い人財」を作る組織体制の強化”を掲げています。ステンドグラスプロジェクトはその人財施策の一つです。経営トップ、ワーキンググループ、人事部門が三位一体となって、それぞれの役割でダイバーシティを推進する、その軸となり支えとなることが推進室の役割だと考えています。
ステンドグラスプロジェクトが発足時から掲げるミッションのもと、2020年1月より新たに定めた3つの行動指針※2を実践することで、多様性のある社員一人ひとりが輝き、組織が活性化すると考えています。
2014年から取り組んできたステンドグラスプロジェクトは、意識改革、行動改革を経て、現在は組織全体の風土へ働きかけるステージに入っています。ダイバーシティ&インクルージョン※3 の視点が当たり前に根差している状態をめざします。
ステンドグラスの一枚の作品のように、一人ひとりの個性・才能が色とりどりに輝くことにより、全体として美しく、強いHORIBAを実現していきます。
※2 3つの行動指針:①「無意識の壁」を超え、個の能力を最大限発揮する、② 2way コミュニケーションによる相互理解でチーム力を最大化する、③ チャレンジ精神で働きがいを追求する。
※3 性別、年齢、国籍などが異なる多様な人々が、個々の「違い」を受け入れ、認め合い、活かすこと。